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純愛バトラー  作者: 天沢 祐理架
其の参 執事、狼狽す
11/30

沖縄へ行こう!

「はーい☆ という訳で、今回の修学旅行の視察は沖縄になりまーす♪」

 メンバーが揃った生徒会室に、元気な小雪の声が響く。

 今日は一学期の終業式。明日から夏休みだ。

 とは言っても、生徒会のメンバーは夏休み中にやらなければならない仕事も多い。今回小雪が言った、修学旅行の視察もその一つだった。

「視察って、具体的に何するんですか?」

 青司が小雪に質問すると、小雪は嬉しそうに答えた。

「えーとね。要するにぃ、修学旅行の予定コースを回って、スケジュール的に無理はないかとか、宿の泊まり心地とか、そういった事を事前調査するんだよぉ♪」

 そうなのだ。

「つまり、視察という名目で学校の金で遊びに行ける、と」

 青司の言い方は身も蓋もないが、視察旅行目当てに生徒会に入りたがる生徒も多い。

「忘れては困るけど、これはあくまで『視察』ですからね。ちゃんとレポートをまとめて提出しないとダメよ」

 千沙子がもっともらしい顔で言うが、他のメンバーは既に旅行気分。実際、視察というのはただの表向きの名目で、優秀な成績を修めている生徒に対しての学校側からの飴の一つなのだ。

「ちなみに、旅行……もとい、視察のプランは既に出来上がっています。

 とりあえず、僕らは遊ぶだけ遊んで、実際の日程プランについては、適当に班行動という形で提出してしまうのが良いかと」

 そう言いながら、自作の視察プランをメンバーに配る長船。

 三泊四日という範囲で、可能な限り遊び倒せる隙のないスケジューリングだ。

「わーい☆ さすがゆうちゃん、頼りになるぅ♪」

「暇だったからね」

 小雪の賛辞に素っ気無く答えると、長船はオレの方に向き直って言った。

「会長の許可がでれば、このプランで行こうと思いますが、宜しいですか?」

「よし、んじゃこれで。

 出発は八月一日。忘れたり寝坊したりするなよ」

 そんなわけで、オレ達は沖縄へと出発する事になったのだった。


 そして八月一日。

 オレたち六人は沖縄行きの飛行機に乗り込み、本州を後にした。

「沖縄に着いたら、俺、結婚するんだ……」

 フライトが始まったとたん、唐突に青司が言った。またいつもの冗談が始まったようだ。

「何。青司、そなた沖縄に婚約者がいたのか?」

「御剣さん、それは、ただの死亡フラグかと」

「せーじくん、最近死亡フラグに凝ってるんだよね♪」

「死亡フラグ?? 何だそれは」

 訝しげな顔をしている絵理に、長船が説明を加える。

「物語のお約束パターンの一つですよ。家族や婚約者の話をしだしたキャラが高確率で死ぬという現象の事です」

 長船の説明を聞いた絵理の表情が曇る。

「縁起でもない事はやめよ。もし本当に死んだらどうするつもりだ」

 真剣に対応している絵理がなんだかおかしくて、皆で笑った。

「うーん、やっぱり結婚はワンパターンかなぁ。新しいバージョンを考えなきゃ」

「あははー♪ じゃあ、娘の結婚式ってパターンは?」

「なにぃ!? 結婚を控えた娘までいるとなっ! 青司。そなたは一体いくつなのだ」

「や、さすがにそれはない……」

 話が変な方向に転がりだしたせいか、青司が唐突に話題を変える。

「ところで、引率の教員がいないようですが、いつもこうなのです?」

「いいや。去年までは、ちゃんと引率の教員もいたぞ。今年はなぜか、急遽視察旅行に行けなくなったとオレに連絡があった」

 ちょっとおかしいなと思ったが、いないほうが羽を伸ばせるので、特に言及もしなかったのだが。そんな疑問に答えたのは、意外な事に千沙子だった。

「ああ、私が圧力を掛けて、今日来る事を辞退してもらったの。この場にはいないけど、同行している事になってるわ。仮に何かあったら、その先生、責任を問われて首ね。哀れな社会人の首を飛ばしたくなかったら、軽率な行動は謹んでちょうだいね?」


…………………………………。


 この言葉に、一同絶句。

『視察旅行なのよ?』なんて他のメンバーをたしなめていたくせに、お前のやってる事が一番シャレになってないんだが。

 沈黙するメンバーに対して不満なのか、千沙子は文句を言い始めた。

「何よ。せっかくゆっくり羽を伸ばせるようにと思って手配したのに。邪魔者がいなくなったんだから、もっと喜んだらどう?」

「いやぁその。アリガトウゴザイマス」

 貼り付けたような笑顔で、オレ達が礼を言うと、一応満足したらしい。

「それにしてもエコノミーって狭いわね。帰りはファーストクラスにしましょう」

 口では文句を言いながら、上機嫌。どうやら、今回の旅行で一番はしゃいでいたの千沙子だったようだ。

 それにしたって、教員に圧力かけて、同行排除って……。

「金持ちパネェ」

「あら、陣。何か言ったかしら?」

 ニコニコとした表情が逆に怖い。

「いや何も。

 あ、すいません。烏龍茶ください」

 千沙子の言及から逃げるように、ちょうど通りかかったフライトアテンダントに飲み物を注文する。

 そんなオレ達を乗せて、飛行機は青い空を飛んで行った。

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