十六話 本音
更新までに時間がかかってしまい申し訳ないです
とうとうラストに進んでいきます
「最低だな。お前」
優馬の言葉がしばらく頭から離れなかった。
確かにあたしは最低だ。
あたしのせいでこの店がおかしくなった。
何が悪い?
あたしが充君と付き合ったから?
あたしが充君を傷つけたから?
違う。
悪いのはあたしのこの性格だ。
決心すればどうして人はこれほどまで変われるのだろうか。
あたしは何事もなかった顔でフロアに出、いつものように狂いのない接客をした。
恵美さんがこちらを心配そうに見ているのを横目で感じながらも、あたしはあえて気づかないフリをした。
そして一日は長く早く過ぎて行った。
いつものようにあたしと充君はフロアの片づけをし、優馬は恵美さんと奥で事務作業を教えてもらっている。
あたしは早く切り出したいのと、明日も仕事だということを考えて片づけを急いだ。
あたしがここにいたくないから。という風に勘違いでもさせてしまっただろうか、充君が不思議そうに、悲しそうにこちらにチラチラ目を向けている。
「あらま、今日は片づけもう終わっちゃったのね。それじゃあ皆帰りましょうか」
恵美さんが笑顔で声をかける後ろで優馬がこちらを睨んでいるのがわかった。
「あの、少しだけお時間いいですか」
あたしが声を上げると、皆が驚いたように止まり、沈黙が流れた。
息がつまりそうになりながらも深呼吸をしてもう一度口を開けた。
「最近お店の皆さんに迷惑をかけているので、あたしも腹をくくろうと思いまして」
「辞めるなんて言わないでよ」
恵美さんが慌てたように声を上げた。
「いえ、そういうわけじゃありません。あたしの全てを話そうと思いまして、そしたらもう勘違いも何も起こらないですから」
言葉が悪かっただろうか、充君が気まずそうに顔を逸らした。
優馬は先程とは違い真剣な顔でこちらを見ている。
それでも真顔は睨まれているように思えなくもなく、とても威圧感がある。
「あたしは、心の底から人を信じることができないんです。
勿論この店にいる皆のことはとても好きだし、いい人達だと思います。
でも、踏み込めないんです。何かを言えばどこかでそれは噂の種になるんじゃないか、相談でもしようものなら暗いと言われるんじゃないか。本当はとても暗い人間なんです。でも、気づかれたくなくてずっと明るいキャラを演じてました」
誰も何も言わない。
呆れてしまったのだろう。
こんなこと突然告白されて、それこそ迷惑でしかないはずだ。
「ごめん。そんなこと知らずに自分だけ盛り上がってごめん」
突然充君が謝り始めた。
「あたしが悪いの。あたしがはっきりしないから、付き合うなんてよくわからずに、恋愛感情なんてなかったのに付き合ったりして、充君の気持ちを振り回した」
「ごめん」
充君は終始謝っていた。
このまま話を続けていいのだろうか。
「でもね、例え明るいキャラを演じてたんだとしても、その明るさをお客様は喜んでいたわ。それにあたしは春美ちゃんが好きなのよ。どんな春美ちゃんだろうと関係ないわよ。でも嬉しいわ。自分の嫌な部分を打ち明けるって相当な覚悟があったでしょう。春美ちゃんはこれからもありのままでいいのよ」
恵美さんの言葉が胸の奥にまで染みわたるようだ。
言葉が胸に染みる。そんな表現現実にあるとは思っていなかった。
でもどう表現すればいいのかわからないけど、今あたしの体に固まっていた何かが解けて、代わりに暖かい物が胸に染みていくのがわかる。
「これからも戸惑うことがあるかもしれない。
でも私でよければいつでも相談してちょうだい」
恵美さんの笑顔は本当に天使だ。
きっといい母親になるだろう。
「今日はもう帰りましょうか」
恵美さんはすんなりとそんなことを言い始めた。
いつもならばこの後どこかで話しましょうとか、もう少し何かを言ってくれると思っていたが、さっさと奥に入ってしまった。
充君は本当に罪の意識を感じていますと言ったように唇を噛みしめて奥に入って行った。
「ほら、明日も早いんだから」
あたしは納得がいかないというよりかは、何処か現実にいる感覚がせず、ふわふわした意識のまま外に出た。
「それじゃあ私は旦那さんが待ってるからー」
いつも言わないような台詞を吐きながら充君と共に帰って行った。
充君と・・・。
「あっ」
「なんだよ」
優馬は何故かあたしの隣に残っていた。
「馬鹿みたいな顔してんな」
優馬は意地悪く笑った。
「ちょっと顔貸せよ」
充君に喧嘩をかける時に言った言葉を再び吐いた。
まさか今度は殴られでもしないだろうかとドキドキしながらも仕方なく後ろに着いた。




