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硬派な彼女  作者: Satch
4/12

第4話:今度は俺ん家へGO!?

昼休み、購買で買ったパンを持って美咲ちゃんの席に向かう。


「美咲ちゃん、一緒にお昼食べよう?」


「…うん」


美咲ちゃんは身体の大きさに比例してか、えらく小さい弁当箱を開けた。


「それ、お母さんが作ったの?」


「ううん、自分で作った」


ちょっとだけ自慢気に、ない胸を反らしている。


「えっ!? まじで?」


「…驚きすぎ」


「ああ、ごめんごめん、想定外だったから…」


「むぅ」


美咲ちゃんは少しだけ頬を膨らませている。


「そのウィンナー美味しそうだね」


「美味しい」


「うん、そのウィンナー美味しそうだなぁ」


「だから美味しい」


だめか…「はい、あーん」とか期待してたけど、まだ早い?


「頂き!」


ウィンナーを素早く摘みあげて口に放り込んだ。


「あっ! こら!」


思わず大きい声をだして、周りを気にする美咲ちゃん。

周りの人もいつもと違う美咲ちゃんに戸惑っている。

そして「あの2人…」とか話しているのが聞こえてくるが、

こうなることは分かっていたので、気にしないことにする。


「う、うめぇ!」


「…」


美咲ちゃんは何も言わないけど嬉しそうな顔をしている。


「ね、今度俺のも作ってよ」


「…なんで竹田のまで作らないといけないの?」


「いいじゃんか、けちー、けちー、あ…ごめんなさい」


美咲ちゃんがこぶしを握り締めるのが見えたので、先制して謝っておく。


「はぁ…気が向いたらね」


「やったぁ!」



放課後、美咲ちゃんと学校から駅に向かって歩いていると、唐突に言い出した。


「ね、今日はゆたかくん家を見てみたいな」


「え? 俺ん家来ても面白いもの無いよ?」


「面白いか面白くないかは私が決めるの!」


「はいはい、お姫様」


「じゃあ決まりね、はい!」


美咲ちゃんは手を前方に突き出して、どうしたんだろう?


「ん?」


「もう! ほら」


えっと…手の甲にキス? な訳無いよね。


「つなげ!」


「え? 手つないでいいの?」


「うん」


恐る恐る美咲ちゃんと手をつなぐ、や、やわらかー。


まだ駅に着いてないが、こんなところで手をつないで歩いていたら何言われるやら…。


「そこの君、小学生を連れてどこにいく?」


「違うんです、この娘はこう見えて……って和利かい!」


慌てて言い訳しようとしたら、ニヤニヤした和利だった。


「お二人さん、手なんかつないでどこ行くんだ?」


「どこって俺ん家だけど?」


「なに!? おまえらもうそんな仲になったのか?」


「どんな仲だか知らないけど、美咲ちゃんが俺ん家見たいっていうからさ」


「ふーん、そうか」


反応、薄!


「美咲を泣かせんなよ」


「分かってるよ」


「じゃあな、美咲もまたな」


「うん、バイバイ」


和利は軽く手を上げて去っていった。


「なんだったんだあいつは…」


「そんなことより、こう見えてって何?」


「え?」


美咲ちゃんは30センチくらい前に立って俺を見上げてくるから、

このままキスでもしてしまいそうだ。


「この娘はこう見えてって言った」


「えっと…こんなにかわいく見えてって意味だよ」


「ふーん…」


少し納得が行かないと感じの美咲ちゃん。


「そ、それより早く行こう」


「うん!」


あぶねぇ! なんとかごまかしきったよ、神様!


「お家着いたら、お仕置きだからね」


ぎゃー! ごまかしきれてなかったよ、神様!

ってか、お仕置きって何されるんだろう…。




「ここ?」


「そうだよ」


「へぇ、意外と大きいんだ?」


「借家だけどね、どうぞ」


玄関のドアを開けて美咲ちゃんを招き入れる。


「ただいまー」


「おかえり、って、あら?」


俺の母さんは美咲ちゃんを見るとちょっと意外な顔をした。


「彼女、美咲ちゃんだよ」


「…黒崎美咲と言います」


「豊、まさかこんな小さな子を誘拐…」


「違うから! 同級生だから! っていうか同じ学校の制服着てるじゃん!」


「いらっしゃい美咲ちゃん、あがって」


って無視かい!


「…お、おじゃまします」


「美咲ちゃんこっちだよ」


「うん」


美咲ちゃんを階段に案内しようとしたときに母さんから呼び止められた。


「豊」


「ん、なに? 母さん」


「ジュースとお菓子あるけど、30分くらいしてから持ってったほうがいいかい?」


「なんでだよ!」


「取り込み中だったらと思って」


「まだ、そんな関係じゃないから!」


「そう、『まだ』ね」


「うぐっ、す、すぐ持ってきてよ」


「はいはい」


高校生の息子にそんな気を使うなんてどんな親だよ!


