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夢から覚める

 チャイムが鳴り、目を覚ます。

 日差しにさらされているからか、まだ五月の上旬なのにすこし暑い。

 休み時間になり、廊下が騒がしくなっていく。

 「永太!トイレ行こうぜ!」

 隣の席の柴山が声をかけてくる。

 「俺はいいや、前の休みに行ったばっかだ」

 頑張って少し、明るめに振る舞う。

 一週間だ、咲桜が事故に遭って植物人間になってから一週間が経った。

 神楽咲桜(かぐらさら)は中学時代から俺が恋をしていた人だ。

 今年から高校生になり俺とは別の学校に彼女は進学したが、思いを伝えられなかった俺はまだ彼女に思いをはせていた。

 事故の知らせを聞いてから俺はショックで何事にもやる気を見いだせないでいる。

 自分にとって大切な人がいなくなって自分が頭で考えるより、自分の心はダメージを受けていた。


 その日の夜、咲桜のことを考える。

 考えるほど悲しくなっていく。

 「もう一度会いたい」

 そう強く、何度も願う。

 そうやって眠りについた。


 目を覚ます、なぜかぜんぜん寝ていたようなきがしない。

 目を覚ました天井は眠りについた天井とは違っていた。

 おかしい、俺は確かに自分の部屋で眠りについた。

 だがその天井には既視感があった。

 おかしいと思うと同時に何度も見たことがあるという安心感があった。

 ここは俺の部屋だ。

 毎朝起きて、毎晩寝てる俺のベッドだ。

 じゃあ、さっき俺が寝たのは?

 そこだって俺の部屋だという確信がある。

 「永太ーーー!!」

 一階で俺を呼ぶ声が聞こえる。

 違和感を持ちつつも一階に降りるといつもどうりの母がいる。

 いつもどうりの支度をして家を出る。

 自転車に乗りながら少し考えて、俺は一つの仮説を出した。

 ここは夢の世界だ。

 今、俺が起きているこの世界からすると、夢の世界は向こうなのかもしれない。

 二つの世界で、眠るともう一方の世界で目覚める。

 そしておそらく、眠るとその世界のことを忘れてしまう。

 朝起きると微かに覚えている夢、時間が経つにつれ忘れていく夢のように。

 そして目を覚ますと、その世界のことを思い出す。

 裏返しの二つの世界。

 俺以外の人間も二つの世界を行き来しているのだろうか。

 夢だってみんな見るのだし、おそらくみんな覚えていないだけでみんな二つの世界を行き来しているのだろう。

 二つの世界は大まかに同じことがおきる。

 住んでる家の作りが少し違うけど家族は同じ。

 教室や席は違うけどクラスメイトや担任は同じ。

 一昨年他界した祖父は同じくらいの時期にもう一方の世界でも他界している。

 正夢っていうのは微かに覚えているもう一方の世界の出来事かもしれない。

 でもここで不思議に思うことがある。

 なぜ俺は二つの世界の記憶があるのか。

 今まではおかしいと思ったことはないし、記憶だってなかった。

 なのに今日は全てを覚えている。

 

 そして、この世界では・・・


 咲桜は事故に遭っていない。

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