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99、ロックオン−5

プリメラもロバートと楽しくダンスを踊り笑顔をみせている。

だが主役であるルクレツィア王女殿下は浮かない顔をしている。それは勿論、自分の隣にブルームがいないからだ。本当であればこの16歳の誕生日には婚約者としてブルームが隣に立っている筈であった。

兄アシュレイの元で何故ブルームとの婚姻出来ないか説明されても納得出来なかった。ルクレツィアの中ではブルームとの間に子供ができなくても構わないからブルームが欲しかった、思う存分愛して、愛してくれればそれで良かった…愛する人に隣にいて欲しかった、一緒に人生を歩みたかった。


セシリアを見つめるブルームはいつだって愛に溢れている。全身で優しく包み込み、セシリアを優先させている。ダンス一つとってもセシリアが踊り易いように、エレンと踊ればエレンが踊り易いようにリードする。常に側にいる者に気を遣い相手が過ごしやすいように自分を変える。普段は綺麗に笑むブルームはセシリアが傍にいる時は表情豊かに顔を緩ませる。ブルームの心を解放する存在になりたい、わたくしだけのブルームにしたい、わたくしだけを見つめて欲しい。

あれからだいぶ月日は経ったが未だに気持ちを整理できずにいた。

こうして今も目はブルームを探してしまう。

わたくしが王女でなければ、子供を作る必要がなければわたくしのものになってくれたかしら? わたくしを何処かに攫ってくださらないかしら?

そんな事ばかりを考えてしまう。夢の中では甘く囁き優しく肩を抱くそしてその先も…。


「ルクレツィア、此方へきなさい。こちらはバラク国の第3王子 ユリシーズ・ディック・バラク殿下だ。態々お祝いに来て下さった」

「ルクレツィアと申します。この度は遠くからお越し頂き感謝申し上げます」

「ユリシーズです。本日はおめでとうございます。 ……失礼、何か悲しいことでもあったのですか? 浮かない顔に見えますが?」

「いえ、そのようなことは…。 ただこの中でわたくしの誕生を本当に祝ってくださる方は何人いるのだろうか? そんな事を考えてしまって…。あっ、申し訳ございません! 態々この国まで来て頂いた殿下に申し上げる事ではありませんでした!」 

「ふふふ…、随分 素直な方なのですね。 確かに皆 楽しそうで、殿下がダシに使われたと感じるのも仕方ないかもしれませんね。コホン、でも私は今、心から殿下にお祝い申し上げますよ?」

「…すみません、感謝申し上げます」

「いえいえ、そう固くならないでください。 ルクレツィア殿下、でも…本当に悲しいのは別のことではないのですか? ああ、無理に話さなくても結構ですが、そんな気がします」

「ユリシーズ殿下、少し外します。ルクレツィアをお願いしてもよろしいかな?」

「ええ、構いません。宜しいですよね ルクレツィア殿下?」

国王陛下は他の者から挨拶を受ける為行ってしまった。

ルクレツィア王女はユリシーズ殿下とそれからも話をした。

ルクレツィア王女は知らなかったが、ユリシーズ殿下はルクレツィアとの見合いのためにこのパーティーに参加しているのだ。

ユリシーズ殿下はルクレツィア殿下は素直な性格を好ましく思い、あれやこれやと話しかけルクレツィアの気持ちを解していった。

その様子を遠くから国王陛下と王妃陛下は見て優しく見守った。



突如、総務大臣が音楽を止めて割って入った。

「先日 我が国に於いて『聖人』と認定されたリアン・ドラゴニアの婚約が決まったので報告致します。お相手はセシリア・スターライド侯爵令嬢です。若き2人の前途を祝福ください」

「「「おおぉぉぉ! お祝い申し上げます!」」」


『あれ?セシリア嬢はランクル局長と婚約されていたのでは?』

『国が介入しているのですから、そこは何とかしたのでしょう…ふっふっふ』

『確か、ドラゴニア殿はセシリア嬢の従者ではなかったか?』

『では…ずっと側にいる事を望んだのでしょう』

『セシリア嬢は従者を随分大切になさっていたと聞いたことがあります』

『まあ、収まるところに収まったという事ですかね』


こんな風に纏まっていった。だが、納得できない者たちがいる。

それはグレッグと婚約者候補4人、他の者たちは元よりセシリアには婚約者がいるという認識であった為そこまでダメージは無かったが、グレッグに貢ぎ物を渡し我こそがセシリアを自分のものに出来ると思っていたどっぷり欲に塗れていた者たちは憤怒を向け射殺さんと見ている。当のグレッグは愕然として理解が追いつかない。


聖人の妻!?

馬鹿を言うな! それでは手出しが出来なくなるではないか!!

駄目だ! それでは私に金が入らない!! そんな事許せるわけがない!!


だが、国が認定してしまえばもう手出し出来ない…。なんて事だ!!



