初出演
悪役令嬢アイドルことネージュ・リングランは見事役を勝ち取った。そんな彼女は泣き崩れる彼女を見てほくそ笑む。
「トイレに閉じ込められていたんですって!」
「まあ、ひどい!一体誰が?!」
そんなこそこそ話が聞こえてくる。
「そんなの”彼女”しか……」
ネージュはそう話していたオーディションを受けていた他の子達を睨んだ。
「「ひっ?!」」
ひと睨みで彼女達は去ってゆく。ネージュは変わらなかった。ここでも悪役令嬢として、見事悪役令嬢を演じて見せると、そう誓う。
例え誰を踏み台にしても……。
「お願いします!もう一度だけチャンスをください!!」
泣き叫ぶ”彼女”の悲痛な声だけがその場に響き渡っていた。
☆☆☆☆
「ネージュ!よくやってくれたな!」
「あら、マネージャー。」
スカウトした男はネージュのマネージャーになっていた。
「まさか!本当に役を得てしまうなんて!いや、凄いよ!」
「当然ですわ!」
「これから忙しくなるぞ!!」
「……」
この男は知らない。ネージュと言う女がどれほど極悪であるかを……。
「小雪は残念だったけど、君が受かって何よりだよ!」
「ええ、本当に!」
ふふっと笑うその姿は悪役令嬢そのものだった。
さあ、今度は誰を陥れよう。
そうしてドラマの撮影が始まる初日。ネージュは練習より上手く演技できていた。ネージュの出演ドラマは悪役令嬢が主人公を陥れるお話だった。もちろん主人公役の少女もいる。彼女の名前は冬野雪菜又してもスノウに呪われていた。
「はぁ、いやな名前ですわ。」
そうぼやく彼女、そんな事露知らずの雪菜は見事な演技を見せ、周りを圧倒する。ネージュはそんな彼女がだんだん邪魔に感じていたある日。
「おはようございます。先輩。」
一応雪菜の方が先輩なので挨拶をする。
「おはよう、ネージュさん!今日もよろしく!」
ふんっ!馴れ馴れしい。そう思ったネージュだが、笑顔で誤魔化した。だが、だんだんとあの女さえ居なければと、思うようになる。
もちろんドラマなので、彼女がいなくなると撮影出来なくなるのだが……。ネージュは行動に移す事にしてしまった。雪菜の荷物を捨てたり、物に足を引っ掛けたりするように仕向ける日々が続く。そうして、ネージュのいじめから雪菜はストレスでおかしくなっていった。ある日、演技中に嘔吐する。
「がはっ!?」
どうやら飲み物に何か入っていたようだった。ネージュはほくそ笑む。雪菜の演技は徐々に酷い物に変わっていった。
「おはようございます。雪菜先輩。」
誰がいじめをしているかわからないまま雪菜へのいじめはエスカレートしていっていた。
「あっ!お、おはよう……。」
徐々に言動もおかしくなる。何かに怯えるようになっていった。それでも、現場に来ることを彼女はやめなかった。
そして、撮影最終日、雪菜は遂に壊れた。ドラマはなんとか取り終えたものの、差し入れに何か入っていった。今度は虫が入っていたのだ。雪菜は絶叫した。そして、倒れて病院へと連れていかれたのだった。
ネージュは再びほくそ笑む。さぁ、悪役令嬢の悪役令嬢による。悪役令嬢の為の物語を紡ぎましょう?バレずにいじめを行う彼女を止める物はいなかった。