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70、不穏な空気−2

アシュレイ王子殿下一行はヴィリアーズ侯爵領に向かう途中、グレイザー伯爵領に入った。

今夜はここで宿を取る。グレイザー伯爵邸まではまだある、今日は領境にある宿場町で休むことにした。だが15人も泊まる事は出来ない。


「我々は2人が扉に付きます。それから4人が宿の周りに立ち、3時間置きに交代いたします。2部屋は取れたので隣の部屋にローレン様たち4人でお泊まりください」

「いえ、私たちは野宿で結構です。それにやりたい事もありますのでお気になさらず、明日出発の時間までに戻ります」

アシュレイ王子はセシリアたちと一緒に行きたかったがそれを周りが許さなかった。

4人はさっさとどこかに行ってしまった。


セシリアたちはアシュレイ王子たちと分かれると隠れ家に来ていた。

ローレンは初めての来訪だ。ブルームには早いうちに教えたが、それ以来ここを教える人物はなかなかいなかった。ブルームは何もかもを許容してくれる。だから以前はこの家にはセシリアとリアンの部屋しかなかったが、今はブルームの部屋もちゃんとある。


セシリアはブルームとお揃いの指輪を作った、これはお互いの場所を繋げ転移も出来るし、この隠れ家にも転移できる様仕掛けがしてある。だから疲れた時 ブルームは一人でここに来て休息をとることもある。ここは誰に見られることも密偵の心配もないので、思う存分興味があることや物や資料を置きっぱなしに出来るのだ。その上セシリアに言えば部屋を拡張して貰えるし、大抵の物は揃う、実験も魔法訓練もし放題! セシリアが作った図書室は恐らく国内最高の機密の書庫になっているのだろう。セシリアは禁書をせっせと増やしていく。セシリアはマジックバッグを持っているので正直こんな書庫という形で残す必要がないのに、揃えてくれているのは恐らくセシリア以外の者のため。それに、別の部屋には回復薬やHPポーションにMPポーション、栄養ドリンクなども揃っているし、キッチンにはセシリアが冷蔵庫と呼ぶマジックボックスに食事が幾つもの種類入っている。風呂も最初は驚いたが慣れて仕舞えばこんなに便利なものはない。部屋には着替えがたくさん用意されている。快適すぎてセシリアがここに篭りたいと言うのがよくわかる。私の妹は正真正銘の天才なのだ。



初めて来たローレンは凄く驚いていた。

あれ、でもゲスト用の部屋は今までなかったけど…?

まさかツリーハウスか!?


到着するといつの間にかメインハウスの横にゲストハウスが建っていた。


メインハウスで食事をし、外で空を眺めながら酒を飲んでブルームとローレンは話をしている。セシリアは先に休むことにした。


『セシ、何でローレンをここへ連れてきたの?』

『転移ですから、どうせここを見つけることは出来ませんから』

『…そう。リアン、セシを頼むね』

『了解』


ブルームとローレンもワインを1本空けると各部屋に戻ってゆっくり眠った。

ローレンは見たこともないシステムや布団の肌触りに感動しながら、深い眠りに落ちていった。ここには安らぎがあった。


ローレンが朝目覚めると庭ではブルームとセシリアが剣の打ち合い稽古をしていた。あまりの激しさで自分が何を見ているか分からず固まってしまった。

ブライト伯爵邸でも2人は稽古をしているが、こんなに激しくないのだ。一瞬でも気を抜けば大怪我を負う、そんな本気の打ち合いだった。

そうか、いつもは人の目があるから本気になれないのだな。これがこの2人の本気か…、美しく激しいな。


4人で朝食を摂り、風呂に入ってサッパリしてから転移して元の場所に戻った。




馬のところでアシュレイ王子殿下たちがやって来るのを待っていた。

『お兄様、王宮が騒がしい様です』

『どう言うこと?』

『ギルドナ公爵領で魔獣が出て暴れている様です』

『何!? 規模が大きいのか?』

『はい。王宮では緊急招集がかかっている様です』

『では急ぎ戻らねば、いやいっそこのままギルドナ公爵領へ入るか?』

『いえ、シャングリラにもう一度潜入したいと思います』

『シャングリラに!? どうするつもり?』

『シルヴェスタ公爵とロナルドの目的を調べるつもりです』


『分かった。3人で行くのだな?』

『はい』


「すまない、待たせたか?」

「とんでもございません」

「では出発しようか?」

「いえ、我ら3人は予定が入りましたのでここで失礼させて頂きます」

「何だ急に! 共に参ろうと話したではないか!」

「そうだよ、大体3人って何だよ! 私を置いていくつもりか!?」

「ああ、実家の商売の買い付けで連れていけないんだ。悪い、それにローレンは殿下のお供って言ってあるんだろう? ディアナ様が婚約を解消となるとお前にも呼び出しが入るだろう、こちらの都合に合わせるわけにはいかない」

