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二十話 俺の気持ちを教えてやるよ

題名につられた皆様

教えてくれるかは本編をどうぞ

「何?」


「奢ってやる」


優馬は腕を掴んだまま、視線はこちらに向けずうつむきがちに言った。


「何言ってるの?」


「奢ってやるから、飯付き合えって言ってんだよ」


顔を上げた優馬はいつもの迫力はなく、何故だかどこか照れたように顔を赤らめていた。

もしかしたら仕事終わりで暑いだけなのかもしれない。



「優馬が奢るなんて何か企んでるの?」


あたしの問いかけに優馬は呆れたように溜息をついた。


「お前は全くなんでそんななんだよ」


優馬はそう言ってあたしの頭にチョップした。


「いたっ」


「いいから行くぞ」



まだ腕は離してくれず、優馬に引っ張られるような形で着いて行くことになった。




「ここでいいか?」



優馬が連れて来てくれたのは歓迎会の時にきた居酒屋だった。


優馬に心を暴かれた場所。



「別にいいけど」


あたしが呟くと、優馬はそのまま中に入って行った。


あの時は四人だから長めのテーブル席だったが、今日は二人だから少し狭い席に案内された。



「あんたいつの間にか嘘みたいな笑顔浮かべるの止めたよな」


優馬は唐突にそんなことを言い出した。


「そうやって普通に笑えるんなら、最初から笑ってろよ」



優馬は何故か吐き捨てるように言った。



最近の優馬は少しおかしい。



「でも良かったな。あいつとも仲直りで来て、なんならよりも戻せばいいだろ」



「だから、あたしは充君のこと別にそんな風に思ってないから」


あたしがそう言っても、優馬は何も言わずに黙ってあたしを見つめている。



「ねえ、この前の答えは教えてくれないの?」


「答え?」



優馬は眉を顰めた。

やはり不機嫌な顔になれば怖い。


「だから、あたしにあんなことを言った理由よ」


「はー、マジで言ってんのかよ。お前さ、恋人できてもダメだった理由って本音を出せない性格だけのせいじゃねえんじゃねえか?」


「どういうこと?」


そんな言い合いをしていると、いつの間にか顔の距離が近づいていたらしく、申し訳なさそうに店員が酒を持ってきた。



「そういうところだよ」


優馬の笑いが嘲笑う様子ではないことに何故か安心した。



「なら、これなら答えられるか。あいつに告白される前、あいつの気持ちに少しでも気づけたか?」



優馬の問いかけには悔しいが全力で首を振ってしまった。

まさかそんな風に思っていたとは思わず、驚いたのを強く覚えている。



「だから馬鹿なんだな。あんたって」



結局は嘲笑われる始末だ。




それから酒を飲みながら少しずつつまみを頼み、優馬の人を試すような質問と、美容師の話をしていると、あっと言う間に時間は過ぎて行った。



「明日も仕事だろ。俺も学校だし、そろそろ帰るか」


唐突に優馬が大学生だということを思い出すと、無償に腹が立った。


「やっぱりあたしが払うわ」


「良いって、俺が払う」


優馬は面倒そうに言った。



「学生に奢ってもらうの嫌だし」


「そうか。でもな、俺は学生でも男だからよ。女に金なんか払わせれねえよ」



礼儀もなっていないが、そういうところは律儀らしい。



「わかった」


渋々了承すれば、優馬は酔っているのかあたしの頭を撫でた。



店を出ると風が心地よかった。

自分もやはり多少酒に酔っているのだと感じた。



「あの日、俺の言葉で帰ったあんたは、あいつに引き止められた。

それでそのまんまホテル行ったんだよな」


優馬は怒っている様子でもあり、悲しそうな様子でもあった。


酔っているせいかもしれない。

潤んだ目が少しだけあたしを恨めしそうに見つめている。



「さっきの答え教えてほしいか」


あたしがきょとんとしていると、優馬は思い切りあたしの腕を引っ張った。

されるがままのあたしは優馬の腕の中に納まった。


「教えてやるよ。今日だけ特別にな。あいつに抱かせられたら、俺にだって抱かれてくれるよな」



優馬が耳元で言うものだから、顔が熱くなるのを感じた。


「ゆっくりたっぷり教えてやるよ。その鈍感な頭じゃ理解できないようだからな」


優馬はそう言って耳元に近づけていた唇をあたしの顔に近づけて行った。



「やめて!」



思わず突き飛ばせば酒のせいか、優馬はしりもちをついてしまった。


「ってなー」


優馬は眉を顰めてあたしを睨みつけた。


「ごめん。でも、なんだかそういうの嫌だから」



「そうかよ」



優馬の呟きが悲しげに響き渡った。

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