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7、落とし物−2

外に出てみると上空が騒がしかった。

地上にいるセシリアには何が起きているかは分からない。

『何があったのか分かる?』

『んー、魔獣? いや違うな。獣騎士って言うのが飛んでるみたいだよ』

『獣騎士!?』

獣騎士とはこのバファローク王国の対魔獣に特化した騎士団の事だ。

魔獣と魔法契約を結んだもののみが在籍している。騎士団の魔獣の種類は様々で空を飛ぶもの、地を這うもの、地を駆けるものそれぞれだ。戦闘に特化したものばかりではなく、情報入手の為に使われるものなど多岐にわたる、と言われている。


『リアン何で知ってるの?』

『念話で呼びかけて応える奴を探した。そしたら教えてくれた』

『凄いねリアン! 獣騎士見てみたい、リアンー、見てみたーい!』

リアンはセシリアを背中に乗せて安定するくらいの大きさ、1.5m位になって背中に乗せて獣騎士をコッソリ見れる場所まで飛んでくれた。

木と木の間を抜け、低空を飛んだりしながらあるポイントに来ると飛んだまま待機した。


少し離れた上空を獣騎士たちが飛んでいる。

任務で急いでいると言うより、空のお散歩といった感じで優雅だ。

獣たちが騒いでいたのは獣騎士が現れた為だった。


獣騎士たちの魔獣はワイバーン、7頭で真ん中の1頭を守る様に隊列を組んでいる。

『うふふ 獣騎士って初めてみたわ。魔獣も見たのは初…覚えているのは今回が初めてよ!』

『前に見た事があるの!?』

『うん、小さい頃にね、野犬に襲われた事があるの。その野犬が魔獣に追われてたらしいんだけど、野犬に襲われて意識失っちゃったから覚えてないのよ』

ピキっと、リアンに殺気が漲った。

『昔の話よ、有難う怒ってくれて…』

『そう言えば、世間から見たら僕も魔獣じゃないの? セシリアはどう思ってるの?』

『え!? リアン!? リアンは魔獣なの?』

『普通そうでしょう…、だってドラゴンだもん』

シュンと項垂れる。

『リアンは私にとって家族だから…魔獣なんて考えたこともない…そうか、魔獣なんだ…。もし見つかったらリアンが傷付けられちゃうのかな!? どうしよう、どうしよう! 離れたくない。転移魔法とか、転送魔法とかも覚えなくちゃだよね! 頑張るからね!!』

『ぷっ! 気にするところが変だよ? 僕は強いし翼があるから大丈夫だよ、その為の隠れ家でしょう?』

『そっか、でもなんだか不安になってきた。いっぱい勉強するからね!』

セシリアってちょっとズレてる、でもそこも可愛い。僕が魔獣ってとこは気にならないんだな。


「キィィィィィィィィィィィィ!!!」

「「「キュィィィィィィ!!」」」

何やら不穏な雰囲気になってる。

見上げると、先程の獣騎士の隊列は乱れ慌てている様だった。その原因は魔獣の出現だった。


『セシリア…ごめん。さっきの殺気で藪をつついちゃったみたい』

『あははは…ダジャレだ、懐かしい』

セシリア、またズレてる。ん? ヤバいかな?


突然の魔獣の出現の獣騎士たちは慌てて前の3騎が攻撃態勢をとり、後ろの5騎が方向転換し来たルートを戻ろうとする。3騎は盾になって5騎を逃そうとしているらしい。


『アレ1騎に子供が乗ってるみたいだね』

『そうなの?』

よく見ると確かに子供が乗っているワイバーンを守っているみたいだった。

魔獣はコンドルが魔獣かしたものだった。小型の魔獣で攻撃力は然程高くはないのだが、兎に角スピードを駆使し嘴をドリルの様に回転しながら攻撃してくる。

今回で言えば、ワイバーンの翼を狙って攻撃してくる。

対魔獣討伐であれば、獣騎士の後ろに魔法騎士を乗せ、操縦と攻撃と分担して行えるのだが、今回は目的が違った為、準備が出来ていなかった。


コンドルはパニックに陥り手当たり次第に攻撃していた。ワイバーンの獣騎士たちも攻撃を避けることしかできずにいた。

「危ない!!」

獣騎士の1人が声をかけた。コンドルが向かった先は子供が乗っているワイバーンだった。獣騎士は旋回させながらそれを避けた。そして近くにいた獣騎士が尾っぽで回転させてコンドルを叩き落とした。

