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硬派な彼女  作者: Satch
5/12

第5話:宣戦布告、前編

「ちょ…ゆたかくん?」


「美咲ちゃん…」


そっと美咲ちゃんを引き寄せ、抱きしめてみる。


「だ、だめだよ、ね、起きて?」


「大丈夫、大丈夫」


っていうか俺、寝てないから!


「だ、だめってば!」


「大丈夫だから…ね?」


「あっ…やっ…」


「美咲…」


「いいかげん起きろ!」


「いだぁ!」


脳が揺れるような衝撃で目が醒めた。


「夢か…ってか寝てた!」


「…」


「あれ、美咲ちゃん!?」


腕を組んで真っ赤な顔をした美咲ちゃんが、ジト眼で睨んでた。


「ど、どうしたの?」


「それより、何か言うことあるよね?」


美咲ちゃんに襟を掴まれてグィっと引き寄せられる。

か、顔近い!


「え? いらっしゃい…?」


「違う!」


「…」


「…」


「えっと…今日もかわいいね」


「…あ、ありがとう、ってごまかすな!」


あのー…ごまかすって何のことでしょう?


「ごめんなさいは?」


「ご、ごめんなさい」


って、え? なんで俺怒られてるの?


「っていうか俺なんかした?」


「…はぁ」


はい、ため息いただきました!


「あのー俺…いや僕何かしましたでしょうか?」


「覚えてないの?」


ジト目から半眼に変わってきました!


「うん、まぁ」


「だ、抱きしめられた、それから…」


俺が美咲ちゃんを抱きしめた?


「あ!」


「思い出した?」


「うん、抱きしめたところまでは覚えてる…けど、その後何かしたっけ?」


何故か顔を赤らめる美咲ちゃんは超絶かわいいっス!


「教えない!」


「なんで!?」


「胸に手を当てて考えろ!」


「えっ!? いいの?」


美咲ちゃんの胸を触ろうとする手を弾かれた!


「いたっ!」


「自分の!」


「あ、あぁ、自分のね…」


「また触られるところだった…」


ん? また触られる…?


「もしかして俺…む、胸を触った?」


「触ったというか、も、も…」


さらに顔を赤らめる美咲ちゃん。


「も?」


「も、もま、揉ま…ゆたかくんのエッチ!」


「いだぁ!」


本日2度目のパンチが俺の脳を揺らした。でも美咲ちゃんの胸は揺れなかった。


「もっかい殴られたい?」


心読まれた!?


「そ、それより美咲ちゃん今日はどうしたの?」


「だって今日はデートだよ?」


「うん、それは分かってるけどまだ早くない?」


チラっと時計を見るとまだ8時だった。

待ち合わせは11時なのに…


「それに、待ち合わせは駅前だったよね?」


「そ、そうだよ」


何故か美咲ちゃんはあたふたしだした。


「じゃあどうして」


「だって早く…ったんだもん」


「え? ごめん途中聞こえなかった」


いやあのね、ぷぅっと頬膨らまされても聞こえなかったんだからしょうがないよね?


「だ、だって早く会いたかったんだもん!」


「…」


「ゆ、ゆたかくん? め、迷惑だった…かな?」


「美咲ちゃん大好き!」


「きゃあ!」


めちゃめちゃ嬉しくて、めちゃめちゃかわいくて、思わず抱きついちゃいました。


「あ、ごめん!?」


殴られる前に体を離すと、まっかな顔をした彼女はキョトンとしている。


「迷惑なんてとんでもない、めっちゃ嬉しかったよ!」


「そ、そっか…」


「…」


「…」


二人で見つめ合うこと数分


「にーちゃん、この部屋暑くない?」


「うお!」

「きゃあ!」


「ちょ…カナ…いつからいた?」


急に登場したこいつは隣の家の女の子で、ちょくちょく家に遊びにくる。

歳は10歳で長い髪を結わってツインテールにしている。


「んー? 早く会いたかったんだもんのあたり?」


「ぐふっ…」


い、一番見られたくないところからかよ!


「ゆたかくんの妹さん?」


美咲ちゃんは俺の腕を軽く掴んで、見上げてきた。


「あ、こいつは隣の家のカナ、よく遊びに来るんだ」


「ふーん…」


「にーちゃん、この娘どこの小学校? カナの学校にはいないけど」


「し、小学校…」


「は、はは、いてっ! こ、このお姉さんはね、俺のクラスメートだから高校生だよ」


美咲ちゃんは俺の腕をものすごい強さでつねってくる。


「っええええええぇぇぇぇええ!?」


「ちょ…驚きすぎ…いてっ!」


このままだと俺の腕が持ちそうにないです。


「おまえなんかに、にーちゃんは渡さないからな!」


宣戦布告!?

ってなんでカナがこんなに闘争心を燃やしてるんだろ? 意味分かんない!

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