『ノストラダムスの大予言』の結末
果てしなく続くかに思えた、その低レベルな罵り合いの最中。
『・・・・・るさい』
微かに、小さな声が響いた。
とは言っても夢中になっている魔獣と破壊神にそれが聞こえるはずもなく、大地がびりびりと震えるほどの大音量での言い合いの中では人々にも聞こえるはずがなかった。
それでもこうして記述として残されているのは、おそらく教科書の作成段階で『そう仰られたのだ』という横槍が入ったからに違いない。げに恐ろしきは国家権力、というやつだ。
『だから、うるさいって・・・・・』
騒音どころか音害と言っていいレベルの音量に対する非難の声としては、あまりにも小さかった。
寝起きだったらしいし、何よりもそれがかすれるほどのものであっても『耳に入れるのが当然』とされていたのだから、そこまで声を張る必要性も感じなかったのだろう。
しかし、そんな聞く側の態度というやつは声の主の周辺と今現在の俺たちにこそ当てはまるものであって、魔獣と破壊神には当然適用されないものだった。
その結果。
『もぉ・・・うるっっっさーーーーーい!!!!!』
両者でさえびくっ、と体を竦ませるほどの怒鳴り声の直後―――――本人(?)が登場した際以上の光量と爆音が轟いたその瞬間に、まず破壊神カタストロフの体が一瞬にして蒸発した。
『な・・・なんだと!!?』
お互いに決定打こそ与えられなかったが、つい先ほどまで自分と互角以上の闘いを繰り広げていた相手が消滅してしまったアンゴルモワは、驚きを隠せずに大音量で驚愕の声をあげる。
自分の全力の攻撃でさえ、ほとんど手傷を負わせることができなかった相手を消し去るほどの力。
あまりの衝撃に、罵り合いの最中レベルの大声でそれを露わにしてしまう。
よせばいいのに。
『お前もうるさぁぁぁぁぁい!!!!!』
当然、アンゴルモワも次の瞬間に蒸発。
こうして七日七晩人類を滅亡の恐怖に陥れていた両者は、ものの数秒のうちに強制退去処分を受けるに相成った。
後の世―――――とは言ってもほんの数年前の話なのだが―――――に『アンゴルモワの大遅刻』と呼ばれることになったこの事件は、こうして幕を閉じることになった。
・・・・・え?その後人類はどうなったか、って?
それよりお前は誰なんだ、って?
こうして俺が生きているんだから、あまり説明の必要もないと思うけど。相当に数は減ってしまったが、しぶとく生き残ってるさ。
そして、俺は。教科書を読んでる俺は。
―――――キーンコーンカーンコーン―――――
「はい、じゃあ今日はここまで。『アンゴルモワの大遅刻』はテストに出るので、復習を忘れないように。特に『魔王様』のお言葉は必ず出ますからね~」
教師が教室を出ていくのに目もくれず、一つ伸びをして大きな欠伸をするのだった。
破壊神・・・ほとんど存在感なし(笑)
次回、プロローグ最終節。
ようやく本編に繋がっていきます。