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59、社交シーズン

アシュレイ王子の近くに来てもプリメラが邪険にされる事がなくなった。と言うのもグラシオスをはじめ皆 聖獣モモンガに興味があるから。

肩に乗っているけど、排泄ってどうしているの? 食事は? 性別はあるの?

身近で聖獣を見たことがなかったので、好奇心で聞きたいことがいっぱいだった。


プリメラは相変わらずの距離感だったが、最近は言っても無駄、これが彼女の個性だと受け取り、周りがそれを許容した。

社交シーズンが到来し、プリメラには沢山の招待状が届くようになった。だが、プリメラの実家は現在火の車、聖獣を得たプリメラが、借金のカタに婚姻を結ばないように、現在は王家が肩代わりし、領地は差押となった。王家のものとなった土地を運営し、ハドソン伯爵家は王家に対し借金を返済していく。恐らくプリメラの場合魔術師団扱いとなり、回復魔法や治癒魔法の使い手として働いて併せて借金を返していくと思われる。現在の回復魔法、治癒魔法の使い手はレベルで言えば1〜2、聖獣であればもっと高度な治療が出来るはずである。そうなるとかなりの高級取りとなる、借金問題は王家に任せておけば何とかなりそうであった。


だが、夜会に着ていくドレスは今現在持っていない、いや以前作ったものはあるが、ドレスは流行があるものだ、注目の的のプリメラが毎回同じドレスを着れば、悪い意味で話題になる。

その上、胸が成長期! 流石に去年や2〜3年前のドレスでは入らない。ドレスを作るにはお金がかかる、でも先立つものがない。それでも舞踏会やお茶会には出席したい。ジレンマであった。


「浮かない顔をされてどうなさったのですか?」

「うーーーーん、沢山のお家からお茶会や夜会のお誘いを頂いているけど、うちにはお金がないからドレスを用意出来ないの。だからどうお断りしたら良いのかなって思って…」


「…なるほど。分かりました! 皆に声をかけておきます!」

「へっ? ああ、うん 有難うございます」


本当はお茶会や夜会に出てチヤホヤされたいので、誘われなくなるのは寂しかった。でもどうしようもない、下手をするとお金持ちのお爺さんに売られるところだった事を考えれば、ドレスが買えないことくらい我慢出来た。それにちょっと前まではみんなに馬鹿にされて無視されていたのに、今はみんなが笑顔で話しかけてくれることが嬉しかった。また見栄張ってドレス買ってお爺さんに売られるのだけは嫌だった。だから我慢出来た。




魔術の座学の後、魔法訓練の授業が行われる。

今日からそれぞれの特性に合わせた魔法訓練が始まる。王宮から魔術師たちが派遣されて、火魔法は火魔法の使い手が教える。ただ、2つ以上の魔法を使える者は、1つしか使えない者より技を磨く時間がない。希望する者は王宮で追加授業を受けることも出来る。

ただ、特殊な魔法が使える者はエリートコースに乗り一生安泰となる為、貴族たちは小さい頃から魔法訓練を受けている者が殆どなので、特出したスキルでもない場合は追加授業を受けないことの方が多い。


プリメラは魔法は火魔法 レベル3で入学、今現在も変わっていない。ただ、聖獣を得たことで聖属性の魔法をモモちゃんにお願いして行使できる。モモちゃんの聖属性の魔法レベルが如何程かはまだ調べていない。因みにパンも調べていないので後日王宮で確認が行われる。

また、聖属性の魔法も種類がある、よって何に特化した魔法スキルがあるかは分からない、それに、同じ聖獣でも魔法レベルはそれぞれなので、確認の必要がある。


召喚獣は召喚主の言うことしか聞かない為、召喚獣と召喚主の関係性にも大きく影響がある。例えば、魔獣を召喚し、魔法騎士となり前線に出た場合、召喚主が召喚獣の能力の見極めが出来ていない、また能力以上のものを求めた場合、能力以上の魔力を使う魔法を行使続ければ当然魔力切れを起こす。魔力が枯渇して死ぬ場合もあれば、魔力不足による暴走を起こして召喚主の魔力を奪い共倒れになる場合もある。文献上 最悪の出来事として記されている中には、召喚獣は召喚主の死と共に契約は解除され元の場所に戻る。基本的には召喚獣は召喚主を害することはないが、その最悪の出来事では召喚主と共に自爆し強制的に契約解除を行ったケースがあったとある。