「美咲さんその階段あがっていいよ」


ちょうど階段の前で待っていた美咲ちゃんに声をかける。


「うん」


俺もその後に続いて階段をあがっていくと、スカートが短いから見えそうだ!

言うべきか黙っておくべきか男なら誰でも葛藤するこの難題をどうしよう?


「えっち…」


「っ!? 見えてないから!」


「え? あ!」


慌ててスカートを押さえる美咲ちゃん。


「…」


ジト眼で睨まないでよ、本当に見えてないんだってば!


「そ、それより、なにがえっち?」


「ゆたかくんがえっち」


「だから見えてないって!」


「違う…あれ…」


「あ!」


今度は俺が慌てる番だった、階段をあがった先の突き当たりの部屋が俺の部屋だけど、

ドアが開いていて、ベッドの上に出しっぱなしになってるエロ本が見えていた。

慌てて部屋に駆け込みベッドの下にエロ本を隠す。


「あ、あはは…」


「…」


「いや警戒しなくても大丈夫だから!」


「…う、うん」


恐る恐るといった感じで俺の部屋に入ってくると、きょろきょろと見回す美咲ちゃん。

うん、探してももうエロ本は無いよ?


「俺の部屋に入ったの美咲ちゃんが初めてだよ」


「嘘だぁ」


「ほんとだって、ほかには隣の小学生の女の子くらいだよ」


「初めてじゃないじゃん…」


「いや、彼女では初めてだから」


「…彼女」


美咲ちゃんは恥ずかしそうに赤くなって見つめるから、俺もなんだか照れてしまう。

二人でもじもじと見詰め合っていると、突然母さんが顔を出した。


「やっぱり、お邪魔だったかい?」


「うお!」「きゃあ!」


母さんが急に顔を出すから二人とも飛び上がるほどびっくりした。


「母さん! 大丈夫だから!」


「はい、ジュースとお菓子」


そういってジュースとお菓子の乗った盆を俺に手渡した。


「ごゆっくりー、なんだったら泊まってく?」


「泊まらないから! もう出てってよ母さん!」


「はいはい」


渋々という感じで母さんは部屋から出て行った。


「面白いもの無いね」


「だから面白くないよって言ったじゃん」


「つまんない!」


えぇ!? 普通そんなに面白いものって置いてないよね?


「わ、わたしの写真くらい出てきてもいいのに!」


あぁ、そういう面白いのね、確かにそれは置いてないな。


「だって、いきなり写真なんて撮れないし…」


「…そうだね、わたしには和くん(和利)っていう協力者が居たしね」


ご機嫌が直ったようで何よりですよ、お姫様。


それからしばらく話をしたりゲームをしたりして楽しい時間を過ごした。


「じゃあ、お待ちかねのお仕置きタイムにしよっか」


「え!?」


すっかり忘れてた! っていうか神様も忘れてた。


「目を瞑って」


えぇ!? パンチですか? キックですか? 粛清ですか?


ふいにいい香りがしたかと思ったら、おでこに柔らかい感触がした。


目を開けるとおでこに唇を付けている美咲ちゃんがいた。


「!?」


「あ、こら、目開けるな」


抗議する美咲ちゃんだけど、その顔は真っ赤っかだった。


「もう1回!」


「だーめ、もう帰らなきゃ」


「え? まだいいじゃん、ご飯食べていきなよ」


「ごめんね、ママが待ってるし」


「そっかぁ…あのお母さん待たせたら悪いしね」


美咲ちゃんに似ててっていうか美咲ちゃんが似てるんだけど、

あの色っぽいお母さんを思い浮かべてボーっとしてたら足踏まれました!


「いでっ!」


「ぷぃ」


いや、自分でぷぃって言ってそっぽ向く人初めて見たよ!


「美咲が一番だよ」


呼び捨てにしてみましたが、俺の顔たぶん真っ赤です。


「よ、呼び捨てにすんな!」


美咲ちゃんも照れて真っ赤になってます。


「じ、じゃあ送っていくよ」


「う、うん」


美咲ちゃんと2人で階段を降りて玄関に向かうと母さんが顔を出した。


「あら、美咲ちゃんもう帰るのかい?」


「…おじゃましました」


美咲ちゃんはぺこりと小さくお辞儀をした。


「母さん美咲ちゃん家まで送ってくるから」


「そのまま泊まってくるのかい?」


「なんでだよ! 帰ってくるよ」


「泊まる…」


美咲ちゃんも赤くなってないで否定してくれ!

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