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「アッシュ様!」

華やかで艶やかなディアナ。

「ああ、ディアナか、久しぶりだね」

あっ、アシュレイ王子の顔から感情が消えた。口角はあげているが、決して笑ってはいない。


「何故 最近執務室へ入れて頂けませんの?」

おっと、いきなり核心、しかも責めている目線。

「姉さん、何か用があったの?」

「ローレン、だって以前は食事を共にしたり執務室でお話しできたのに最近はちっとも時間を取っていただけないから…」

「姉さんが寂しいのは分かるけど、殿下は執務が増えて、最近では孤児院や修道院の不正の件で、昼食をまともに取る時間もないんだ。我儘言わないで差し上げてほしい」

「えっ!? あの件はアッシュ様が…?」

「すまなかったね、時間に追われて余裕がなくて。孤児院の件はディアナのお陰だよ、私を孤児院へ連れて行ってくれただろう? あの時に気づいたのだ、とても痩せている子がいてね、目に見えているものが全てじゃないと。ディアナのお陰で子供たちを救うことが出来た、有難う。 まあ、その残務処理で仕事に追われているのだ、許してほしい」

顔をヒクヒクと引き攣らせる。


「まあ、アッシュ様のお力になれていたなら良かったですわ…」

「執務室はね、重要な書類があるから捜査関係者以外は立ち入り禁止にしたのだ、ディアナなら分かってくれるだろう?」

「えっ? ええ、…でもわたくしは寂しいです。わたくしはお側に置いてくださっても…」

「駄目だ!」

「えっ!?」

「駄目なのだ、実はね最近、執務室や私の周辺を探る者がいる、ディアナが何か知っているかもと思われればハドソン嬢の様に狙われるかも知れない。危険だから駄目だ、だから執務室には入れられない」

必死なアシュレイ王子。

「姉さんは殿下に大切に思われているんだな。寂しくても今は我慢して、ね?」

「え? ええ、分かったわ」


「そうだ、ローレン あなた最近屋敷に帰ってないって聞いたけどどこへ行っているの? お父様も心配していたわよ?」

「友人の家を転々としている。学生のうちしか味わえない経験だからね。特別なことは何もしていないし、心配される事もしていない。大丈夫だよ」

「そう、あまりハメを外さないようにね」

「ああ、分かってるよ」


「アシュレイ王子――!!」

プリメラが走ってくる、その後ろから沢山の取り巻きを引き連れて。


「アシュレイ王子お元気ですか!」

「ハドソン様、以前にも申し上げました通り、殿下と敬称をおつけください。それから淑女は走ってはなりません、それに大声で声をかけるなんてもっての外です」

「皆さんこんにちは。見てください! この子が私の聖獣『モモちゃん』です! 可愛いでしょう?」

「あなたは人の話聞いているのですか?」

「モモちゃんは良い子で飛ぶ事も出来るし、走る事も出来るんです! 凄いですよね!!」

「お前、聞いてるの?」

「あっ! ディアナさんこんにちは」

「ディ、ディアナさん!? お前如きが敬称を!」

扇を振りかぶってひっ叩こうとしたが、それをブルームが止めた。

「手を離しなさい! この者には礼儀を教えねばなりません!」

「えーーー!! だってぇ〜、ディアナさんが前にぃ〜、身分の下のものから話しかけてはいけませんって言ったんですよぉ〜? だ・か・ら、ディアナさんは私に許可なく話しかけてはいけません!! なんちゃって!」

