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85、シルヴェスタ公爵家の最後−1

「セシリア、いつまでもシルヴェスタ公爵をこのままにしておけない。君の言う通り、彼のテリトリーに踏み込まない限り彼はこちらには危害を加えてこない。だが、復興も進み、そろそろ区切りをつけたい。何かいい手はないだろうか?」


ん? あー、面倒。


「いや、君の助言を聞いて魔術師に結界強化魔法などの試みてみたのだが、屋敷に入った途端…人が消える。傍若無人に踏み入るのではない、話を聞きたいと言っても、屋敷の扉を潜った瞬間に人が消えてしまう。オスカリアが認めた者以外は立ち入りを拒んでいる。

兵士も1人の人間で、我がバファロークの民だ、これ以上無駄に命を散らせない。

助力を頼みたい」


言い方を変えてきた。

あれれ、面倒臭いって顔に出てたかな? てへへ。

あー、そう言えばどうでも良くてすっかり忘れてた。

だって今すっごく幸せだから!

大好きなものに囲まれてる。

伯父さん、お兄様、リアン…偶にローレン。

それから仲間に子供たち。

最近は月虎たちも遊びに来る。あの時は子供だったガネーシャも、もう独り立ちできる立派な月虎となった。今も母パールと一緒に各地を回って経験値を上げているらしい。

聖獣パンダと聖獣月虎ってどっちが強いのかしら?


月虎親子は、ロナルドが王都で暴れた時、色々と助けてくれた。と言うのも兄ブルームが爆死した瞬間、セシリアは全てのものに助けて欲しいと願った。その願いにガネーシャが応えた。

ガネーシャは名付けをしているのでセシリアと繋がっている。主人の心からの叫びに駆けつけてくれたのだ。まあ、それ以来セシリアの家に遊びに来るというか居着いていた。

セシリアの家は基本的にリアンの為のものでもあったので、魔法空間で広々快適 魔獣の楽園。


でも聖魔獣のリアンの空間は聖力も魔力も混在している空間に少し弄っている。

まあ、つまりこっそり魔獣の住む空間と聖獣が住む空間を繋げてしまった訳で、リアンには快適、でも魔獣や聖獣には長居はあまりしたくないらしい。イメージ少しだけ癪に触るらしい。そこで聖獣空間を別に広く作った。聖獣パンダのパンも聖獣だしね、ゲンも聖獣、月虎も聖獣…この屋敷にいる希少な聖獣率が高い。ゲン監修の元、聖獣が快適に過ごせる場所を新たに作ったので、聖獣的快適空間が出来上がった。まあ、魔獣のお友達が出来たらまた作ってもいいし、『最期の楽園』と繋げてもいい。


まあ、そんなこんなで忙しくしていて忘れていたのだ。


「ここへ連れてきて裁きたい、と言う事でいいのですか?」

「ああ、その際にディアナと共に公開処刑とするつもりだ」


「今現在シルヴェスタ公爵はご自身が魔法を使っている自覚はあるのですか?」

「分からない。兵士の話では魔法を使っているというより魔法陣で仕掛けをしてあるように感じた、というのだ。誰も姿を見ていないし、呪文も魔法陣も見ていない」

「はーーー、見てみないと分からないか……」

「だが、君の身に何かあったら…」

シラーッとした目で見ている。

だったら言うなよ! そう言っているような気がするのは気のせいではないだろう。だが、ここは気づかないふりで押し切る。


「やっぱり実際に目で見たいです。メンバーはウィンザード魔術師団長とサルヴァトス魔法騎士団長、私とリアンで。でも何日も馬車で行くのは面倒なので、現地集合でいいですか? 私は姿を消してリアンに乗っていきます」

「あー、いいな羨ましい、ゴホン 分かった。そう伝えておく」

「あっ、やっぱりやめます!」

「えっ? あ、やっぱり危険すぎるか? では他の方法を考えてくれ」

「違います。ウィンザード魔術師団長の元に転移します。後で魔力を覚えさせてくれれば、着いたって言ってくれれば…ふふ、無駄がありません」

「あっ、そう。分かった」



屋敷に帰ってブルームに話をするとめちゃくちゃ心配されて一緒に行くってきかなかった。セシリアはもう二度とブルームを危険な目に遭わせたくない、ブルームは盾になってでもセシリアを護りたい!の対決、どっちも引かずに険悪な雰囲気、ブルームはセシリアをソファーに座り膝に乗せて話をしている。


「セシ、リアンがいたとしても絶対に2人では行かせられない」

「もう、お兄様は心配しすぎなの! わたくし結構強いもの」

「そんな事言ってもリアンが危険になれば庇って怪我するのはセシでしょう?」

「……、でもでも…もうお兄様が…怪我するのはところは…見たくないの。グズグズ」

「私は、セシを守れて良かったと思ってる。何度でも言う、私にとって1番大切なのはセシリアだ、自分よりもセシリアが無事であることが重要なんだ。危険なところに行くなら尚更1人では行かせられない」