自分の能力以上の能力を手にした事により自分自身が強者になったと勘違いするケースは少なからずある。


聖属性の魔法も無害と言う訳でもない。

回復魔法や治癒魔法は重宝がられるので善と決めつけているところがあるが、それだけではない。魅了と同じような効果で魅力がある、これは上位種の魔物、魔獣、聖獣それぞれに名前は違えど備わっている。自らを守るためのスキルだ。その他にも思考誘導、献身、結界、他にも『聖者の行進』などもある。聖者の行進とは正邪とも言われていて、悪に鉄槌を下す、謂わば断罪の力でこれはかなり上位種しか持っていないので知られていない。要は生死を司ると言う事だ。人間は知る由もないので仕方ないが、天使と同じで自分の信じるものの命令は絶対で、柔軟な考え方がない分、悪と断ずれば徹底的に排除する、そこに情など一切の忖度はない。

聖と悪は表裏、一対なのだ。だから上位の魔獣も自己回復機能は備わっている。


まあ、いずれにしてもスキルの把握は必要不可欠である。


これまでの魔術の授業は堅苦しい事が多かったが、今日からは実技を兼ねた訓練が行われる。既に入学時に魔法属性のテストは行なっているが、変化がないか確認が行われる。

やはり弛まぬ努力をした者は、大幅に能力に違いが出る。花形の魔法騎士を目指す者はブルームと同じように王宮で訓練に参加させて貰っている者も多くいる。

この検査次第で彼らの人生は上方修正が入る、願いを込めて検査に臨む。


魔法騎士を目指す者たちはレベル6を超えていないと魔法騎士にはなれない。学園を卒業する時にレベル7に達していれば魔法騎士となれるが、レベル6までだと、魔法兵士からスタートでレベル上げをして再度挑まなければならない。出世していいポジションを得るには突出した才能を見せる必要があるのだ。

因みにコバック小隊長も、ケイジャー小隊長もレベル8ある、サルヴァトス魔法騎士団長はレベル10ある。レベル6とレベル7、レベル7とレベル8 その差は物凄く大きく、レベル10ともなると努力だけではどうにもならないのであった。


そして今回のテストにはある大物が来ている。

通常は魔法騎士ではなく、魔術師が確認に来る。ところが今回は魔術師団長、魔法騎士団長、騎士団総長、魔道具管理局長が何故か通常の試験官の魔術師と一緒に来ているのだ。いつもとは違う雰囲気が漂う。魔法騎士を目指す者たちは思わぬ大物が来ている事に歓喜した。ここで目に留まれば人生が開けるかもしれない!とその一心で気合を入れた。


魔法騎士を目指す者たちはレベル4と5の間とまあボチボチだった。

プリメラはレベル3で変化なし。聖獣を得て著しい変化が現れるか気になっていたが、プリメラ自身には変化がなかった。まあ、努力もなしには変化は訪れないと言う事だろう。


ここにいる者たちは、大物たち全員はプリメラを見に来ていると思っているが実際は違う。

先日あれだけの魔法を見せつけられたのだ、他人の魔法を横取りするとか、他人の魔法を魔力を奪いつつ継続させるとか、他人の魔法を変化させるとか、どれも規格外の事をやったセシリアのレベルが知りたかったのだ。通常レベルは10までしか測れない。それを超えると特別ランクを指すだけなので、例えば11〜20あったとしたらどこの位置に来るのかが知りたくて新たな魔道具まで新たに作ったのだ。

魔道具管理局が総力を上げて、理論上11以降のレベルが判定できるものを作ったが、レベル11以上の者がいない為、成功したかが分からなかった。サルヴァトス魔法騎士団長はレベル10、試しに測ったがやはり新しい魔道具でもレベル10と出た。だからセシリアがいくつなのか楽しみにしていた。

だが、セシリアの判定結果はレベル5を指しただけだった。本人は素知らぬ顔をしている。

その結果に大物さんたちは愕然とした。

魔道具管理局長だけは、『そんなものだろう?』程度の反応だが、それ以外の者たちは戦慄した。そのままリアンの測定に入りリアンはセシリアと同じくレベル5と判定された。


そして検査は終了した。


だけど納得いかない人物たちがいっぱい。

サルヴァトス魔法騎士団長より間違いなく段違いの魔法を使っていたのは間違いない。今回の魔道具作成はセシリアの為といっても過言ではない。いや、セシリアとブルームの為だ。

何に戦慄したって、魔道具は正しく測定されると信じて疑わなかった、だが目の前で偽装を目にしてしまったのだ。そう、誰もがセシリアの判定は間違っていると確信していた。


そして出来ることは一つ!

