十八話 成長
ラストスパートに入ろうと思うと書きたいことがでてきて中々終わりそうにないです
そう言えば、あいつあたしを心から笑わせてやるって言ってた。
あの時は自分を暴かれたことで動揺していたけど、よく考えればおかしい。
どうして優馬はあたしなんかに構うようになったんだろう。
だけどいくら考えたってわからない。
そもそも優馬が何を考えているのか、どういう人物なのか全く知らない。
その日は優馬のことを考えて結局少しも眠れなかった。
「おはよう」
「おはようございます」
今日は夕方を過ぎてから優馬が出勤してくる日だ。
店にはいつもと同じく恵美さんが一番にいた。
「昨日はどうだった?」
恵美さんはとても嬉しそうに尋ねてくる。
何を期待しているのかわからないが、目を輝かせて詰め寄ってくる。
しかしあたしが理解していないことに気づくと、恵美さんの顔が真剣になった。
「ねえ、もう恋はしたくないの?」
唐突にそんなことを聞くものだから、あたしは驚いて恵美さんを凝視した。
「春美ちゃんは人を信じられない。どういう理由でそうなったかは知らないけど、恋愛もできない。まあ、恋愛なんて一番信じるか信じないかだものね。仕方がないかもしれないわ。でもね、いつまでも悪い人ばかりが春美ちゃんに着いてくるわけじゃないのよ。悪いところを知っても離れない人が本当にあなたを大事に思ってる人だと思うの」
「それって」
あたしが問いかけようとしたところで、扉が開いた。
「おはようございます」
充君がいつもと変わらぬ顔で入って来た。
「おはよう」
恵美さんが挨拶を返した。
あたしの前を通ったところで充君は小さく「おはよう」と言ってくれた。
「おは、よう」
一歩遅れて充君が過ぎ去ってしまいそうなところで挨拶を返した。
思ったよりも掠れた声が出て、聞こえなかったかもしれないと思ったが、充君が笑顔を浮かべたのが見えた。
充君はあたしの本当の姿がわかっても、それでも今まで通りでいてくれるんだ。
「あたし、馬鹿だったんだな。こんなにも、こんなにも人って温かったんですね」
恵美さんは黙ってあたしの頭を撫でてくれた。
恵美さんは本当にいい母親になるだろうな。
そんなことを思いながらあたしは素直に恵美さんに甘えていた。




