『ノストラダムスの大予言』の変容
雲ひとつないというのに、光が遮られているというのに、赤く染まった空。
そこから地上へ向けてゆっくりと一条の光が差し込む。
それは瞬く間に大きく広がっていき、やがては地上を貫かんばかりの柱に見えるまでにもなったと言われている。
『おぉ・・・・』
こんな事態にも関わらず、人々はその幻想的な光景に目を奪われた。
そして、確信した。
救世主≪メシア≫が訪れた、と。
我々を救いたもう存在の降臨だ、と。
光の柱の中に薄ぼんやりと浮かんできたその姿は、まさに神秘の存在。
遠目からでもそれと分かる、明らかに人とは異なる巨躯。
その背中には一対の翼があり、その頭部には実に立派な一対の角。
「え・・・角!?」
『フハハハハハハハ!!恐怖の大王、などとは片腹痛し!!我こそは唯一にして無二の神!!破壊神カタストロフ様である!!!!!』
―――――救いは、訪れなかった。
神は神でも、現れたのはすべてを無に帰す破壊の神であったのだ。
もはや人類には滅びの道しか残されていない。誰しもが絶望するしかなかった。
『ガハハハハハ!!そんなナヨっちい体で何ができる!?冗談も大概にしておけ!!!』
『ふん、無駄に体が大きいだけの貴様に何が分かるか!!』
一触即発、どころかものの数分もしない間に魔獣と破壊神の戦闘は開始された。
お互いがお互いを標的としていたためにその間人々は眺めていることしかできなかったらしいが、元より人知を超えた存在同士の闘いだ。直接的な攻撃はなかったが、流れ弾でさらに多くの人命が失われたという。
そして、アンゴルモワが姿を現してより実に七日七晩の後。いつ終わるとも知れない両者の闘いが続いていた八日目の朝を迎えた時に、それが起こった。
『しつこいぞ、貴様!!いい加減にくたばれ!!!バーカ、バーカ!!!』
『なっ・・・!!バカって言う方がバカなんだぞ!!!お前のかーちゃん、でーべーそ!!!』
『ママの悪口を言うなぁぁぁ!!!!!』
終末戦争の様相を呈したそれは、単なる子供の口喧嘩レベルになり下がっていた。
助かる見込みは最早ないと諦めていた人類だったが、これには相当うんざりしていたようだ。長く恐怖が続き過ぎて、気がふれてしまった者も決して少なくはなかっただろう。だが、まだ正気を保っていた者も同じような見解を持つ者ばかりだった。
「もう、いっそひと思いに殺してくれよ・・・・・」
プロローグ終了までは、飛ばしていきます。