路地裏で女の子を拾ったらクラスのメガネの子だった。
顔文字は文章の区切りです。
ザァーーーーーーーーーーーーゴロゴロゴロゴロ……
この季節には似合わない雨が大粒で流れ込んできていて、遠くでは雷が鳴っている。
(早く家に帰らないと)
僕、杉谷太輝は高校からの帰り道を、傘をさしながらも急いで家に向かっていた。
(この道を使えば早く帰れるぞ)
そう思って、繁華街の裏側にある薄暗い路地裏に入る。傘をさしていても、体が濡れるぐらいには雨が降り注いでくる。
(やばいよ、風邪引いちゃう)
一心不乱に走り続けているせいで、もう靴はぐちょぐちょ。
ハァハァ、、、、 バチャバチャバチャバチャバチャ ハァハァ、、、、
すると……
(……ッ!?)
何かを発見してその場で立ち止まってしまう。
(え、え)
そこにいたのは、ゴミ箱に隠れるようにして座り込んでいる黒いフードを被った子。
(こんなところで何してるだろ)
もうずぶ濡れになっていて、風邪を引いてしまいそうな子だ。今の季節は冬で気温もだいぶ下がっていて、それだけで風邪を引いてしまいそうなのに。
「大丈夫ですか?」
その子の上に傘をさしてあげて話しかけてみたけど、返事が返ってこない。見た目的に中学生ぐらいだと思うんだけど、顔が見えない。
「このままじゃ風邪引いちゃいますよ」
その子は下を向いたままで、僕の声掛けに対して無反応だ。でも、このままじゃ風邪を引いちゃいそうだし放っておけない。
……とその時だった。
「ほっておいて……」
目の前から弱々しい声が聞こえてくる。今にも消えそうな声で、どうやら女の子らしい。
(そんなこと言われても……)
「放っておけないよ。何でもいいから僕についてきて」
「……いやだ」
断られてしまった。試しにフードをたくし上げて見ると、下を向いている女の子の顔が出てくる。
白髪に、黄色の瞳の、肌の白い中学生くらいの女の子。
「……警察には言わないで……」
「言わないから。とりあえずうちに来る?」
「……」
そのまま女の子は黙り込んでしまった。仕方がないので、おんぶしようと背中を前に向けると、女の子は覆いかぶさってくる。
「ちゃんと捕まっていてね」
小柄で力はない僕だけど、この女の子ならおんぶぐらいは出来るだろうと思った。体が濡れて冷え切っていて、制服を着ていても彼女の体温が伝わってくる。
そのままその子をおんぶして家まで帰った。
( ゜Д゜)( ゜Д゜)( ゜Д゜)( ゜Д゜)( ゜Д゜)( ゜Д゜)
それから、あの子は今シャワーを浴びている。一人暮らしのアパート暮らしなので家には誰もいない。
とりあえず部屋を暖めて、今、あの子の着替えを探している。当然だけど、女の子に似合う服はない。
(とりあえず……ジャージでいいかな……)
着れるものとしてはジャージしかなかった。
(下着は……どうしよう)
これはご想像におまかせします。とりあえず、着替えとバスタオルを洗面所に置いておいて、僕は部屋で待つことにした。
女の子がお風呂から出てくる。もちろん僕のジャージを着ている。とりあえず部屋を暖めただけではだめだと思って、ココアを入れた。
「ここに座って」
「……ありがとう」
「ココア飲める?」
「……うん」
「どうぞ」
椅子に座らせる。そして、女の子前にストーブを持ってくる。
女の子は小さな口でココアを一口飲む。
「……あったかい」
「よかった」
女の子はホッと一息つく。それを見て僕は小さく微笑みかける。何だか、家に女の子がいるなんて慣れないな……
「……杉本くんって優しい」
「え、なんで僕の事を……?」
(……だれ?)
こんな女の子見たことないけど、僕の苗字を知っている。なんで、なんでだろう……
「……同じクラスの……生川です……」
「え、生川さん?」
一瞬聞いて困惑したけどそうらしい。僕のクラスには生川ゆいっていう人がいる。
生川さんはめがねを掛けていて、小柄で物静かな子。だから皆には気づきにくい存在だけど、僕は一回話したことがあったから知っていた。
(めがね外したら、こんなにかわいいんだ)
めがねを掛けていたら分からない彼女のかわいさ、僕は発見してしまったようだ。
生川さんと話したときは、見た目とは裏腹に、話し方が小さい妹のようで、ちょっぴりかわいい子だと思った。
(生川さん……なんで雨の中を……)
今は聞かないことにした。
( ;∀;)( ;∀;)( ;∀;)( ;∀;)( ;∀;)( ;∀;)
あれから三か月だった。まだ生川さんは家にいる。
「……太輝……疲れた……」
「お疲れ様」
生川さんが僕にもたれてくる。ふてーっとしていて、全身の力がなくなったように体を預けてくる。 今の彼女はあったかい。
学校ではメガネをはめてるけど、家では素顔だ。どうやら伊達メガネだったらしい。
妹みたいで、見守ってあげていたい子。あれから色々あって、今では僕に沢山甘えてくる。
本当にかわいい子になった。
「ご飯作るから待ってて」
「……うん。待ってる」
そのまま僕は夜ご飯を作ることにした。
生川さんは、そのままソファに倒れこんで、ふわぁ~としながら眠ってしまった。
学校の生川さんは真面目な感じだけど、家での生川さんは常に力が抜けている。常に天使が頭の上を飛んでいるみたい。
(かわいいな~)
ほんと、微笑ましい子。世話してあげたくなる。
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
最初に会った時から半年がたった。
あれから、僕の家の表札の文字が変わっていた。杉谷から生川。そう兄弟になったんだ。
僕の苗字が変わったわけだけど、それは彼女の家系を継いで行きたかったから。
本当にメガネの生川さんが妹になってしまった。もっともっと家で甘えてくるようになってきていて、ちよっぴり変わった二人暮らしをしている。
クラスにいると、時々生川さんはこっちに微笑みかけてくる。相変わらず学校ではメガネだ。
それを見て、僕も微笑みかける。本当にかわいい。今ではあの子のお兄ちゃんだなんて。
まだ生川さんと僕が兄弟になったことは、誰も知らない。
僕も生川さんがあの日、なんであそこにいたのか理由がわからないままだ。
こんな出会いでかわいい妹がほしい。