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短編【文学】【童話】【ファンタジー】集(2)

くまくん(再稿)

作者: 蠍座の黒猫

 くまくんは、ひとりであそんでいました。


でも、あまえんぼうのくまくんは、さみしくなってきて、


「ママー。」


くまくんは、ママをよびました。


「なあに、くまくん。どうしたの?」


「ううん。なんでもないよ。」


ママは、むこうにいきました。


くまくんは、おなかがすいてきました。


「ママ―。」


くまくんは、ママをよびました。


「ママ―。」


へんじがありません。


くまくんは、キッチンをみにいきました。


ママは、キッチンにいません。


くまくんは、おにわをみにいきました。


「どうしたの。くまくん。」


「おなががへったの。」


「おやつをたべましょうね。」


くまくんは、おやつをたべました。



 くまくんが、あさおきて、ごはんをたべました。にがてなピーマンはのこしました。


 くまくんは、ひとりであそびました。


でも、あまえんぼうのくまくんは、さみしくなってきました。


「ママ―。」


ママをよびましたが、へんじはありません。


「ママ―。」


くまくんは、キッチンをみにいきました。


パパがむずかしいかおで、しんぶんをよんでいました。


「パパ、ママはどこ?」


パパは、やさしいかおでいいました。


「ママは、ちょっと……びょうきなんだ。だから、びょういんにいるんだ

よ。」


「えっ……」


くまくんはびっくりしました。


「くまくん。だいじょうぶだよ。すぐにかえってくるからね。」


「いっしょに、おみまいにいこうね。」



 くまくんとパパは、びょういんに、ママのおみまいにいきました。


「ママ。」


「くまくん。すぐかえるからね。おりこうにしていてね。」


「うん。ぼく、おりこうにしているからね。はやくかえってきてね。」



 くまくんが、あさおきて、ごはんをたべました。おりこうにのこさずたべました。


「おりこうだね。」


パパがほめてくれました。


くまくんは、ひとりであそびました。


でも、さみしくなってきて、


「ママー。」


ママをよんでみました。でも、へんじはありません。


ママは、びょういんにいるのです。


くまくんは、さみしくなって、


「ママ―。」


ちいさなこえで、もういちどよびました。


くまくんは、キッチンにママがいるようなきがして、みにいきました。


ママは、いませんでした。


くまくんは、おにわにママがいるようなきがして、みにいきました。


ママは、いませんでした。


くまくんは、げんかんにすわりました。


「ママ―。かえってきてよお。」


くまくんが、ちいさいこえでいいました。


すると、げんかんのとびらがあいて、


「ただいま。くまくん。」


ママが、かえってきました!


