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78、再会

ロナルドがセシリアを気に入って新しい世界に連れてってやるなどと言い放ち、セシリアを愛する者たちはロナルドに殺気を向ける。

ロナルドのシャボン玉が割れた。


馬鹿め、私を甘く見ているのだな。

1対1では負ける気がしないと言うのに、クフフ。

見たこともない魔獣もいる! アレも全て私のものだ!!


ブルームはハッキリ言えば生まれたばかりみたいなものでまだ体が馴染んでいない。

「お兄様、まだご無理をなさってはいけませんわ。わたくしがここは相手を致しますのでリアンとお休みになっていてくださいまし」

「そうだね、少し準備運動が必要みたいだ。借りは返したいから残しておいてくれる?」

「ふふ、分かりましたわ、では少し遊んで参りますわね」



「あーっはっはっは! お嬢さん、少し魔法に覚えがあるからって舐めてもらっちゃ困るな、先程はドラゴンの結界から出られなかったけど、分かっていればなんて言うこともない。油断していると その綺麗な顔に傷が…」

ゴロン

ロナルドの頭が地面に転がった。

「セシ、遊ぶんじゃなかったの?」

「そうでした、あまりに鬱陶しくて」

イヤイヤ ロナルドの頭を体の上に乗せ回復魔法を掛けた。元通り繋がったが 本人は何があったか分かっていない。でも体と頭が離れたような…。幻影だな、小賢しい。


セシリアはわざと背中を見せて距離をとった。

ロナルドは自分の魔力をゴッソリ奪われていることに気づいていなかった。自分は人より魔力が多い、魔道具の枷が付けられていても問題がなかった、その縛りがない今は魔力が無限に湧いてくるイメージだったのだ。隙を見せたセシリアに火魔法でバズーカ砲を放った。筈だったがイマイチ威力が足りない。

セシリアは正面を向くとそのバズーカ砲を避けもせずに受けた。これは以前ケイジャー小隊長の攻撃を受けたのと同じだ。だがロナルドは知らない、貰った!そう思っていた。

セシリアは片手で受け止めるとそれを手で握りつぶした。そして風刃でロナルドの首を切り落とした。そしてまたセシリアは拾い上げると体に乗せ回復魔法でくっつけた。だがその間にも精神攻撃をコツコツと仕掛けていた。

ロナルドは悲しいかな自分の首を切り落とされた瞬間から意識が途切れ記憶がない。気づくと自分が仕掛けた筈なのに、何事もなく女がそこにいるのだ。そして悪い顔をしてまた仕掛ける。どんどん魔法の威力が弱まっている事実には気づきもしない。また首が落とされた…いや違う、数回前から切り落とされたままなのだ。頭部を自分で持って座っている、その異変にロナルドは気付かない。首と胴体が離れているのに平然と笑って喋っている、それが急に痛みを訴えた。「うぎゃーーー!!」見ている者たちはポカンとしている。

ロナルドは自分の頭を放置し転げ回っているのだ。何が起きたか分からない。

実は空想世界でロナルドの右手を粉々に砕いているのだ。彼の右手には効率よく魔法を行使する為の魔石が埋め込まれている、故に彼の要である右手を失ってしまうと、彼自慢の魔法が使えないのだ。だから右手を失う苦痛に絶叫していた。実際は何もしていない…、見ている者たちはロナルドが自分の手を掲げて絶叫しているようにしか見えない、何が起こっているか分からず背筋が寒くなった。


ウォーミングアップをしていたブルームが、声をかける。

「セシ、そろそろ良いみたい」

「了解」

そう言うと、セシリアは回復魔法で頭と体をくっつけてブルームの前に出した。勿論 精神的に痛めつけたのはそのままに。

ブルームもセシリアの戦い方を見ていたので、ロナルドにワザと浅い傷を作る。そして腕や足を1本ずつ切り落とす、そして回復魔法で元に戻してまた斬り刻む、今度は意識を残して。


ブルームも魔力と聖力をたっぷり使って復元したため、どちらも使えるようになっていた。

魔力も聖力も自身の能力の確認に目の前の獲物はちょうど良かった。今まで使えていた魔術は勿論、新たに手に入れた聖術も試していた。過去に培った能力は遜色なく使えた、それよりも以前と違い高魔力と高聖力で形成されている為、寧ろスムーズに技に入れた。ガソリンで言うところのレギュラーとハイオクの違いっていうのか、魔力や聖力の行使に適した体と言えた。聖術には思考誘導などもある、そういったものは後でこっそり試すとして、回復魔法も治癒魔法も問題なく使えることが分かって肩慣らしは終わった。

