第1話 ある町の男
ビビノ王国そこは人々が楽しく平和に暮らしている素敵な国。
誰もが元気に過ごしているそんな国の外れに石造りの小さな家があった。
「ふぁ~あ……ん?もう昼か……」
彼の名前はダッブ碌に働きもせず毎日、食っては寝ての繰り返しの日々を送っていた。
「もう少し寝よ……」
毛皮の布団を被り俺は深く深呼吸をした。
コンコン――
「……」
いざ、眠りにつこうとした時、家の扉を叩く音が俺の眠りを妨げた。
コンコンコンコンッ――
気にしないように寝返りを打って扉の方から顔を背けるが――
ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!――
(うるさいなぁ……)
扉を叩く音は段々と大きくなり静かに眠る事がついには出来なくなった。
仕方なく起き上がり服を着ると外の扉の向こうから聞き覚えがある女性の声が聞こえてくる。
「ダッブー!居るのは分かってるのよ!」
「はぁ…」
俺はやかましいその声に大きなあくびをして扉の方へ近づいた。
「はいはい、今開けますよ」
扉を開けるとガラガラという音と共に差し込む太陽の光で俺は思わず目を細めた。
そして、その光の中に幼馴染のヤーシャがひどい剣幕をして立っていた。
「居るならさっさと出てきなさいよ!」
「ちっ……うるさいなぁ」
「あのね!ウチがアンタを追い出そうとすればいつでも追い出せるんだからね!」
「へいへい、ヤーシャさま」
俺の朝は毎日、借金を取りに来た彼女に怒鳴られて起こされる。
もはやルーティンになっていると言っても過言じゃない。
「っ!……ちょ、ちょっと!アンタ!下」
「あっ?」
「ズボンくらい履いてってば!」
「別に見られて減るもんじゃねえだろ?」
「いいから!さっさと下、履いてきなさいよ!」
「めんどくせーな」
「もうっ!ホントにバカ……」
ヤーシャに背中を押され言われた通りにズボンを履いて戻ると彼女は一枚の紙を俺に見せびらかした。
「はい、これ……」
「なんだよ……これ」
ヤーシャがチラつかせた紙を受け取るとそこには0が六つ並んだ数字と一ヶ月の期限が書かれていた。
「借用書よ、しゃくようしょ!」
「こんなの貰ってもお前……腹の足しにならねぇよ」
「はぁ~……なるわけないでしょ!いーい?今日から一ヶ月以内に借金全額はらってよね!払えなかったら……わかってるわよね?」
「は、払えなかったら?」
「アンタの家も物もぜーーーんぶ!差し押さえるから」
「い、いや勘弁してくれよホント」
俺は泣きつくようにヤーシャにすがったが彼女の無慈悲な蹴りに俺の体は吹き飛ばされた。
「そんな……俺にはそんな大金なんて用意できねぇよ」
ヤーシャの無慈悲な言葉に思わず泣き言をこぼすと彼女はため息をつくともう一枚の紙を取り出し俺の方へ投げ渡した。
俺はその紙を拾って書かれていた記事を読んだ。
「”王国の西にあるシシ山に謎の洞窟現る”?この記事がどうしたんだよ……」
「もう、察しが悪いわね……迷宮よ!ダ・ン・ジョ・ン!」
ヤーシャは紙を拾い俺にこのダンジョンを攻略するように紙を叩いた。
「ここは割と最近に出てきたダンジョンで、噂じゃ宝石が眠ってるって話よ!」
確かにそんな夢みたいな洞窟があるなら是非とも行ってみたい、だがヤーシャの持ってくる話には大抵、裏がある。
その話を聞いて『よっしゃー!』と喜ぶほど俺もバカじゃない。
「でも、そんなイイ話があるならもう、誰かに攻略されてるんじゃないか?」
ヤーシャは何も言わずにコホンと咳払いをすると、俺の方を見下ろした。
「いーい?一ヶ月だからそれ以上は待てないから!」
そう言い残すとバンッ!と扉を閉めて出て行った。
俺はベッドの上に横たわりながら、洞窟の事が書かれた紙を見つめた。