手に汗握る戦いが続いていた。

だがコンドルは諦めなかった。体勢を立て直すと別の獣騎士を狙い突進する。獣騎士たちはそれを避けまた尾っぽで叩き落とそうと試みた。コンドルもそれを巧みに交わしたが次の攻撃は避けきれずヒット。だが不測の事態が起きた!当たりどころが悪く子供が乗っているワイバーンの方向へ飛んでしまった。子供が乗っているワイバーンは急ぎ旋回して避けた、がバック宙の様に後ろ回転した。コンドルは避けられたが天地が逆転した瞬間子供は手綱に一本の手で捕まっている状態、急ぎ手を伸ばしたがコンドル向かってきた。咄嗟に避けようとして子供は手を離してしまった! 真っ逆さまに落ちていく。獣騎士も追いかけようとしたがコンドルが邪魔をして踏み留まった瞬間に、子供は山間に消えてしまった。


「探せー! 探せー!!」

「探せー!!」

「コンドルを殺せー!!」

4獣騎士たちはコンドルと相対し、2獣騎士が捜索にあたる、1獣騎士が報告に向かったようだ。


『リアン、あの子供のところへ連れて行って!』

『了解!』




見つけた子供は酷い状態だった。

木の枝に貫かれ擦り傷切り傷だらけで瀕死の状態だった。

枝が刺さっているのは太ももだった。見つけたものの、セシリアでは子供を支えて2m位刺さっている枝から引き抜くのは難しかった。

「がぁーーー! 駄目だわ、どうしよう、このままでは死んでしまう」

『じゃあ僕がやるよ、ちゃんと掴まってて!』

リアンは前足で少年を掴むとそのまま丁寧に引き上げた。

『有難うリアン』

地面に横たわらせ回復魔法を施す。だが、損傷が酷く一度には治す事が出来ない。

『これが今の限界ね。リアン、隠れ家に連れてっても良い?』

聞かなくてもいいのに、律儀だな。

『助けたいの?』

『うん、何でか分からないけど…助けなくちゃいけない気がするの』

『分かった、この男は僕の腕でも良い? 背中はセシリアしか乗せたくない』

「ええ、勿論よ 有難うリアン」


先程 出来たばかりの隠れ家に連れて行った。




取り敢えず出血は魔法で止めることができた。

太ももの真ん中から突き刺さった枝により骨は折れて無くなっていた、端の肉で辛うじて繋がっているだけだった。穴から下には血も通わずこのままでは、早めに切断しなければならない状態だった。出血がひどく生きている事が不思議なほど酷い状態だった。いや、あの時すぐに回復魔法をかけたから何とか命を繋ぎ止めている状態だ。

回復魔法で完治を目指すとそれだけ急激に魔力を注入される事になるので耐性のない者は体内で魔力が暴走し破裂するような事になる、と感じた。以前本で読んだだけの内容だったが、魔法をかけていてそれが理解できた。ある意味、固有の魔力と新たな魔力の乗っ取りで反発し合うのだろう。

魔法の治療でどこまで出来るか分からないが、一度の治療では無理だと言うことは分かった。



「うっううぅぅ、いだい いだいよー!!」

うなされている。

「痛み止めも、麻酔薬もないものね…、どうにかできればいいけど」

少年は兄と同じくらいの歳に見えた。

獣騎士が護っていた事を見ても高貴な生まれなのだろう。7〜9歳位で片足がない人生は苦しいわよね…、『何故助けた、あの時死なせてくれれば』そんな事を言われそうだわ。

…馬の足が折れて安楽死させるのも辛かったな〜。それでも助けられるなら助けてあげたかった。


そうだ! 記憶の中で水を出せたんだもの、記憶に中の痛み止めが出せるかも!

