席替えという些細な出来事から生じた僕の日常における大きな変化についての話(後)
この小説ではあらすじの内容にまったく関係のない話が展開していきます
そうしてたどり着いた社姫の家は神社だった。社神社。なんか漢字で書くと上から読んでも下から読んでもだ。っていうか社の家が神社ってことは・・・社は巫女?・・・・萌える。ってことは、僕が庭で待たされている今、現在、彼女は巫女服にお着換え中ということか?・・・うっしっしっし。デジカメ持ってくるんだったな。それにしても、社の家が神社だったとは知らなかったな。もしかしてあいつがクラスメイトとほとんど関わらないのは俗世間との交わりを絶つ的な意味なのか?そんなことを考えていると社姫が期待通り赤と白の巫女服に着替えて出てきた。おぉ!!さっきまでの毒舌ぶりなど全て吹っ飛んでいくほど、ふつくしい。自慢の黒髪が後ろで縛ってあるのもポイントが高いといえる。そしてその左手には・・・縄?右手には・・・日本刀?えっ!?えっと、どういったプレイですか?
唖然としていた俺はあっさりと社に捕まり、庭の木に後ろ手に縛られてしまった。っていうか社さん、手際良すぎっす。
「さてと」
というと社はどう見ても日本刀にしか見えないそれを抜いた。うん。やっぱり日本刀だ。そうして彼女はそれを僕の首にあてがって・・・・って僕殺される!?知り合ってまだ間もないクラスメイトの女子に殺される!?えっ、理由は!?さっきの妄想がいけなかった!?巫女姿に萌えたのがいけなかった!?っていうか弁解の余地はない感じですか!?
「覚悟」
無理っす!!覚悟できないって!!ちょっと待ってよ社さん!!説明とか解説とかお願いしますよ!!そして謝罪とか弁明とか懺悔とかさせてよ!!
シュン!!
社は日本刀を僕の首に向けて振り下ろした。その時だ。
ど~~~~~ぉぉん
なんというか、僕の体から衝撃波が放たれて社が吹っ飛ばされた。僕は初めて本当に人が吹っ飛ばされるのを見た。
ドサ
つまらない音と共に社の体が地面にたたきつけられた。そして僕の目の前には鬼がいた。もちろん鬼なんて見たことないし、だからそれが本当に鬼なのかなんて知らないけど、でもこいつは鬼だ。醜い、恐ろしい鬼だ。
「ようやく出てきたか。」
そう言いながら社が立ち上がった。あんなに吹っ飛ばされて、体は大丈夫なのかあいつ?っていうか出てきたって!?あいつ僕から出てきたの?だから社は僕を縛りつけてあの日本刀で・・・・っておい、鬼退治のために僕という尊い犠牲が出ちゃうとこだったじゃんか!!
ぐぉぉぉぉお
鬼が低い、この世のものとは思えない唸り声で社を威嚇する。社も無言で鬼を睨みつけている。社が徐々に間合いを詰めていっている。あと3歩、あと2歩、あと1歩!!社は一気に鬼の懐に飛び込んで切りつける。しかし鬼は社の剣を押さえ、そのまま刀ごと力任せに社を放り投げた。
ドサ
再び社は地面にたたきつけられた。あんなこと続けられたらあいつ・・・くそ、僕も助けないと。・・・駄目だ。縄がきつくて外れない。そうしているうちに社は再び立ち上がり、鬼に飛びかかる。しかし今度も剣は鬼に届かず、社は三度地面にたたきつけられる。
「もういいから、逃げるんだ社!!!」
ぼくは思わず叫んでいた。すると社はにやりと。ん!?鬼を見ると何やら目を押さえて苦しんでいる。
ぐぉぉおおおん
なんか木の枝が目に刺さったようだ。社が!?
でゃぁぁぁぁ~!!!