昔セシリアがどこまで回復魔法で元に戻るのか試したくなった気持ちが今ならよく分かる。


セシリアが首を落としても元に戻ったな…。

ふむ。

ズサっ! ゴト

回復魔法で元に戻して見た。

「セシ、同じように出来たかな?」

「んー、お兄様 体は繋がっていますが、魂の回路が繋がっていないのでこれだと記憶などが戻りません。ここ! これ分かりますか? ここも繋いでください」

「ああ、なるほど…そうか、回復魔法では傷を治すだけで魂の回路は傷ではないから復活しないのだな。これでいい?」

「はい、お上手です。わざと繋げなくても問題ないですし…。うふふ」

『なるほど、聖属性の精神に干渉できるスキルあっての魂の回路なんだね。勉強になるなぁ〜。魔術だと元には出来ないの?』

『やった事はありませんが、別のものをはめ込む事は可能だと思います。この回路に別の記憶を埋め込んだ場合記憶をすげ替える事も出来ると思います。でも元のまま記憶を残すと言う事であれば聖属性である必要があるのだと思います』

『凄いなぁ〜セシは。研究熱心なお陰で私はここに戻ることができた、愛しているよセシリア、今も昔も変わらずね』

『嬉しいですお兄様、愛するお兄様がお変わりなくて。でも例え変わってしまっていても丸ごと愛していますお兄様!』


皆には声は聞こえないが、2人が目を輝かせて見つめ合った後、悪―い顔をして、その後甘〜い雰囲気を出している事は見えている。何となく背筋がゾワゾワした。



「おーーーい! ブルーム! セシリア嬢! 悪いが陛下たちも怪我を負われているのだ、治療して貰えないだろうか!!」


「あっ! お兄様は如何致します?」

「ロナルドはどの道 私たちでは裁く事は出来ないからね。私のことはいいけど、セシは沢山泣いてしまったのだろう? それは許せないな」

そう言うと徐に、ロナルド右手手首を切り落とし、炎で焼いて止血した。これでもう元に戻ることはない。ロナルドは絶叫している、大事な手を失った恐怖と痛みに絶望している。


「わたくしは、あの子たちのところに。ピーーーーーーーー!!」

王宮で飼われている魔獣たちがその音に反応してセシリアの元に集まってくる。


「えっ? あっ? あの、陛下のところは?」

セシリアは聞こえているだろうが完全無視を決め込んでいる。陛下の生死にも怪我にも興味なし。


『ああ良かった、無事だったのね。みんな有難う』

『うん、セシリアのお陰で良い動きが出来たと思うよ!』

『…うん、よく頑張ったわね。こんなに傷だらけになって…、有難う ちゅ』

『連携プレーは私たちの方が上だったな!』

『そうそう! 本気の戦いって血が激るね。本能が呼び覚まされたって感じ!』

『まあ、そうなの? では王宮じゃ退屈かしら?』

『まーねー、でも最期の楽園があるから沢山運動は出来るよ!』

『あら、ここも血が付いているわ…』

『大丈夫だって! この程度いつもと同じだよ!』

『うん…うん。 じゃあ! 纏めてみんな回復させちゃう!! えい!!』


眩しく柔らかな光に包まれ見事に魔獣だけに回復魔法を作用した。

『じゃあ また王宮でね!』

『『うん、またね!!』』


セシリアはリアンが捉え損なった黒い魔獣を捕らえるとそっと自分のマジックバッグにしまった。これにより王都に入り込んだ黒い魔獣は消えた。

それからロナルドの前に立った。

皆には何をしているか分からないけど、無表情なセシリアは間違いなく何かをしている。


「う、うわっ! ち、力が抜けていく!」


ニヤっと悪〜い顔をしている。美人がそんな顔をすると寒気がするほど恐ろしい。


「すみません、これから行くところがあるのでご自分たちで後処理してください。

王宮の黒い魔獣は全て捕らえました、ロナルドの手の者たちは、頬に『S』の文字が浮かんでいるのですぐ見つかると思います。ロナルドは魔法を行使する魔力は残ってないので問題はないでしょう。陛下たちはウィンザード魔術師団長でも治せますでしょう? では失礼致します」