真剣な目で必死に訴えるブルームにセシリアは複雑な感情を抱く、憂慮であり困惑であり、歓喜でもある。いや困惑ではない、幸福を感じているのだ。思わず視線を逸らし兄の胸に顔を埋める。喜んでいる、醜い自分を見られたくなかった。

そんなセシリアの髪を優しく撫でるブルーム、宝物のように腕にそっと囲い頭に頬を寄せる。無性に今どんな顔をしているか気になりブルームを見上げると、慈愛に満ちた瞳で見つめ返してくれた。お兄様はわたくしが胸に抱える醜い欲望を知ったらどう思われるかしら? やはり気持ち悪く思われるわよね…。そう思っていると頭にこめかみに瞼にキスを贈ってくれた。このままこの腕の中で溶けてしまえればどれほど幸せか。


リアンがそこに割って入ってきた。

「それだけど、伯父さんが役に立つかもよ?」

「リアン! 何を言っているの!? 伯父さんは危険なところに連れて行かないわ!」

「そうじゃないよ、伯父さんは時を戻す魔法だけじゃなく、完全防御の護法の魔法が使えるみたいだよ?」

「えっ! 嘘!!」

「セシリアももっとちゃんと見てみなよ。伯父さんの魔法の根源はセシリアを守れなかった後悔だろう? そこら辺が色濃く出ていて、『あの時に戻れたら』と『絶対に今度は守ってやる』この意思から生まれているみたいだね」

「伯父さん……」

「だから伯父さんに完全防御の護法結界を張って貰って侵入を試みて、もし駄目ならば伯父さんに時を戻して貰えば、別の手を打てるって事だよ!」

「そっか! リアン天才!!」

「セシはどんな作戦を使うつもりだったの?」

「んー、まずは見てみないと分からないんだけど…魔法を使わせてみようかと思ったの」


「そうか…でもそれだと問題があるね」

「うん、結界の中から魔法が使えるかが微妙〜なの」


実際に伯父さんを呼んで試しめてみたけど、予想通り完全防御の結界の中では、外からの攻撃に耐え得る事が分かったが、同時に中からは魔法攻撃ができない事が分かった。つまり見えてはいるが結界の中は別次元みたいなものだった。

さて、どうしたものか…。いい手だと思ったが、別の手が必要だ。


今のセシリアにはシルヴェスタ公爵の事より、目の前の兄の事で頭がいっぱいだった。

前世と合わせてぶちゃけ52年間で生まれて初めて『恋』と言う感情を知ったのだ。

本には描かれていない、この複雑な感情に日々翻弄されていた。しかも相手は今世では血の繋がった実の兄だ。セシリアにとって兄とは特別な存在、ただでさえブラコンフィルターがかかっているのに、兄も自分を溺愛してくれる。

前世では恋愛は寧ろ忌避するものであった。

母は叶わぬ恋ゆえに身を崩し、父は愛に翻弄され奴隷のように母に尽くし、私にとっては最初の愛すら与えられず自己肯定感の低い人間だった、だから望愛にとって恋愛とは危険で嫌悪するものであった。だから36歳で死ぬまで恋も知らずに生きてきた。それがこの世界で生まれて初めて恋した相手は実の兄、この時『恋とは堕ちるもの』がしっくりきた。そして恋して初めて母の気持ちが少しだけ分かった…、理性ではどうにもならないモノなのだと。


兄が微笑むと心がじんわりと温かくなる、兄が困っていれば全力で何とかしたくなる、兄に触れると心臓が跳ねて息が苦しくなる、見つめられれば高揚して顔が赤くなる、兄にキスを贈られると羽でも生えたかのように身も心も軽くなり幸せになる。 そして、兄を独り占めしたくなる。


同時に自分の中にも母のような激情があるのではないかと思うと不安であった。

ブルームを苦しめることだけはしたくなかった。だから気づかれてはいけない、兄の幸せの邪魔だけはしてはならないと言い聞かせていた。

それもあって今はブルームとは物理的距離が必要だったのだ。


はーーー、理性がどんどん効かなくなってきている気がする。ブルームとのモヤモヤの気持ちの行き場をシルヴェスタ公爵にぶつける。

セシリアはいつか母のように何もかもを無視して思いをぶつけてしまったら?と不安に思い、ブルームもまた本能のままに押し倒し自分だけのものにしてしまいそうで不安になるのだった。


