表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

彼女は

作者: あさぴ

奔放でわがままだけど、裏表のないタイプに憧れますが、なかなかそうはなれないものです。

私は双子の姉。周囲に言わせると、私は、自分勝手でわがままな人間らしい。全く、不本意な評価だわ。

そしてそれはたいてい、妹と比べて評された言葉だった。

妹はやんわりとしていてひとあたりがよく、どのような場面でも自分よりも相手を立てる。

顔はそっくりだけど私とはまるで正反対で、だからこそ、私達姉妹は良好な間柄を築くことが出来ているように思う。

妹とは通う高校も同じで、どうせルートが同じなのだからと登下校も共にしていた。クラスこそ違うものの、あんまり仲が良さそうなものだから、私達姉妹は学年の間ではちょっとした名物になっていた。ふん、まったく!見世物じゃないんだからね!



さて、下校時刻になり、今日も私は妹と並んで廊下を歩いていた。

私の、嫌いな教師への恨み言を、隣で微笑みながら聞いている。


前方から、同学年の女子のグループが、横3列に広がり、他の生徒の通行を妨げながらこちらに近づいて来た。

彼女らに気付いた妹は、さりげない動作で私の横から、背後へと移動する。思慮深い妹らしい行動だ。

だけど私はそんな妹の気遣いを無駄にする行動に出た。

我が物顔で道を歩く連中には我慢ならない。だから通りすがりに舌打ちをひとつしてやった、というわけ。

案の定女子三人組は私の挑発的な行動に飛び掛かってきた。…いや、飛び掛かろうとしたのだが。

妹がすかさずフォローに入ったのだ。ごめんなさい、今のは舌打ちじゃなくて投げキッスなんです…って、あんたねぇ!

女子三人組が一瞬呆気にとられた隙に、妹は強引に私の制服の袖を引っ張ると、一目散にその場を離れたのであった。



その話を聞いたママは、夕飯を作る手を止めて、はぁ、と大袈裟にため息をついた。

やっぱり、私はわがままで思いやりがなくて、妹は優しいいい子、らしい。

隣で妹が、ふいに冷たい瞳をする。

そういえば、こういう話になると、この子はとても無口になる。どうしたのかしらね。

何にしても、私はこの子がうらやましい。あんな風に温厚になれたらいいのに…。私は荒れ狂う闘牛のような自分の心に、人知れずため息をついた。





あなたは優しい子。

その言葉が、あまりにも空々しくて私は表情を変えずに笑った。

私は双子の妹。



今日も、姉と一緒に帰路に着く。廊下を並んで歩いている。

姉は、体育の鬼教師がよっぽど気に入らないようで、文句を並べる口は当分閉じられそうにない。

ほんとに、姉はパワフルだ。だって怒るのって、疲れない?



前方から、おしゃべりに夢中な女子生徒が3人、歩いてくるのが見える。あぁ、ああいうタイプの子は、絶対道を譲らないのよねぇ…。

私はつとめてさりげなく姉の横から後ろに移動する。

こうして他人と極力摩擦を起こさない。それが私のやり方だ。



しかし女生徒達との擦れ違い際に、姉の背中から舌打ちが聞こえた。女生徒達が一瞬にして険しい顔に変わる。

あぁ…やだな、私を巻き込まないでよ、お姉ちゃん。

私は慌てて、笑顔を作りその場を取り繕う。投げキッスだなんて馬鹿っぽすぎたかな……まぁいいか。

私は姉の制服の袖を引っ張って、走る。



ママが言った。あなたは優しいと。



それは違う。私は、他人にはなから期待していないから、腹も立たないだけ。礼儀のない同級生も、鬼教師も、べつに想像の範囲内というだけ。



どうでもいい人のためにエネルギーを使いたくないだけなのよ。

ママはああいうけど、たぶん、本当に優しいのはお姉ちゃんの方だと、私は思うのだ。

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 優しいから理不尽な人を見ると腹が立つのですよね。 そう言う人がもう少し居た方がいいかな?と思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