「な、な、何をふざけた事を!!」

「うふふ、冗談です! ね? こんな風に言われたらすっごく寂しくなるでしょう? 折角の学生生活もっと垣根を超えて楽しく過ごしましょうよ!!」


「流石はプリメラ様だ!!」

ギャラリーから拍手喝采を受けている。


「あはははは、プリメラ嬢は確かに今も昔も変わらないね。誰に対しても分け隔てなく話すことができるのはきっとプリメラ嬢の個性なんだね。

それが君の聖獣なのだね、とても可愛いな。大切にしてあげて欲しい、正直 羨ましいよ」

「アシュレイ殿下もこの子の可愛さが分かります? 手をお貸しくださいね、ほら モフモフで温かくて可愛いんです」

「ほう! 確かになんとも心まで温かくなるような心地良さだ。モモちゃんか…実に可愛いね。触らせてくださり感謝致します、聖女様」

アシュレイは聖獣に対して『聖獣様』と礼を述べたのだが、『聖女様』と聞き違えてはっちゃける。

「やだー! アシュレイ殿下ったらそんな畏まらないでください! 堅苦しく話さなくて良いですよ! 私たちお友達でしょう? ね!」


ディアナは鬼の形相でプリメラを見ている。


「殿下そろそろ…」

ブルームが声をかけると

「そうだな、楽しい時間を有難う。では失礼するよ」

そう言うとアシュレイ殿下はディアナをその他大勢と同じ扱いで行ってしまった。

ディアナには屈辱以外の何ものでもなかった。


プリメラ・ハドソンはディアナにとって完璧に排除する対象となった。



セシリアはと言うとリアンと一緒に隠れ家でパンと話をしていた。

「パンは何を食べているの?」

「私は契約獣なので、自分が生まれ育った場所と繋がっているのです。そこから聖力供給を受けています」

「ゲン様は?」

「私も主人と繋がっているので問題ない」

「まあ、そうなのね。リアンは? 苦しくない? 私の魔力や聖力では足りないわよね?」

「大丈夫だよ。僕は今は自分で聖魔力を生み出せるから心配ないよ、ちゅう」

「良かったぁ〜、ちゃんと困った事があったら言ってね」

「うん、セシリアもね。何でも言ってね」

「勿論よ」


「ねえ、ゲン様 魔獣は魔力を供給するのに魔獣から得る以外にはあるのですか?」

「んー、リアンの方が詳しいと思うが、魔獣は魔力溜まりから生まれる。澱んでいる場所ではあるがそこであれば魔力が充満しているのではないか?」

「何でそんな事聞くの?」

「『最期の楽園』で魔力を得るためにホーンラビットとか一角デグーを食べるために飼うのがちょっと…。例えば必要な魔力を必要な分だけ得ることができれば、殺されるための命は必要ないのかなって思ったの」

「そっか、セシリアらしい。でも最期の楽園にいる魔獣たちは魔獣管理局で管理されているから必要ないよ、王宮で飼っているホーンラビットとかが余っちゃうからね、アイツらの繁殖力は高いから間引きしなければあっという間に溢れかえってしまうよ」

「そうよね」

「セシリアは気にしているけどアイツらはみんな檻を離れて自由に飛べて喜んでいるよ。それに今の生活ではそこまで魔力を必要としていない、だから本当に必要ないんだ」

「ん、分かった。リアン…ぎゅってして?」

「うん、セシリアのお陰でみんな元気だしイキイキしているだろう? あれじゃ長生きしてランクル局長が引退する時、1頭も死んでない事態になる。だから大丈夫!」

「うん、有難う…大好きよリアン」

そうね…、強すぎる魔獣を人間が管理できるか、難しそうだものね。




食堂での出来事、プリメラがディアナの取り巻き リリアン・ボーダーとジャニス・バリーに嫌がらせを受けていた。リリアンがプリメラの足をかけ、前のめりに突っ込んできたところジャニスにぶつかった。ジャニスは食事を運ぶ途中だったので、プリメラは熱々のステーキとソースが頭からベットリとかかった。


「キャーーーーー!! 熱い! 熱い!!」

「キャーーーーーーーー!!」

ジャニスも尻餅をついた。

「痛―い! もう、何をするんですの!?」

「熱い! 熱い! 痛いよー!!」


なによ! 何なのこれ!!

はっ!! 

これ…まじキュンの食堂でのイジメのシーンだ!

キタ! キタ! キターーーーーーーーーー(≧∀≦)!!

これよ!これ! ヒロインが虐められて大勢の目撃者! 黒幕は悪役令嬢ディアナ!

やっと本編って感じ。ふひぃぃぃ、もうビビらせないでよ。

って言うか誰ルートなの?

