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あやかしあやし  作者: 武者小路 きんぎょ
1章:昼食時の、地獄絵図
6/12

食堂へ行こう!

桜印学園の2F。俺たちは自分たちの教室である1-Dから、1Fにある食堂へと向かって連れだって歩いていた。


無駄に大きく、無駄に広いこの学園は今向かっている食堂をはじめとして5つの飲食施設がある。最初の頃は面白がって毎日場所を変えたりしていたが、そのうちに面倒になって今では毎日同じ場所で昼食を取ることにしていた。

・・・メシを食うために30分歩くとか、冗談じゃない。往復だけで昼休みが終わってしまう。


ふと一番遠くにある、距離だけでなくそれ以外の理由も含めて最も行きたくない位置にあるカフェテリアを思い出し、ちょっとアンニュイな気分になってしまう。


「今日は何食おうかな~・・・肉か!?魚か!?・・・いや、麺も捨てがたい!!」


そんな俺の右隣で昼食のメニューについてやかましく騒いでいるこの男は、灰島忠はいじまただし。身長、体重、容姿、運動神経、成績、果てはその能力・・までもが中の中から中の下という、よく分からない男だ。


苦手とすることはないが、得意とすることもない。すべてにおいて並、というのはある意味凄いとは思うが・・・器用貧乏の代名詞にされているのは悪いが羨ましくない。何しろついたあだ名が『Mrアベレージ』だ。普通の感性を持っている人間なら『平均野郎』と言われて嬉しいはずもない。


「あはは。灰島くん、食べる気満々だね?」


と、平均野郎のアホな叫びににこやかに答えるのは、俺の左隣にいる野崎理のざきりり々だ。

本人はコンプレックスに思っているようだが小柄で、童顔。顔に似合った体形で、妹属性を持っている連中には無類の強さを発揮する。一般クラスの中では成績上位に名を連ねているが、運動神経は目下ストライキの真っ最中。しかし、能力的には専攻・・のおかげもあってか高い方だ。


「おうよ!なにしろ俺は昼飯の為ために学園に来ている、と言っても過言じゃない!!」

「・・・いろいろ間違ってるだろ、それ」


学食だけが目的なら、何もこの学園にわざわざ来る必要なんてない。そんな平和な、普通の高校生活が送りたいんだったら、他にいくつも『普通の高校』は存在するんだから。


つまり、ここは普通の高校ではない。

現時点ではこの国の二ヶ所にしか認可が下りていない、対魔王用戦闘訓練科を有する教育機関なのだ。


だが、ちょっと考えてもらいたい。

魔王の統治下にありながら、魔王との戦闘を想定した教育機関が存在するというのは矛盾ではないだろうか?

この国は偶然にも魔王が最初に降りた地であり、直轄支配がされている。それなのに―――――『国立』、つまり国が資本を拠出してそんな機関を設けることができるのだろうか?


・・・・・残念ながら、答えは『Yes』だ。


そもそもはその魔王の一言がきっかけになって設立されたのだから、この学園の存在は意を汲んだものであり、必然。国にとってなくてはならないものだった。


ちなみに、その一言というのが。


『―――――暇だ、退屈だ、つまらん。・・・・・よし、遊ぼう。誰でもいい、我こそはと思う者は私を討伐しに来い。期間は3年。それを過ぎたら、今度は私がこの世界を滅ぼす』


何ともまぁ、乱暴なお言葉じゃございませんか。

かくして人類は、自分たちを滅亡から救ってくれた相手の退屈しのぎの遊び相手として再び滅亡の危機に追いやられてしまったというわけだ。


だが当然、かのアンゴルモワにすら対抗し得なかった人類が、それより強大な力を持つ魔王と闘えるはずもない。

『討伐しに来い』と言われたところで、負けると分かっている勝負を誰がするものか。3年後には滅ぼされるのだとしても、自分だけが先んじて命を落とす必要性を感じる者は誰ひとりとしていなかった。


しかし、そこはさすがのトンデモ生命体の魔王様。

きちんと考えてくださいましたとさ。


『お前たちに3つだけ、特殊な力をくれてやろう。1つ目は運任せ、2つ目は役割ごと、3つ目は自由意思での選択だ』


第一能力ファーストスキルと呼ばれる、完全ランダムに与えられる特殊能力。

第二能力セカンドスキルと呼ばれる、指定された『職業』によって決定される特殊能力。

第三能力サードスキルと呼ばれる、自分の意思で選ぶことができる特殊能力。


それが、俺たちに与えられた力。特殊能力と言うか、異能力と言うか・・・とにかく、それまでは考えもつかないような超常現象を起こすことさえ可能なものだった。


しかし、いくら何でも自分を斃すための力をご丁寧にも与えてくれるというのは正気を疑う。


・・・が、トンデモ生命体なのだから仕方ない。

もっとも、退屈しのぎにちょっかいを出して欲しいだけであって、本当はそこまでの力ではないこともじゅうぶんに考えられるのだが。


「とうちゃ~~~く!!よし、いざ行かん!!食のパラダイスへ!!!」

「あ、待ってよ灰島く~ん・・・・・あぅぅ、聞いてないや。優哉くん、私たちも行こ?」


食欲魔人は高尚な物思いにふける俺のことなど気に留めた様子もなく、自動の食券販売機へまっしぐらに走っていく。

あいつ・・・・・絶対に悩みとかないよなぁ。


苦笑しつつも理々に急かされる形で、俺たちもその後を追ったのだった。

本編に突入し、一気に文章量倍です(笑)

そして執筆時間は比例関係です(苦笑)


実は学校だったんですねぇ・・・物語の舞台は。

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