セシリアは目の前で聖人リアンと優雅にダンスを披露する。その麗しさに見た者はため息を溢す。セシリアとリアンは仲睦まじく見つめ合っては楽しそうに笑みを漏らす。

決して無理やり決められた縁組ではないと分かる。


そしてどこからか『従者を大切になさるあまり、最初は王立学園ではないところに通われていたとか…、お二人とも優秀で特待生として王立学園に編入されたそうよ!』『昔からどこへ行くのにもご一緒だとか…』『まあまあまあ、では聖人様にとって最良の結果と言う事ですのね』などの情報も出回る。概ね歓迎されて婚約発表は終わった。

これでセシリアとリアンの事は周知のこととなったのだ。


グレッグは窮地に立たされてしまった。

今のグレッグは実家のスターライド侯爵家の支援が無く、自力で起こした事業はシルヴェスタ公爵関連で火の車、娘を色ボケジジイに売ってもその場凌ぎにしかならなかった。

セシリアは降って沸いた千載一遇のチャンスだった、それがあと少しのところで崩れ去っていく。



セシリアはリアンとブルームとダンスを終えたあと談笑していると、様々な人間に囲まれていた。そこに近づいてきた女性、セシリアは肩を掴まれ振り向いた瞬間頬を打たれた。

パーーーーーーン!


一瞬にして静まり返った会場に、その場にいたアシュレイ王太子殿下の護衛の1人がその女性を取り押さえた。女は怒りに燃えセシリアに食ってかかる。

「お前のせいで! お前がお前たちが私たちの幸せを壊したのだわ! お前の母親があの人と結婚したりするから! 私が愛人になってしまった! お前さえいなければうちのライアンが後継ぎで間違いなかったのに!! お前なんか死ねば良かったのに!! 誰にも愛されないお前なんかあの時死んでしまっていれば良かったのに!!」


女はクレア・アンバー、グレッグの内縁の妻? 実質の妻だ。

クレアはフィーリアが死にもせずスターライド侯爵家に居座っている為、ずっとグレッグが側にいても愛人という立場だった。フィーリアが元気であれば、愛されているのは私よ!とやる事も可能だったが、出産後 屋敷から出なくなった白薔薇姫は社交界では同情的だった。対してクレアは『妖精姫は愛人の存在にショックを受け体を壊してしまった。侯爵家の男を逃すまいと必死な性悪女』と揶揄され、グレッグもあまり評判が良くないことも相まって、人からは嫌厭されて来ていた。それでも何とかやって来られたのは、グレッグが自分の側にいてくれた事と、自分の産んだ子供がこのスターライド侯爵家を継ぐと思っていたからこそ辛抱してきた。それが今になって正妻の子が籍に戻ってきた。


しかも父親として優しかったグレッグはここへきて15歳の娘を42歳の男の後妻に売った。泣いて嫌がる娘、まだたった15歳の娘を白髪混じりの腹の出た口の臭そうな男に金で売ったのだ! 私たちは侯爵家の人間だと思っていても世間は違う、茶会も夜会も知り合いの主催のものにしか呼ばれない。高位貴族限定のものには呼ばれもしない! 私たちは侯爵夫人として散財をしてきた訳でもない、我慢ばかりの人生だったのに! 子供たちだって馬鹿にされないように教育をし、侯爵家の人間として品位を持って生きてきた。それなのに!あのセシリアは私の娘マイラより金持ちが大金を積んで群がって欲しがる…うちの子供と1つしか違わないのに!! 屈辱でしかない! 

ただでさえ目障りなのに、今度は『聖人』と婚約!? どうして伯爵令嬢として生きてきたあんな女があそこで微笑んでいるのか! 自分の子供が見下されているようで我慢ならなかった、それにあの女セシリアが金にならなければ今度はライアンまでが金持ちの未亡人に売られてしまうかもしれない! あの女がいなければ! 全ての元凶はセシリア、そう思った。


「セシ! 大丈夫!? 可哀想に…見せてごらん」

「お兄様!」

頬に手を当て熱を帯び赤くなったそこをさする。リアンも心配そうに覗くと

「パン、お嬢様を治して差し上げて」

「はい、畏まりました」

どこからともなく現れた聖獣パンが治してくれた。

するとすぐに頬の赤みは引いていった。

ブルームもリアンも治せるが敢えて聖獣を呼んで治療させる。


「お前は誰だ? 何故、彼女に暴力を振るう?」

「殿下、察するにこの者は…セシリアの実の父親の…内縁のクレア・アンバー夫人ではないかと、思われます」

「セシリアのせいとは何のことだ?」

「私の口からは…」

「殿下、発言をお許しくださるなら私の口から申し上げてもよろしいですか?」

流暢に喋るのはリアンだ。

「リアンか、ああ構わない」


「このクレア・アンバー夫人はセシリアお嬢様から両親を奪った張本人です。お嬢様のお母様がスターライド侯爵とご結婚される前からお付き合いはあったようですが、スターライド侯爵がお嬢様の母君とご結婚されても変わらず関係を続け、結果お嬢様が…ブライト家に引き取られる事に。それなのにお前たちの幸せを奪っただと!? お嬢様がいるべき場所に戻っただけだ! 殿下、恐らくこの者が言うお嬢様のせいとは、正妻のお子様はセシリアお嬢様ただ1人の為、スターライド侯爵から引き継げると思っていたものをお嬢様に掠め取られたと、そう仰られているのだと思います。お嬢様から両親を奪った者が厚かましい!!」

