第11話:プールへGO!
「あ、そうだ、豊くんコレ2人で使って」
といって響子さんは俺に何かを握らせてきた。
「?」と思いそっと手の平を開いてみると、3つ連なった
「コンド…!」
慌てて口を押さえ美咲ちゃんを見ると「今度なに?」とキョトンとしている。
「こ、今度、プール行こうよ!」
「え? あ! お響がくれたのってウォータープールの入場券?」
「そ、そうそう!」
ウォータープールは最近隣町にできたレジャー型のプールだ。
ウォーターってプールなんだから当たり前じゃん…。
んで何とかゴマかせたけど、響子さんなんてもの渡してくれてんだ!
見回すと響子さんはもう居なかった…。このパターン多くない?
響子さんにメールで抗議をしてみる。
-なんすか!? コレは?-
-はやっ! もう使ったの?-
-使うか!-
-駅前で配ってたから豊くんたちには必要だと思ってもらった-
はぁ…、もうため息しかでない。
「ゆたかくん誰とメールしてるの?」
ちょっと不機嫌そうに口を尖らせている美咲ちゃん。
「あ、えっと…、き、響子さんにお礼のメールだよ」
「そっかー、私からもありがとうって伝えて」
「う、うん」
伝えられるか!
…
ウォータープール当日、待ち合わせ場所には
美咲ちゃん、響子さん、かな、俺の4人が居た。
「で、なんでお響たちまで居るの?」
ジト目で俺を見上げつつ睨む。
上目使いの威力をジト目で相殺しちゃってる!
「さ、さぁ、俺に聞かれても…」
「あ、私はかなちゃんと来ただけだから、ねー」
「そうだぞ、にーちゃんたちの邪魔をしに、邪魔はしないから!」
今本音ちょっと漏れたよね?
「そ、それより早く行こうよ」
響子さんはちょっと焦っているけど、もう遅いから!
そしてなぜか俺がみんなの入場料を払う事になった。
「高校生2人、子供2人…痛っ!」
美咲ちゃんが足を思い切り踏んできた。
「こ、高校生3人、子供1人」
かなが足を踏みに来たけど、華麗に避けてやった。
「むぅ! にーちゃんのいくじなし!」
なにが!?
涙目で見上げてくるが、おまえは正真正銘の子供だから!
「んじゃ、あとでねー」
水着に着替えるため、男女に分かれて更衣室に向かう。
俺の後ろに着いてきたかなを、美咲ちゃんと響子さんが連行していった。
…
待つこと20分、ようやく女性陣たちが水着に着替えてきた。
水着に着替えるだけで時間かかりすぎじゃない?
美咲ちゃんとかなは大人しいデザインのワンピースで体型はほとんど変わらない。
響子さんは派手なビキニを着て、無駄に迫力のあるボディを披露している。
なんか姉と妹とプールに来ている気分だ、響子さんは同い年だけどね。
「なんか今すごい失礼なこと言われた気がしたんだけど?」
「き、きのせいっすよ!」
っていうか胸を押し付けるな! 水着じゃいろいろ隠せないじゃないか! いろいろってなんだ?
「おい、みさきち、どっちが先にプールに着くか勝負だ!」
「望むところよ! って誰がみさきちだ!」
と言って2人は猛ダッシュで走って行った。
「おーいそっちは…」
子供用プールって言おうとしたけど遅かった。
「はぁ、はぁ、ま、負けた」
子供用プールに着くと、美咲ちゃんが肩で息をしながら項垂れていた。
っていうか高校生が小学生に負けるなよ…。
「まぁ、みさきちもがんばったと思うよ?」
「…なっ!」
「ふふん、しょうしゃのよゆうだよ」
「勝者も余裕も書けない子供に負けるなんて…」
そこでハタと何かに気付く美咲ちゃん。
「ゆたかくん行こう」
と言って俺の手を引いていく。
「あ! ずるいかなもいく!」
「だめだよ、かなきちはお響と来たんでしょ?」
「…っ!」
かなきちって語呂悪! っていうか大人げない!
ぎゃーぎゃー騒ぐ美咲ちゃんとかなを尻目に、響子さんが
「じゃあ私と波のプール行かない? ポロリもあるよ?」と無駄にでかい胸を強調する。
「ポロリあるの!?」
ごきゅっと生唾を飲むと美咲ちゃんとかながジト目で睨んでた!
「ツ、ツルリもいるよ、なんちゃって…痛っ!」
今度は美咲ちゃんとかなの2人に、同時に左右の足踏まれた!
「ちゃんと生えてるもん!」
と頬を膨らます美咲ちゃん。どこの話だ!
「かなはツルツ」「はい、危険な発言ストップね!」
そんなこんなでようやく美咲ちゃんと2人で流れるプールにいた。
「ねぇ私たち恋人に見えてるかな?」
「兄妹にしか見えないわね、それか幼女好きの変態?」
いきなり真後ろから響子さんの声がした。
「変態言うな! っていうかうしろに居たんかい!」
「ゆたかくんは幼女好きじゃないもん!」
え? 美咲ちゃんがそれ言うの?
「そうだよね?」
「う、うん、そ、そうだね」
滅多なことは言えません。後が怖いので…。
「幼女って美咲のことなんだけど?」
響子さんが意外そうな顔で、冷静にツッコむ。ってそこはもうちょっとテンション上げようよ!
「…なっ!? 誰が幼女だ! このお色気ボディのどこが幼女か!」
お色気って…。 そう思ったとき、美咲ちゃんがギロリと一瞬睨んだ。怖っ!
「どこがって…この辺とか」
「ひゃう!」
「あとこの辺とか」
「ひゃあ! いちいち触るな!」
えっと…どこを触っているかは、プールに反射する太陽の光で見えなかった。ことにしておこう。