しちがつ
7月のある日の部活終わり。
私はゆうが入院している病院に向かった。
4階にある病室は、6人1部屋という構造が多く、そのためいろんな人が出入りしている。
頑張ってゆうの病室を探すと、
「あった……」
ゆうの部屋は409号室
「失礼します……」
「おぅ、蝶。来てくれたのか?」
「はい、心配なので」
「そうか」
左腕に点滴をしながらだったが、元気そうだ。
私は、机の上にボールペンと紙が置いてあることが気になった。
「何を書いていたのですか?」
「……日記だよ。気が向いた時しか書かないけどね(笑)」
「それ、意味あるんですか?(笑)」
「あるさ、いずれな」
いずれ……。 これが何を意味しているか分からない。すると、ゆうが
「そうだ、渡したいものがあるんだ」
「なんですか?」
カバンから大きな封筒を出してきて、
「中身は家で見てね」
「……わかった」
思わず、タメ口になってしまった。
すると、看護師がやってきた。
「まもなく、面会時間終わりです」
と言いに来た。
「もうそんな時間ですか、では、また来ますね ゆう」
「待っているね蝶」
家に帰り、ゆうからもらった封筒を開けると、
サックス用にゆうがアレンジしたと思われる“Much together”という楽譜と参考音源のCDが1枚入っていた。
私は、この曲をよく知らない。どんな曲なんだろう? と思い封筒をひっくり返すと紙が一枚出てきた。
“蝶へ
この楽譜は、ブルームーンが見える時に2人でやってみたいな、
という俺のわがままの傑作。
許しください。今の蝶ならできる。
完璧にできなくても大丈夫だけど、譜読み程度は、済ませておいてね。 ゆう ”
すごい、無茶ブリだなぁ。 笑うしかないかと思っていたが、頑張ってみる価値がありそうだな、と内心思っていた。
翌日、空いた時間を使って、すこしずつではあるが、譜読みを進めた。
2週間後、なんとか1曲通せる程度まできた。音程とかは、ずれていると思うが。
とりあえず譜読みが終わったから明日、ゆうのところに行こう。