「ま、待て! どこへ行くのだ? 陛下の傷より大事で重要なことか?」

「当たり前です! お兄様を早く休ませて差し上げなければなりませんもの! あ、いえ、餌の黒いホーンラビットとかジャンボ蟻とか まだ始末できていないのでしょう?」


セシリアの目は本気だ、本気で言っているのだ…、さっきブルームはあんなにも元気にロナルドを甚振っていたのに!? なんなら我々より元気では? 黒い魔獣の捕獲なんて今とってつけたよね? だってさっきそのドラゴンが浄化してたし!そう思ったけど、セシリアがブルームに過保護なのを今更矯正は出来ない。そして否定して今後協力して貰えないのも困る…。


「ところで、そのドラゴンは知り合いかな?」

ニコリとするだけで何も答えない。

あっ、これは肯定、聞いちゃいけないやつなのかな? まあ、制御出来るならいいか。


「本当にロナルドの脅威は去ったのか? 各地で暴れている魔獣は何とかなるのか!?」

「……はぁー。早く帰りたいのに。 黒い魔獣はロナルドの契約獣です。契約の手を…! えーっと、ロナルドの首を落とした時にロナルドは一度死んでいます。だから契約獣は契約終了で元の場所に戻っていると思います。ただ、こちらに残っているのはこちらで繁殖させた餌たちです。大部分狩りましたがもし残っていたら…残った魔獣は頑張って狩ってください。では失礼します」

「待て待て待て!」

その視線はまだあるのか?と苛立ちを見せる目。、全然隠す気がない。淑女の仮面はどこに行った!?


「手短かにお願いします」

「セシリア嬢やブルームに連絡を取るにはどうしたらいいかな?」

「何故、連絡を取る必要があるのですか?」

「いや、それは…、相談を…」

「学園に行けばおりますよ。申し訳!ありませんが、急いでおりますの、失礼します」

そう言うと転移して消えてしまった。


「えっ!? 転移!!」

「それにセシリア嬢は一度も術式を唱えていない…、正真正銘の化け物だ」

「取り敢えず、彼女がいなくても出来る後始末をしてしまおう」

「陛下を治療しなければ」


ロナルドを連れて陛下の元へ戻った。




セシリアはどこへ行ったかと言うと隠れ家に来ていた。完全に地方の魔獣を忘れている。

「お兄様!!」

ブルームの胸にしがみついた。

やっと噛み締めてブルームの帰還を祝うことができた。ブルームは優しくセシリアの髪を撫でた。自分の胸で泣いているセシリアに優しくキスを頭に何度も落とす。

自分は爆破の時、何とかセシリアだけは守りたかった。「リアンー!」と叫びながら咄嗟の風で壁を作ることしかできなかった。恐らくセシリアを酷く泣かせ苦しませただろう、そう思うと申し訳なさでいっぱいだった。愛する者に苦しみを与えた自分が許せないほどだ。

だから今はセシリアの好きにさせてやりたかった。

だけど目の端で気になるものがあった。モノというか、人物だ。見たこともない人間がこちらを見ていた。


優しくセシリアを撫でていた手が止まったことに疑問を持ち現実に戻ってきたセシリア。

「あっ、そうだった。お兄様にお話がございますの」

ブルームの手を引いてその人物のところへ誘った。


「お兄様、わたくしの話を聞いてほしいのです。わたくしには前世の記憶がありますの」

「ふふ、望愛がその見た目に話し方までお姫様だと、まるで別人だな」

「もう、伯父さんったら…。お兄様には嫌われたくないのだもの」

「馬鹿だな、嫌うわけないでしょ? ちゅう」


「あのねお兄様、私はこの世界ではない世界で死んでこちらの世界に転生したの。それで前世と言うか、その世界では伯父さんは私の唯一の家族だった人なの。

伯父さん、この世界ではね、お父さんもお母さんもお兄ちゃんも凄く優しいのよ。それにね、リアンはドラゴンで強くて格好良くていつだって私の味方になってくれる。今は凄く幸せなのよ!」

「そうか…良かったな、望愛。お前が幸せで私もすごく…う…うぅぅぅ嬉しいよ」

「伯父さん!!」


セシリアは伯父と兄と再会を果たし幸せを噛み締めた。

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