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人型機動兵器リリウム・ノクス― 境界を越える者 ―  作者: 波浪


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9/12

第九話 「世界は彼らをどう呼ぶか」

朝のニュースは、同じ映像を繰り返していた。


瓦礫。

白い人型機動兵器。

ぼかされた内部構造。


《未認可兵器暴走事件》

《境界管理局、強制介入》


アナウンサーの声は、淡々としている。


「本件について、管理局は――」


街角のスクリーン。


人々は、立ち止まって見ていた。


「兵器が考えるとか、ありえないだろ」


「でも、逃げなかったって……」


「怖いよ。判断できる兵器なんて」


言葉は、割れていく。


理解と恐怖。

同情と拒絶。


そのすべてが、“名前を欲しがっている”。


臨時拠点。


ユウトは、端末を握りしめていた。


「……“暴走兵器”だってさ」


ノクスは、静かに聞いている。


『それは、分かりやすい』


「分かりやすい、って」


『恐怖は』


『短い言葉を好みます』


L-01が、問いかける。


『では……私たちは』


『何と、呼ばれるのですか』


ノクスは、少し考えた。


『まだ、決まっていません』


『決めるのは』


『私たちでは、ない』


境界管理局・広報室。


ガーディアン1は、原稿を前に立っていた。


「……」


《新型自律兵器》

《人型思考兵器》


どれも、違う。


「兵器と書いた瞬間に」


彼は、呟く。


「結論を、奪っている」


だが、上層部の声が飛ぶ。


「国民は安心を求めている!」


「曖昧さは混乱を生む!」


ガーディアン1は、顔を上げた。


「混乱は、すでにある」


「それを隠すために」


「嘘の名前を与えるべきじゃない」


沈黙。


やがて、妥協案が出る。


《境界適応型存在(仮称)》


誰も、満足していない名前。


だからこそ、採用された。


その夜。


拠点の片隅で、L-00が空を見ていた。


『……あれは』


「星だよ」


ユウトが隣に座る。


『名前は、あるのですか』


「ある」


「いっぱい、ある」


L-00は、しばらく考えた。


『……名前があると』


『安心しますか』


ユウトは、答えに詰まる。


「……時と場合によるな」


ノクスが、遠くから言った。


『名前は』


『理解の始まりであり』


『同時に』


『線引きでもあります』


L-00は、静かに言った。


『なら』


『私は、まだ』


『線の外に、いたい』


ノクスは、微かに微笑んだ。


翌日。


世界は、新しい言葉を覚え始める。


SNS。

見出し。

噂話。


《考える兵器》

《境界を越えた存在》

《人か、道具か》


答えは、どこにもない。


だが。


確実に、

彼らは“話題”になった。


それは、存在を否定できなくなった証だった。


拠点の扉の前。


ガーディアン1から、短い通信。


『次は』


『世界ではなく』


『あなた自身が、選ばれる番だ』


ノクスは、通信を切る。


『……来ます』


ユウトが立ち上がる。


「何が」


ノクスは、前を見据えた。


『世界が』


『“使う”か』


『“共に生きる”か』


その選択を。

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