「わーい!ママ!ママ!ぼく、おりこうにしてたよ。ピーマンもたべたんだ

よ。」


「くまくん。かわいいくまくん。おりこうさんだったのね。」


くまくんは、ママにだっこしてもらいました。



くまくんが、あさおきて、ごはんをたべました。あさごはんは、くまくんの

だいすきな、めだまやきでした。パパがつくってくれました。


「わーい。ぼく、めだまやきだいすき。」


くまくんは、うれしくてぜんぶたべました。


くまくんは、ようちえんにいきました。パパがおくってくれました。


くまくんが、ようちえんからかえってきて、


「ママ―。」


ママをよびました。


へんじはありません。


パパに、


「ママは?どこ?」


きいてもこたえてくれません。


「びょういんにいるの?」


「そうだよ。くまくん。」


パパは、すこしかなしそうなかおをしていました。


「おみまいにいこうよ!」


くまくんがいいました。


「パパはいそがしくていけないんだよ。ごめんね。くまくん。」


「いいよ。ぼく、おりこうにしていたら、ママ、はやくかえってくるよ

ね。」


「そうだね。そうだね。くまくん。」


パパは、なんだかもっとかなしそうなかおをしていました。



「くまくん。おきて。」


パパが、ねていたくまくんをおこしました。


「うーん。ねむたいよう。」


パパは、なんだかいそいでいるみたいでした。


くまくんは、パジャマのままで、パパとびょういんにいきました。



「ママ―。」


びょういんで、ママはねていました。


とってもよくねているみたいでした。


「くまくん。」


パパがないていました。


くまくんは、パパのないているところをみたのは、はじめてです。


「どうしたの。パパ。」


「くまくん。ママは、しんでしまったんだよ。」


「……」


くまくんは、よくわかりませんでした。


「くまくん。ママは、もういなくなったんだよ。」


くまくんは、ママがねているとおもいました。


とってもよくねているとおもいました。



 おそうしきをしました。


くまくんは、おかしをたくさんたべました。


くまくんは、おりこうさんにしていました。


でも、よるになって、ひとりでねていると、かなしくなってきました。


「ママ。」


くまくんは、ちいさいこえでよびました。


へんじはありませんでした。


くまくんは、むねがいたくなって、なみだをこぼしました。


くまくんは、なきながらねむってしまいました。



 くまくんが、あさおきて、ごはんをたべました。きょうも、パパがつくっ

てくれた、めだまやきでした。


 くまくんは、ひとりであそびました。


 あまえんぼのくまくんは、さみしくなりました。


「ママ。」


くまくんは、ちいさいこえでよびました。


へんじはありません。


くまくんは、キッチンにママがいるようなきがして、みにいきました。


ママは、いません。


「ママ。」


くまくんは、おにわにママがいるようなきがして、みにいきました。


ママは、いません。


くまくんは、げんかんにすわりました。


「ママ―。かえってきてよお。」


くまくんが、ちいさいこえでいいました。


へんじはありません。


くまくんは、じっとすわっていました。


くまくんは、とっても、とっても、とってもかなしくなりました。おおつぶ

のなみだがこぼれました。


「ママー!」


くまくんは、こんどはおおきなこえでよびました。


すると、げんかんのとびらがひらきました。


「くまくん。」


おおかみさんが、たっていました。


「ぼくは、くまくんのママに、あったかいおにぎりをもらったことがある。」


「ぼくは、とってもさむかったんだ。だれも、ぼくに、なにもくれなかっ

た。だから、とってもうれしかったんだ。くまくんのママは、とってもやさしかったんだよ。」


おおかみさんは、くまくんにあめをたくさんくれました。


「ありがとう。おおかみさん。」


くまくんは、なみだをふいていいました。


 おおかみさんがかえると、つぎにいぬさんがとびらをあけました。


「くまくん。ぼくは、くまくんのママに、とてもかわいがってもらったんだよ。だれも、ぼくのことをかまってくれなかったんだ。だから、とってもうれしかったんだ。くまくんのママは、とってもやさしかったんだよ。」


いぬさんは、ビスケットをたくさんくれました。


「ありがとう。いぬさん。」


くまくんは、あめとビスケットをじっとみつめました。


どちらも、くまくんがだいすきなおやつでした。


 いぬさんがかえると、ぶたさんがとびらをあけました。


「くまくん。わたしは、くまくんのママとなかよしだったのよ。くまくんのママは、いつもくまくんのことを、はなしていたのよ。くまくんのママは、くまくんのことが、だいすきだったのよ。」


ぶたさんは、ママの写真をくれました。ママはとってもうれしそうにわらっ

ていました。


「ママ。」


くまくんは、ちいさいこえでいいました。


ぶたさんは、くまくんのあたまをなでてくれました。


くまくんは、げんかんにすわって、おかしをたべました。


 ぶたさんがかえると、パパがとびらをあけました。


「くまくん。おいで。」


パパは、くまくんに、しろいけいとであんだ、


ぼうしと、セーターと、てぶくろを、きせてくれました。


「ママがね。さむがりのくまくんに、あんでおいてくれたんだよ。」


ぼうしと、セーターと、てぶくろは、ママのにおいがしました。


くまくんは、からだがぽかぽかになりました。


でも、くまくんは、なんだかもっと、さみしくなってしまいました。


「ママ。」


くまくんは、なみだをながしました。


「くまくん。おでかけしようか。」


くまくんは、パパとたかいおかのうえにのぼりました。


ずっとむこうにうみがみえます。


そらには、おおきなくもがありました。


ここは、ママとパパとくまくんが、ごはんをたべにきたところでした。


くまくんは、またさみしくなってきました。


「くまくん。」


パパが、オルゴールをかけてくれました。


とってもきれいなきょくでした。


くまくんのむねに、きれいなおんがくが、すいこまれていきます。


「くまくん。あのくもをみて。」


くまくんは、おおきなくもをみました。


そのくもは、ママのおかおでした。


にっこりわらっている、


やさしいママのおかおでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読ませて頂きました。 ひらがななのにとても読みやすく、小さい子でも一人で読めますね。やわらかく優しく温かかったです。黒猫さんのお人柄が滲み出ていると思いました。最後の一文にやられてしまい…
[一言] ほのぼのと綴られてはいますけれど、読んでいて思わず涙が出てきてしまいました。 とってもやさしい言葉で編み上げられた、とってもかなしい、けれどとっても暖かい童話でした。
[一言] ああ、これ読むと泣いてしまうとわかっているのに読んでしまいました。 私が黒猫さんの作品を好きになったきっかけの話なので、冬童話バージョンに改稿したものが見られて嬉しいです。 ご近所さんたち…
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