社は早くも攻撃に移っていた。叫びながら鬼に向かって一直線に走り、走り、走り。あっ!!危ない!!鬼の攻撃が!!当たる直前に社は消えた。いや、僕には消えたように見えた訳だが、実際には飛び上がった。とても女子とは思えない跳躍力だった。そして社は上空から鬼の心臓めがけて日本刀を突き刺した。
ぎょぉぉぉぉお
この世のものとは思えない雄叫びと共に鬼は消えていなくなった。
彼女が僕を家に誘ったのは、どうやらこのためだったようだ。用が済んだから帰りなさいと僕は家の中にもあげてもらえずに帰されそうになったのだが。さっきのは一体どういうことなのか説明をさせるために無理に家にあげさせた。(まぁ玄関までしか入れてもらえなかったのだが)そうして無理に聞き出した話によると、僕の住んでいるこの街は土地柄、非常に怪異が発生しやすいらしく、彼女の神社では代々怪異から街の人を守ってきていたらしい。そのための刀がさっき彼女のふるっていた日本刀「布都御魂剣」だそうで、あのまま僕ごと鬼を切りつけても僕は死ななかったらしい。(それなら最初に説明しろよ)
「で、なんで僕が鬼に取り憑かれてたんだよ」
「怪異はね、どこにでもいるのよ。みんな気がつかないだけ。あの鬼だってもともと神楽の中にいたものなのよ。」
「僕の中にって・・・」
「それがあんなにはっきりした形で存在できるようになったのは、まぁ神楽友達いないからねぇ。良からぬことでも考えてたんじゃないの?」
確かに人の妬みや恨みといったマイナスな思いは鬼を生むとか聞いたことあるかもしれない。そういった僕の中の悪い気持があの鬼を生んだそうだ。とはいっても僕がそんなに心病んでいるということではなく、あの程度の鬼は通常誰でも抱えているレベルだったそうだ。本来の鬼の力はもっと強力で、社が一人でどうにかできるものではないらしく、僕の鬼は下の下の下のホント最低ランクの力の鬼だったらしい。社としては隣の席になったよしみで心から鬼を払ってやろうというほんの気まぐれで、僕にとってはこれは放っておいても構わない程度だが、鬼を払ってもらったほうが心にも身体にもいいわけで、どうやら僕は彼女の気まぐれに感謝しなくてはならないらしい。
「そういえば戦ってるときに鬼が目を押さえてたけど、あれお前何したの?」
なんとなく興味があったから僕は聞いてみた。
「何って、柊よ。鬼とやり合うことになるだろうから準備しておいたのよ」
柊。木犀科。古くからその鋭いトゲにより邪気を払う木とされ庭に植えられてきた。また、鬼が目を突かれて退散したという言い伝えから、別名鬼の目突きといい、節分には家の戸口に飾られることがある。まぁどうやら鬼の弱点的なものだったらしい。
「ほら、もういいでしょ。友達がいない神楽は久しぶりにクラスメイトのそれも女の子とお話しできて至福の時かもしれないけど、そろそろ夕飯の準備とかさっきの後片付けしたいんだけど・・・」
確かにさっきの鬼との戦いで庭はかなり荒れてしまっていた。あんなに恐ろしかったのに、あれで最低ランクの強さだったなんて・・・一体上位ランクの鬼は・・・・いかん、フラグだ。そういえば時間もすっかり夕方で、夕飯の準備というのも本当だろう。あんまりお邪魔しても迷惑だろう。(玄関だけど)
「あぁ、んじゃあ今日はありがとな」
「今日はだなんて、私はもっと神楽に一生感謝されるべきだわ」
一生って・・・まぁ社のあの戦いぶりを思えばそれもそうなのだろうか。
「まぁいいわ。今日から私が神楽の話し相手になってあげるわ」
!?それは一体どういう
「勘違いしないでね、私はただせっかく退治した鬼がまた発生すると面倒だから、そうさせないためにね。そう、ただの患者のアフターフォローよ」
うぉ、これは噂に聞くツンデレという奴か!?初めて生で見たぜ。というかあれってアニメとかマンガの中以外にも生息してたんだ。うわぁ~感動だ。なんというか今日僕の中の小さな世界が、かなり大きく広がった。アメリカ大陸を4つ発見したくらい広がった。お~インディアン!!
そんなこんなで、この日以来僕には社姫という女の子の友達ができた。なんかもっと女の子の友達ってドキドキするもんだと思ってたけど、こんなもんなんかな。結局今回の席替えは僕の高校生活に多大な影響・変化を与えるものとなったのだ。席替えって意外と大事だったんだなぁ。まぁ今後も僕の高校生活は続いていく。社に関わったせいでなんか色々大変なことが起こっていく訳なんだけど、そういった話はまた今度。今回のお話はここまでで。僕の長い話にお付き合い頂きありがとうございました。
ハイ。これで第一話は完結です。えっと、布都御魂剣とか柊のくだりとか色々ありますが、この小説では深いことはあんまり気にせずに楽しんでもらえたら幸いです。社家の詳しい設定とか別に考えてないので布都御魂剣がなぜこんな神社にあるのかとかたぶん最後まで書かないので、ほんと気にしないでくださいwでは第二話は何書こうかな~今後もよろしくです☆