セシリアに頼み込んで人目のないところでもう一度測定させて欲しいと頼むこと!


「人目がないなら構いませんけど…その測定結果を信じることは出来ますの?」

「確かにそうだ。セシリア嬢がレベル11にしてもレベル18を出してもそれを確認する術がない以上信じるしか出来ない。ただ、新しい魔道具が機能しているかを教えて欲しい」


「魔法レベル…、何が良いですか?」

「一つ聞きたいのだが、自分のレベル以上の数値で出せるものか?」

なるほど考えなかったが、自分のレベルが8しかないのに10に出来るか? 結論から言えばセシリアやリアンであれば出来るだろう。だけどここで言えばまた混乱するだろう。


「んーー、魔道具より高魔力、高魔法レベル、高スキルがあれば可能なのではないでしょうか? 言ってみれば自分より高い能力を持つ魔道具の改ざんは出来ないけど支配下に置ければ出来る…?みたいな感じじゃないかと思います」

「えーっと、魔道具にも能力? ランクがあるって事か? まるで意思があるみたいだな」

「まあそのようなものだと思います」


「分かった、まず古い魔道具で測らせてくれ。勿論 改ざんなくだ」

仕方なく測ると特別ランクを指した。魔道具管理局長以外は動揺はない、分かりきっていた結果だから。いよいよ、新しい魔道具で試してみた。魔道具は14ランクを指していた。これも魔道具管理局長は1人感嘆の声を上げたが、他の者たちは猜疑心たっぷりにセシリアを見つめた。


「セシリア嬢、悪いがもう一度! もう一度頼む!!」

そう言うので仕方なく今度は16ランクを指した。それにまたも魔道具管理局長は目を輝かせ興奮したが、他の者たちは顔色を悪くした。


「ああ、何度もすまなかったね。有難う…ただ…人目のないところでと言うことは今回もこの件は伏せた方がいいのかな?」

「はい、お願い致します」

素敵な笑顔で応える。


「これは純粋な興味なのだが、セシリア嬢はどうやってレベル上げをしているの?」

「魔力操作をしたりしています。でも基本はイメージトレーニングです。お兄様に怪我を負わせるようなこと出来ませんし…、ケイジャー小隊長のような希少な方あまりいないので」

苦笑いしかできない。


「セシリア嬢は何のために魔法のレベル上げをしているの?」

「勿論 目的があるからです。遠い道のりですが、いつか出来るようになりたいと日々研鑽を積んでいます」

これ以上は答えてはくれないだろう、いや十分答えてくれた方だ。新しい魔道具も支配下にあると証明してくれたのだから。


「セシリア嬢、因みになのだが…ブルームも同じ結果かな?」

「さあ、どうなのでしょう? まあ恐らく特別ランクである事は間違いないと思います」

「そうだね、有難う」


そしてこの事は一つの仮説を立てることとなる。

聖獣のスキルを王宮で計測させて貰ったとして、聖獣の能力が上であればスキルを明らかにはしないだろう、と言う事だ。気づいた者はため息をついた。能力の高い鑑定人以外真実を知る事はできないと知ったからだ。




もうすぐ学園で舞踏会がある。その後に『月を囲む夕べ』がある。

いずれも大人の社交の準備のために行われる。主な目的は学生のうちに広い交友関係を築くため。良くも悪くも学園の外に出れば身分の差はついて回る。そして家の関係性はそのまま人間関係の立場にも反映される。高位貴族に生まれれば人を傅かせる側の人間となる、それ以外の者たちは高位貴族になんとか取り入ろうと躍起になる。一生下僕人生となるのと引き換えに庇護下に入れれば食べることに困らなくなる。高位貴族側の人間にしても能力のある下僕を手に入れられる。まあ、どうしたって利害関係は生まれてくる、互いに目を養い大人の世界に踏み出さねばならない。お茶会や夜会もその練習のようなものだ。派閥強化と拡大、平民と違い利害関係のない友人など持てるはずもなかった。

特別に優秀であれば、卒業後王宮に勤めることも出来るだろうが、コネがなければ平民がいくら優秀であっても就職先を自力で見つけるのは難しい。そう言った者たちにとっても高位貴族と近づけるチャンスなのだ。


そしてこのイベントは学園全体の催し物なので全学年が揃う。つまりはアシュレイ王子殿下と接点を持つビッグチャンス!!

アシュレイ王子殿下と側近には受難のイベントだが、一部を除いて大多数の生徒には人気のイベントだった。

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