それにしても、シルヴェスタ公爵を王都に連れてきて公開処刑しないで、あっちで殺せればいいと言うならどれだけ楽だったか。




プリメラは学園の寮の中で1人悲鳴をあげていた。

それは魔道具と共に送られてきた1通の手紙によって齎された。


『聖女プリメラ様にお願いがございます。

 その選ばれし 聖なる力で我々の同胞をお救いください。


 3日後の夕方7時に噴水広場までお越しください、お迎えに伺います。

 尚、誰にも言わないことをお勧めいたします。場合によっては、添付した魔道具の映像があちこちで流れることになります。


                    聖女様の僕 マルス』


そう書かれていて魔道具を起動するとプリメラが男に陵辱されている映像が流れた。



プリメラはガタガタ震えていた。

あの時、自分が誰か知らない男とセックスしたのは分かっていた。相手はご丁寧にプリメラの体の中に白い痕跡を残し、それが新たな問題を生まないかと不安に駆られ、記憶を呼び覚まし忌まわしく付き纏っていた。

そしてこう言う事態になるのではないかとも危惧していた。


魔道具の男は仮面を被っており、仮面が外されて体を弄ばれているプリメラは顔がバッチリ映っていた。これは意図的だと思った。


プリメラは前世の記憶はあまり覚えていないが、それでもネット上のトラブル、リベンジポルノだのは小学生から少しずつ教育を受けていたので、何となく後に脅される事態になるのではと、過っていた。子供の問題は薬を飲んで次に来た生理で解消されたが、別の問題は起きた時に相手がいなかった事で余計に不安に駆られていた。それが現実となった。


あの映像をまかれたらどうしよう。

このマルスについて行ったら今度はどんな目に遭うだろうか。

お金もないし、もっと体を要求されたらどうしよう。

これが人に知られたら私はどうなるんだろう。

仮面舞踏会のこと、芋づる式に知られたら迷惑をソニアにもかける。

また、一人ぼっちになるのかなぁ?

怖いよ、どうしよう、どうしたらいいんだろう?

誰か、助けてよー!!


プリメラは不安と恐怖でどうにかなりそうだった。




そして別の場所でもう1人泣いている女性がいた。

それはアシュレイ王太子殿下の妹君 ルクレツィア王女殿下だ。


ルクレツィア王女殿下も15歳となり、今年から王立学園に通うようになっていた。

大好きなブルームに会えることだけを楽しみに、王宮での王女教育にも以前のように我儘を言わず頑張ってきた、少しでも印象を良くするために勉強も頑張ってきたのだ。


小さい時にブルームを王宮で見かけて一目惚れしてからずっと、ブルームと結婚したいと強請ってきた。ブルームは爵位が低いことだけがネックだった。ただその能力は高く文句ない、その上性格も良い、だから陛下たちもブルームが大きくなり何か武勲を立てるか、文官となるならば宰相補佐にでもして、頃合いを見計らい陞爵させれば良いか、などとブルームとの婚姻に乗り気であった。国の状況があの時のままであれば、婚約する運びであった。

ただ、ブルームに問題はなかったが、王女の婚約ともなると複雑に思惑が絡み合い慎重にタイミングを見ていた。本当に爵位だけがネックだったのだ。


ルクレツィア王女殿下はブルームに嫁ぐべく、商売のことも少し勉強した。嫌いな国外の情勢や言語なども成績はイマイチだが一応勉強していた。少しでも優秀なブルームに近づけるよう努力してきたのだ。王女と言う身分から偶然でもブルームに会う機会はない。ブルームは夜会や茶会にも滅多に出て来ない、出て来ても妹セシリアの傍にいて守っていて誘う隙もない。だから今まで近づくチャンスがなかなか来なかった、やっと同じ学園に通って仲良くなりたいと思っていたのに、今度は学年ごとに学舎が違いやっぱり話す機会もない。

それが進展があったのだ! ブルームが比類なき魔法能力を示し、国として『最高魔術師』の称号を贈ろうと言う話しが持ち上がっていた。『最高魔術師』は不在の時もある実力だけで決定される、この国で1番名誉ある称号で、この称号には貴族も平民もなく、『聖女・聖人』と同じで王族に次ぐ身分となる。これでもうルクレツィア王女殿下とブルームとの婚姻の障害になるものはなかった。

この話を侍女がこっそり教えてくれた時は、はしたなくもぴょんぴょん跳ねて喜んだ。

それが急転直下で『最高魔術師』の決定とは別に、ルクレツィア王女殿下との婚約は白紙となった。

その理由は明かされる事はなかったが、父 国王から言われたのは、『ブルーム・ブライトは今後 誰とも婚姻は結ばない。だから お前も諦めなさい』ただそれだけだった。

泣いて理由を聞いても理由が明かされる事はなかった。


それから毎日ルクレツィア王女殿下は涙を流し暮らしていた。楽しみだった学園生活は絶望へと変わったのだった。父 国王陛下の命令で今まで以上にブルームには近づくことも遠目で見ることも許されなくなってしまった。

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