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彼女の最後
ネージュにも最後が訪れる。それは彼女86歳の時である。この時代で、トップアイドルとなり、売れっ子女優だった彼女の人生は幕を閉じる。仕事のし過ぎで疲労が溜まっていたのだろう。彼女は過労死してしまった。それが彼女の最後である。多くの人を陥れてきた彼女のあっけない最後。彼女は再び神を名乗る少年の前に戻される。
「さて、全ての罪状を読み上げるのに時間がかかりましたが、何か言うことはありますか?」
「いいえ、よき人生でしたわ!」
「確かに多くの人を陥れてこられました。しかし、多くの人にアイドル、女優として、希望を与えたその功績を称え、貴方の罪を許しましょう。」
そう、神が言うと彼女の魂は空へと消えていった。
「消滅することを許します。」
消えてゆく最中彼女は多くの人の笑顔を見る。ああ、私は人を陥れることに快感を持っていた。でも、立ち止まって見れば多くの笑顔があったのに、そんな事にも気づかないなんて……。彼女は最後にそう思う。立ち止まって見れば誰かを陥れるより、良い物があったのに、それに最後まで気づけなかったと、そう思いながら消えていった。