「凄く楽しかったのに…」

「おい、私を無視するな。何故急に買い付けの話が出たのだ!」

「貴重なスパイスを栽培している老人がいるのですが、いつ戻るか分からず人をつけていたのです。その方が戻ったと連絡が来たので申し訳ございません」

「そうか…、残念だが、また学園で会おう」

「はい、では殿下お気をつけて」


『セシリア! 本当のところは何なのだ?』

『もう一度シャングリラに行ってみます、気になることが出来ました』

『そうか、気をつけるのだぞ?』

『はい』


ブルームたち3人はすぐに踵を返し馬に乗って行ってしまった。

護衛騎士たちは心なしか笑顔が増えたのだった。


「それでは、出発!」

アシュレイ王子殿下たち一行は目的地へ向かって出発した。


セシリアたちは馬を繋ぐと隠密魔法をかけ、前回マーキングしていた場所に転移で飛んだ。



アシュレイ王子殿下たち一行はセシリアたちと別れ次の休憩地で休息をとっていると、早馬が到着した。そこにはギルドナ公爵領で魔獣が暴れているとの知らせだった。直接現場に向かう事も考えたが、至急王宮に戻るようにとあったので、予定を取りやめ王宮に戻ることになった。




王立学園ではディアナの婚約白紙撤回が話題となり、様々な憶測を呼んでいた。

シルヴェスタ公爵家がこのバファローク王国を牛耳っているのは周知の事実。よってディアナから婚約破棄する事はあっても、王家から破棄するなどないと思っていた。それが王家からの婚約破棄とは……、何があったのか? そう思っているところに囁かれる噂。

プリメラ・ハドソン伯爵令嬢に対する嫌がらせと、ディアナの取り巻きであった令嬢たちへの犯罪の噂。


ナディア・カラリラ子爵令嬢とシャクラン・デュフル伯爵令嬢が男たちに襲われて修道院に入る事になったのは、やはり従者ソディックではなく全てはディアナ・シルヴェスタ公爵令嬢の指示であった。


衝撃的な内容であった。ナディアとシャクランがディアナにさせられていた事も詳らかに飛び交った。噂の出どころは分からなかったが、事実 王都警備隊が調査に乗り出していると言う。その上、口を塞ごうとカラリラ子爵家とデュフル伯爵家を乗っ取ろうとシルヴェスタ公爵の手の者を養子に迎えよと指示までしていると言うのだ。


今までなら、こんな理不尽にも拳を握りしめて耐えるしかなかった、だが娘を残酷な形で失い、家までも奪われるこの仕打ちに立ち上がったのだ。

シルヴェスタ公爵を恐れ、口にする事はなかったが、理不尽な思いをしていたのは彼らだけではない。実は私もこんな目に遭ったなどの被害を王都 警備隊のマルゴット副騎士長に訴えた。マルゴット副騎士長であれば、事件を揉み消したりしないそう信じて次々面会を申し込む。膨れ上がる不満に王宮も正式に動き出した。


ディアナの悪行だけではなく、シルヴェスタ公爵家の悪行まで次々明らかなされていく。

いつもであればシルヴェスタ公爵が手の者を使って痛い目に遭わせれば、皆倣ったように口をつぐむ。ところがシルヴェスタ公爵の粛清が入らない、よって世間のシルヴェスタ公爵家に対する悪評は止まることがなかった。


ローレンの婚約者のリネット・メディチ侯爵令嬢はすぐ様反応し、メディチ侯爵家はローレンとの婚約を解消したいと申し出た。通常であればシルヴェスタ公爵家との縁談を格下のメディチ侯爵家から断りを入れるなど出来ることではなかったが、メディチ侯爵家はシルヴェスタ公爵家と懇意にしていると自分まで疑われている。せめて潔白が証明されるまで白紙撤回したい!と懇願し、シルヴェスタ公爵はそれを受け入れた。これも異例のことであったが、皆 自分に火の粉がかからない様に必死だった。


メディチ侯爵家は婚約解消されるとすぐ様それを広め、リネットには別の婚約者を必死で探した。そして新たな婚約者はノルティス・キグナス伯爵令息。家格はだいぶ落ちたが、ワグナール公爵家の傍系で血統は確かだった。シルヴェスタ公爵家と縁を切る今、確かな後ろ盾としてワグナール公爵家を選んだかたちだ。貴族の婚姻は家と家を繋ぐもの、子供たちの意思など関係がないのだ。

