であい
2012年 春
私は、大学の入学式に出席していた。
学校長のつまらない長い話を聴き、記念演奏として吹奏楽部が2曲ほど演奏してくれた。
中学・高校は、ほとんど勉強しかしてこなかった。
有名企業に入りたいとか、天才科学者になりたいではなく、
私自身運動は、そんなに好きではないため
家の中でもできることと考えた結果だ。
それでも成績は普通の少し上くらい。
そんな私が、吹奏楽部の演奏に心を打たれた。
見る限り、演奏している人数はそんなに多くはないと思うが、
勉強と同じくらい活き活きできるのではないかと思った。
入学式が終わり、在校生たちが部活・サークル活動の勧誘活動をやっていた。
テニス部……。
ダンス部……。
駅伝部……。
吹奏楽部……。
文芸部……。
いろんなチラシをもらったが、私は吹奏楽部に見学に行くことにした。
後ほどチラシに書かれたメールアドレスに見学したいという旨を伝え、送信した。
数日後、私は見学に行った。みんな楽しそうに練習をしていた。
すると、遠くの方から男の人が現れた。
「見学のメールくれた方ですか?」
「はい、……野巻のまき 蝶ちょうと申します」
「初めまして、4年部長の佐田さだです。サックスを担当しています」
かなりイケメンと言っても問題はないだろう。
だが、この時大事なことを忘れていたことを思い出した。それは、
“楽譜が読めない”ということと、知識がなんにもないこと……。
私は、そのことを伝えると、
「大丈夫、俺が教えてあげるよ。……ということは、楽器に触れるのは初めてかな?」
「は、はい……」
佐田は、すこし悩んだ挙句
「……先生、彼女は、自分と同じパートでもいいですかね? 」
「……うん、僕はいいけど、その代わり、しっかり教えてあげなよ」
「わかりました!」
「……突然で悪いんだけど、今日俺と同じパートでもやってみないか?」
私の辞書に“断る”という文字がなくなった瞬間だった。
気持ちが高まり思わず
「にゅ……、にゅ……、入部……、させてください!!」
「えっ!? あぁ……こちらこそ、お願います」
まさかの見学初日で入部が決定した。