「………、逆恨みか。連れて行け! セシリア嬢 災難だったな」

「お騒がせして申し訳ございません」

ブルームとリアンに支えられて立っている。


この時、グレッグはセシリアの婚約者候補から責められていてこの騒ぎを知らなかった。


「どうして! どうしてみんなその女の味方をするのよ! その女が何だって言うのよ!!」


『品のない女だ、やっぱりたかが男爵家の令嬢か、常識も恥じらいもない』

どこからとも無く聞こえる。


「母上! 母上をどこに連れていくのだ!」

ライアンが人並みを掻き分けてやって来た。

「ライアン! うぅぅごめんなさい、不甲斐ない母を許して…うぅぅぅ」

「母上が何をしたと言うのですか! 何故母が捕らえられているのですか!」


誰も何も言わない。

「セシリア、お前か! お前が母上に何かしたのだな!そうに違いない!!」


「はっ、仮にもセシリアの兄であるのに…、したのはお前の母親だ、いきなりセシリアを殴った。しかも殿下の御前でだ! 信じられない!」

「嘘だ! 母上がそんなことする訳がない! 本当にしたとするならそこのセシリアが何かしたに違いない、そうするだけの理由があったのだ!」


「お前たち親子は話にならないな。今後セシリアが出席する夜会や茶会にはお前たち親子の出席を禁止する。もういい、連れて行け」

「で、殿下! お待ちください、何故我々だけを糾弾するのですか! あの女! あの女も!」

「お前も頭を冷やす必要があるな、この者も連れて行け」

「はっ!」


同情的な目でセシリアを見るアシュレイ王太子殿下、それに『王女殿下のお祝いの場を騒がせてしまい申し訳ございません』と謝罪し、すまなさそうな顔をするセシリア。


だがこの出来事もセシリアとアシュレイ王太子殿下との近しさをアピールし、一方的な暴力にも騒がず周りに気を遣う優しい令嬢と、セシリアの価値は上がるばかり。

グレッグが騒ぎを知った時には2人は連れて行かれた後だった。

婚約者候補たちは皆渡したものを返せと詰め寄り、マイラの婚約者トラスト侯爵はここへきてセシリアと交換しろなどと言ってきたが、セシリアの婚約を知るとマイラを自分の屋敷に結婚前だが引き取ると言い始めた。学園は自分の屋敷から通わせるから心配するな、そうすれば少し早めに金を渡してもいいと。


何もかも上手くいかない。


目に入ったのはフィーリアだった。

『両親が死んだらスターライド侯爵家の資産はフィーリアが手に入れる。手っ取り早くフィーリアを取り込めば、問題は解決するのでは? そうすればスターライド侯爵家の資産を自由にできる。ふっ、アレは私に夢中だったな、以前はガキくさくて面倒だったが、今見ると…ふむ、側に置いておくくらいなら邪魔にならなければいいか』


背に腹は変えられず 早速、両親と共にいるフィーリアの元へ行った。

「フィーリア、久しぶりだな、元気になったようで良かったな」

白々しい言葉に射殺さんと両親が間に入り威嚇する。

「今更何のご用かな? 娘はまだ本調子ではない、お引き取り願おう」

「お父上、お母上 ご無沙汰しております。今宵は私たちの娘が婚約したのですよ? 共に祝う時ではありませんか! フィーリア、君も嬉しいだろう? 共の喜ぼうではないか!」

「……………。」

「怒っているのかい? 私たちの中に行き違いはあったかも知れないが、今は一先ず水に流して一人娘の門出を祝おうじゃないか! おいでフィーリア!」

「太々しい! 心にもない事を言うのをやめろ!」

「フィーリア? おい フィーリア! 元気になったのだろう?」

「お父様、この方どなた?」

「えっ!? 何を言っている! 怒ってそんな事を言っているのだろう? フィーリア 私が悪かった、私だよ! 君の夫のグレッグだ、君が大好きな私を忘れてしまったのかい? これからはちゃんといい夫になる、だから そんな意地悪をするのはやめて欲しいな、君らしくない」


「お母様? この方の言っている意味が分からないわ」

「いいのよ、気にしないで。きっと誰かと勘違いしているの。さあ、彼方へ参りましょう」

「待て! どう言う事だ! 本当に私が分からないのか!? 君は私の両親と暮らしていたじゃないか!」

「貴方の両親?でもあの家で貴方を見た事ないもの。やはり貴方は知らないわ、失礼」


ヘネシー伯爵たちと行ってしまった。

『どう言う事だよ! 元気になったのではないのか? 私を忘れている!?

参ったな、フィーリアに近づくには…ヘネシー伯爵が邪魔をするだろう…、どうにかしなければ! セシリア…か、アレを使って近づくしかないか…』


グレッグは次の算段をし始めた。

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