とは言え、リネットは公爵夫人になる筈が伯爵夫人になるなどプライドが許さず納得できない。そしてノルティスの方も過去に『おバカ姫』と馬鹿にしていたことも忘れて今はプリメラに夢中だった。せっせとドレスや宝石をプリメラに貢いでいた。リネットとの婚約は青天の霹靂、自分の婚約を知ったのは既に決まった後で検討の余地もなかった。

ノルティスは密かにハドソン伯爵領をいつの日か手に入れプリメラにプレゼントする事を夢に見ていたが、叶わぬ夢となった。


そしてプリメラはと言うと…、

『きた! キタキタキタキタ!! これってアシュレイ王子と私の婚約のカウントダウンでしょう!! 断罪はなかったけど、概ねストーリー通り万事OK! やっぱり私がヒロインなのね。

そうよね、ヒロインって無駄に苦難が降りかかる、そして運命に必死で争う。その健気さがウケるんだもんね! 信じて頑張ってきて良かったー!!』


そしてブルームに夢中だったマルゴット侯爵家、セヴィリール公爵家、キャストレイ公爵家も再びアシュレイ王子殿下との婚約者候補の話が再燃した。ブルーベル侯爵家のアリエルなどは年上だったために選考から漏れた時点で(水面下では動いていたが)婚約者を作り結婚してしまったが、同年代や下の年代はまだ婚姻していない家は婚約者がいない家から優先的に選考対象となった。シルヴェスタ公爵家と対抗する家格が必要だった為、高位貴族は否応なく選考対象となった。


マルゴット侯爵家、セヴィリール公爵家、キャストレイ公爵家はそれぞれ娘がブルームに夢中で婚約したいと懇願していた。ブルームの素行調査で、ブルームは大変優秀で騎士としても文官としても将来有望なのは間違いなく家に迎えるに何も問題がなかった。唯一貧乏伯爵家と言う事だけが引っかかったが、害にならなければ良しとした。早速婚約の打診をしたが、まさかの邪魔が入った。それは王家だった。


ブルームはなんとルクレツィア王女殿下の婿候補に入っているので、と邪魔をされた。

こればかりはどうしようもなく娘たちにも諦める様に言ったのだが、諦めきれず先延ばしにしていたのだが仇となり、今回ばかりは我儘は通らなかった。



実はこのブルームの件にはブルーベル侯爵が関与していた。

ブルームの婚姻を権力で無理やり介入されない様に手を回す必要があった。ブルーベル侯爵家より家格が下であれば問題ないが、上であると血縁関係もないブルーベル侯爵家の力と言えど万能ではなかった。

ブルームとセシリアの絆は固くセシリアは婚姻そのものをしたくない、ブルームを助けながら生きていきたいと言い、ブルームはそんなセシリアが生涯気兼ねなく家にいられる様にしたいと望んだ。そこで、ブルームをルクレツィア王女殿下の護衛にしようと考えた。ブルームの腕前であれば問題なく近衛騎士になることが出来るだろう、護衛騎士となれば王女との恋愛関係は御法度となる、そしてセシリアも王女殿下付きの女官になれば兄妹で一緒にいられると思っていたのだが、その時既にセシリアは1人で商売を始めていた、しかもエヴァレット公爵家の後ろ盾を得て、偽名を使い代理人を立てる形で商売を成功させていた。

そこでブルームだけ密かに近衛騎士候補として、クレイブ元副騎士団長を介して紹介し、騎士団の練習に参加できる様に取り計らった。ところがルクレツィア王女殿下がブルームに一目惚れしてしまったのだ。まだ紹介する前に王宮で偶々見かけたブルームに夢中になり欲した。早くも計画は頓挫した。


アシュレイ王子殿下の側近になると政治的絡みで婚約者が決まる可能性が大きい、そこで選んだルクレツィア王女殿下であったが失敗に終わった。ブルームが成長し何か1つでも功績を上げれば、ブルーベル侯爵家の養子とし王家に入る、そんな未来予想図がありありとしていた。

しかしこうなってしまっては今更嘆いても仕方ない、今は取り敢えず時間を稼げたと思うべき、と切り替えてきた。幼い王女の恋心は別の美少年を見れば変わるかもしれないし、政治的に他国に嫁ぐなども予想できる、王家から正式な打診はまだないことを利用して、素知らぬ顔をして他家を退けてきた。


将来有望なブルームを婿にと考えていた家は、イマイチ攻めきれなかった事が悔やまれるが、未来の王妃は家にとっては魅力ある立場、親たちは積極的にアシュレイ王子殿下の婚約者の座を望んだ。

だが、その席は1つしかない、シルヴェスタ公爵家が消えた今虎視眈々と狙っていた。




王宮ではギルドナ公爵領に出た魔獣について話し合いが重ねられていた。

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