ひみつ
それから数週間、この秘密の関係を維持してきた。
周りに気づかれないようにTwitterなどにデートに関するつぶやきはしないようにしている。
そんな6月のある日の合奏中のこと。
私とゆうの関係に雲行きが怪しくなってきた。
合奏中、ゆうが楽器を吹いている最中、咳き込む回数が増えてきたのだ。
顧問の先生は、
「おい、佐田君。大丈夫か?」
「はい……」
「ちょっと休憩でも挟むかな」
「すいません」
「気にするな、楽器を吹いている最中に倒れたら、僕の責任になるんだから(笑)」
「そうですね」
そういうと先輩は、楽器を椅子の上に置き、トイレに向かった。
トイレに行き、洗面台前で、左手で口を覆い、咳をした。すると、
「……うそだろ、血が出てる。 もう時間との闘いかな。こんなこと……蝶には言えない……絶対に」
左手に付いた血を見ながら静かに言った……。
佐田は小学校1年生の時、神様から時限爆弾をもらった。
それを抱えて今日まで生きている。
咳き込みや、頭痛、貧血、視界不良などが、まれに起こる病気で、進行を遅らせるため2日に1回3錠の薬を飲み、1か月に1回検査を受けるというのをずっと繰り返している。
正直な話、手術して直したいところだが、現代の医学では難しいと言われた。
なぜなら、世界中で滅多に出ることのない“不治の病”だから。
夢は、
死ぬ前に、もう一度ブルームーンを観たい。蝶と一緒に……。
先輩が戻ってきた。
「すいません、お待たせしました」
私は、同じパートとして心配になった。
「本当に大丈夫ですか?」
「気にするな。大丈夫だ」
私は恋人として思った。
“ゆうは何かを隠している”
そう思っても、こればかりは言えない。
言わないほうが、ゆうのためかもしれない。
私は自分にそう言い聞かせ、練習にもどった……。




