身分違いの恋、例えあなたが隣国へ嫁いでも私はあなたを一生守ります。
「国王様王妃様お願いします。私を任命して下さい」
「そなたはまだ若い、任命したら命を落とす事になるのだぞ」
「あなたは父上のような兵士になりたいのでしょう?」
「確かに私は父のような兵士になるのが夢でした、でもそれよりも守りたい存在が出来たのです」
「解った、儀式は明日行う」
「有難う御座います」男は深々と頭を下げた。
「カイジ、カイジ、今日はお出掛けしましょう」
「ルイナお嬢様、私は仕事中です」
「門番なんて一人居れば良いじゃない」
「駄目です、仕事中ですから他の者と」
「カイジのバカー、もう大嫌い」
私はカイジに背中を向けて走り出した。
追いかけて来てもくれない。
カイジは王宮の門番だ。
カイジは私が幼い頃、カイジの父が王宮の兵士をしていたので良く遊んでくれた。
その頃はルイちゃんと呼んでくれて、敬語でもなかったのに、大きくなるにつれ敬語になり、距離が遠くなった感じがした。
そして、私の父はダビデ王国の国王で母は王妃である。そして兄が一人いる。
このダビデ王国はいずれ兄が継ぐから、私は隣国の王子との婚約が決まっていた。
しかし、顔も見た事ないし愛のない結婚だし乗り気はしない。
そんなある日、私の嫁ぐ日が決まったのだ。
「カイジ、私の嫁ぐ日が決まったの」とカイジに私は駆け寄った。
「おめでとうございます」とカイジは素っ気なく言った。
私は悲しかった、カイジが好きだったから。
でも、身分違いで所詮叶わぬ恋なのだ。
「何でカイジは私に冷たいの?」
「そんな事は有りません、しかし私は只の門番です。お嬢様と気軽にお話出来る立場では御座いません」
「もういい」私は最近八つ当たりばかりしているのかな?でも、このまま結婚したらカイジと会えなくなっちゃう。
そして、遂に結婚式を挙げる為に隣国に出発する日が近づいて来たのだ。
私は最後にカイジに会いたいと思い門の所に行くと、カイジは居なかった。
他の門番に聞くとカイジは最近来ていないと言うのだ。
私はショックだった、せめてお別れを言いたかった。
もしかしたら、カイジが私を何処か遠くにさらって行ってくれるかもと心の何処かで期待していたのだ。
私は幼い頃はカイジのお嫁さんになるんだと信じいた。
そして、隣国への旅立ちの日私は両親と兄に挨拶をした。
「お父様お母様お兄様、今までお世話になりました。」
「ルイナ元気で頑張るんだぞ」と兄が言った。
「ルイナしっかり夫の言う事を聞いて立派な王妃になるのだぞ、我々は後から結婚式に間に合うように行くからな」と父が言った。
「ルイナ、これを肌身離さず持っているのです」と母がお守りを私に渡した。
「このお守りは?とても古い感じかするけど」と私が聞くと、
「このお守りはこの王宮に代々受け継がれる物なの、お守りの持ち主が変わる度に中身だけが入れ換えられるのよ」
「えっ?中身だけが入れ換えられるの?」と聞くと「この中には守護神様が入られているの、守護神様はこのお守りの持ち主を守ってくれる存在なの、でもね守護神様は元は人間なの。選ばれた兵士が儀式を行い命を自ら絶つ事で守護神様に生まれ変わるのです、そして持ち主が危機的状況に陥った時、お守りから出て来て持ち主を守ってくれるのです」
「それでは、このお守りの中にも兵士の守護神様がいるのですか」
「この中にはルイナの事をとても大切に思っている方が守護神として入っているのです、いつもは兵士が選ばれるのですが、今回は自らルイナの守護神になりたいと名乗り出て来た方なのよ」
「それは誰なのですか?」
「それは…そろそろ出発の時間よ」
「お母様、誰なのですか?教えて下さい」
「ルイナ、この中にはあなたの事を幼い頃から守って来た方が入っているの」
「まさか、カ…イ…ジなのですか、最近来ていないって、姿が見えなかったのは、そんな…そんな…嫌よ…カイジ…あぁー」私はお守りを握り締めて泣き崩れた。
母が私の肩を優しく抱き締め口を開いた。
「カイジはあなたの守護神となりあなたを一生守りたいと言ったの、あなたが大切な存在だと」
「カイジ、カイジ」私はカイジの名前を呼んで暫く泣いた。
そして私は母に支えられ立ち上がった。
涙を拭い「行って参ります」と家族に深々と頭を下げ、お守りを握り締めて隣国へ向けて旅立った。
私は寂しくない、だってカイジがいつも一緒だから。