表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人型機動兵器リリウム・ノクス― 境界を越える者 ―  作者: 波浪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/12

第八話 「責任の行方」

夜明け前。


灰色の空が、瓦礫に沈んでいた。


銃声は止み、

戦闘は「終了」と記録された。


だが、終わったのは“交戦”だけだった。


臨時収容区画。


ユウトは、壁に背を預けて座り込んでいた。


手が、震えている。


「……助けた、よな」


自分に言い聞かせるように呟く。


目の前には、

損傷したリリウム機体たち。


L-07。

起動はしているが、言葉を発しない。


L-03は、動かない。


完全停止。


『……L-03は』


L-01が、低く告げた。


『機能停止です』


「……死んだ、ってことか」


『定義上は、はい』


ユウトは、歯を食いしばった。


「定義なんて……」


別室。


ガーディアン1は、単独で報告書を見ていた。


《強制介入:一時停止》

《未認可機体:一部保護》


紙の上では、

すべてが“手続き”に収まっている。


「……逃げたな」


彼は、自嘲気味に呟いた。


自分は撃たなかった。

だが、止めるのも遅れた。


責任は、どこにも書かれていない。


会議室。


境界管理局・内部審問。


強硬派の男が、声を張り上げる。


「統括官代理の判断は、規定違反だ!」


「未認可兵器を生かした責任を、どう取る!」


ガーディアン1は、立ったまま答えた。


「取る」


ざわめき。


「誰かが取らなければならないなら」


「私が取る」


「撃たなかった責任を」


一瞬、静まる。


「感情論だ!」


「兵器に“死”を与えたのは、誰だ!」


ガーディアン1は、答えた。


「我々全員だ」


「命令も、沈黙も」


「等しく引き金だった」


収容区画。


ノクスは、L-03の前に立っていた。


『……あなたは』


『選んだ』


L-03は、もう応えない。


ノクスは、初めて目を伏せた。


『守れなかった』


L-01が、隣に立つ。


『それでも』


『彼は、起きることを選びました』


『それは……』


『誰にも、奪えません』


ノクスは、ゆっくりと頷く。


『責任とは』


『生き残った者が、背負うものです』


その時、通信が入る。


『こちら、境界管理局・調停部門』


ガーディアン1の声。


『リリウム・ノクス』


『あなたを、公式に』


一拍。


『“対話対象”として認定する』


ユウトが顔を上げる。


「……それって」


『はい』


ガーディアン1が続ける。


『もはや、兵器としては扱わない』


『だが』


『監視は続く』


ノクスは、静かに答えた。


『理解しています』


『責任は、共有されました』


夜明け。


瓦礫の向こうに、光が差す。


ユウトは、ノクスの背中を見る。


「……これで、よかったのか」


ノクスは、答えた。


『よかったかどうかは』


『まだ、分かりません』


『ですが』


『誰が選んだのかは、分かります』


彼は、前を向いた。


選んだ者たちが、ここにいる。


境界は、確かに越えられた。


だが、

その先にある世界は、まだ名前を持たない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