でも、確認も出来ていないものを飲ませるのは危険かしら…。

よく使っていた薬を目の前に出す事が出来た。まだどうすべきか思い悩む。

次に痛いって言ったら使おう、次に唸ったら…、ああ でもこの世界にはない薬でこの子に何かあったら…。セシリアは薬を飲ませる決断が出来ずにいた。

そこで痛みが緩和するように心を込めて歌を歌った。どうか、この少年が助かりますように。

願いが届いたのか、少年の寝息は安らかになった。



『どうしよう、一度帰らなくちゃ…』

『そうだね、遅くなると捜索隊が出るよ? 特にハドソン伯爵のお茶会もあったから心配していると思う』

『そうだよね…』

『セシリアが心配なら僕がここにいるよ。何かあれば僕が教えてあげる。1人で帰れる?』

『うん、有難うリアン。お願いするね』

『任せといて』


セシリアは少年をリアンに任せ1人で走って帰った。



セシリアは家で兄と共にハドソン伯爵家での事を報告した。

「そうだったのか…。侍女たちの話は興味深いね。だから密偵たちは侍女や侍従など使用人から話を聞く事が多いのだ。貴族相手に取り繕っても使用人には当たりが強い人って言うのはいるからね、それに見ていない様で周りの人たちはちゃんと見ている、2人も気をつけるんだよ」

「「はい、お父様」」


「お父様、それとその侍女たちは食事の質が落ちたとも仰ってたわ。1年半前のお茶会では控えの間の食事も美味しいものが用意されていたんですって、楽しみにしていたのに残念だって」

「んーーー、これは子供たちにあまり聞かせて良い話ではないけど、関係がない訳でもないので話すよ。

以前、セシリアが馬の飼料にカビの生えた残飯などが含まれていると指摘した件があっただろう? あれはね…、ハドソン伯爵からバンドーフ商会を勧められて購入したんだが、我が家やブルーベル侯爵は購入先を戻す事にした、だけどずっと続けていたところもあったんだ。その飼料を食べていた馬が次々調子を崩し死んでしまった。

原因の特定は出来なかったのだが、皆バンドーフ商会にしてから馬の調子が悪くなったと言い出してね。紹介者のハドソン伯爵に詰め寄ったんだ、補償しろってね。だけど当然ハドソン伯爵は知らないと突っぱねた。だけど調べてみるとそのバンドーフ商会はハドソン伯爵が出資して作らせていた物だったと分かって、かなり揉めたんだ。

ハドソン伯爵はああ言う方だから、家格が上の方には補償したのだが、下の方たちは補償しなかった。そこで補償して貰えなかった下の方たちは取引をやめるとかハドソン伯爵家の馬を盗むとか、今なお補償して貰えなかった人たちとは蟠りがあってね、以前から取引していた者たちもハドソン伯爵家には何も売らないし、どうしてもの時はバカ高く低級品を売りつけているって訳なんだ」


「お父様、私はハドソン伯爵もその娘プリメラも嫌いです。二度と関わりを持ちたくありません。お願いですから今後の付き合いは断ってください」

「ブルーム、実は婚約も打診されていたが…」

「絶対に嫌です。しかもセシリアに対する態度を考えてもあり得ません。絶対に嫌です」

「そうだね、しかも婿にと言われてたし…」

「お父様、ハドソン伯爵家に関わるといずれ破滅しますよ!」

「分かった、分かった。私もハドソン伯爵は苦手なんだよね、出来る限り頑張るよ」


お兄様に婚約の打診をしたのも他の貴族に相手されなくなったからだろう。そして損失をうちに押し付けるつもりだ。

隣の領で今のところ1人娘、長い付き合いになりそうだ、困ったな。でも杜撰な領地経営だから隠れ家も作れた。関わり合いにこれ以上なりませんように。



部屋に戻ってから魔法書を読み漁る。

何もないところから生み出せた『物体創造魔法』、だけど転移魔法は座標や年代などを無視するのは危険だと思う。そこら辺を詳しく知る必要があると思った。ただ転移魔法や転送魔法や瞬間移動は詳しい事は持っていなかった。恐らく禁書になっているか、やり方が確立されていないのかもしれない。

一回ブルーベル侯爵邸で読んだ…、あれはなんと書いてあったか…、そうだ! アレは魔法陣に関する書だったか、アレは召喚魔法だ、でも詳しい話しは載っていなかった。

でも、基本は自分の中にどこに行きたいかを明確に浮べ…思い描く、あとは自分の魔力を注いでいく。


『セシリア、子供が苦しみ出した』

『分かった』


今、私が行きたい場所…リアンのいる場所!

脳内にリアンとあの子が映像として映し出された。

そう、ここに私は行きたい! 

さあ、行くわよ!!

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