王子? グラシオス? ベルナルド? ローレン?

今のところ話が出来るの王子だけ?

えっ? 待ってよ、ラブラブイベントなしでイジメだけ?

イヤイヤイヤイヤ嫌―――!! そんなの可愛いプリメラちゃんが可哀想すぎるでしょ?


あれ? 私って今聖女? まだ教会側からOK出てないけど、出たら聖女認定される訳で、そうしたらアシュレイ王子の婚約者ディアナから私になるんじゃね?

はいはいはい、ちょっと遠回りでまじキュン迷宮入ってたけど、やっぱりどんなルートを通っても、最後に正義は勝つ!な訳ね! 

OK OK OK! 私良い子だからちゃんと待てるよ! 聖獣付きの聖女とか付加価値ついてもう無敵じゃね? ふふふふ


「おい、見ろよ! プリメラ様があんな火傷だらけの顔で笑ってらっしゃる!!」

「まじで聖女だな、尊いぜ」

見ていた者たちは啜り泣いた。


現実に戻ってくると火傷で顔が痛い。

「ヒャーーーーー痛い痛い痛い! モモちゃん助けて!!」

聖獣は七色の光を放ち、プリメラの火傷を治してあげた。

「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 奇跡の力を間近で見られたぞー!!」」」


その後も嫌がらせは続いた。だけど今のプリメラには多くの信者がいて、秘密裏に嫌がらせをするにも限界があった。よってディアナが望むプリメラ排除の進捗状況が良くなかった。


ディアナの執事や侍女はこれで何度目だろうか、また交代となった。最近のディアナは少しでもミスをしたり思う通りにいかないとクビにして交代してしまう。その度に王家に執事と侍女の交代を連絡している為、悪い噂が自然と立っていた。


ディアナはリリアンとジャニスにも当たり散らしていた。その頃になるとリリアンとジャニスは頭の中に響く声に悩まされていた。


『ディアナの取り巻きだったナディア・カラリラとシャクラン・デュフルがどうして消えたか知っているか? ディアナの汚れ仕事を請け負っていたのに、たった1度アシュレイ王子に趣味について聞かれて楽しそうに答えた、それだけで排除された。ディアナの逆鱗に触れ、雇った男たちに犯され今は修道院に入ってる。

最近は自分の使用人も1度の失敗で殺して交換している。

くっくっく、お前たちも最近はディアナの思う通りに仕事ができていないとかなり腹を立てていたなぁーーー。お前たちの命はどこまで保つかな? 精々取り入れ、どうせ殺して交換される消耗品でしかないのだから』


繰り返し繰り返し響く声、しかもリリアンだけではなく、全く同じ内容のものをジャニスも聞いている。もう、恐怖でしかない。リリアンとジャニスは相談して自分たちの父親に打ち明けた。そしてもうこれ以上ディアナの側にいたくないと訴えた。

最初は馬鹿な事を言うなと叱責した父たち。シルヴェスタ公爵家の傘下である限り否やは言えるはずもない、楯突けば簡単に切り捨てられ家が潰される…、恐怖に震える娘たちに『シルヴェスタ公爵家が黒を白と言えば白なのだ、黙ってご機嫌を取るのだ』そう言って下がらせたが、密かに真相を調べ始めた。


娘たちの言う、失敗すると殺害して交換。

確かにディアナの執事も侍女もここのところ1週間交代で変わっていた。しかも前任者はどこにもいなかった。気のせいにするには証拠が出てくる出てくる、無視することも出来なかった。


リリアンとジャニスの父親たちはナディアとシャクランの家へと向かった。

体調不良で自領で療養している、そう言って欲しかった。娘たちの言う頭の声はただの妄想だと言って欲しかった。だが現実は残酷だった…リリアンとジャニスの父親にとっても、ナディアとシャクランの父親にとっても。


リリアンとジャニスの父親たちは決断を迫られていた。

子供の命も大切だ、だが家も大事だった。

楯突くにはシルヴェスタ公爵家は強大で、すぐには決断が出せなかった。その間にも娘たちの寿命が縮んでいく気がした。長いトンネルは始まったばかりだった。

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