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41、自重

ケイジャー小隊長は燃え尽きた状態で搬送されていった。

クライブ元副団長の言った通りの展開だった。

このバファローク王国が誇る騎士団全員を持ってしてもブチ切れたセシリアは止められないかも知れない、と背筋が寒くなっていた。


ケイジャー小隊長は試合を終えて使い物にならない状態で運ばれていったが、目の前のセシリアはちっとも疲弊していない。

一体何者なんだ!!


「クライブ元副団長、彼女は何者ですか?」

「はっ? んー、いきなり見ると彼女が途轍もなく危険な魔女にでも見えるかも知れない。だけど本当の彼女は愚直で努力の人だ。小さい頃から見てきたがスキルを身につけることに貪欲で寝る間を惜しんで常に全力投球していたよ。当時のブライト伯爵家はそれほど裕福ではなかった、ブルーベル侯爵家で学べる全てを吸収するかの様に2人ともいつだって真剣だった。同じ年頃の娘がお辞儀で褒められて喜んでいる頃、セシリアは剣や弓を持ち山を走っていた。何故かと聞けば拾った鳥の雛を育てるためだと言う、餌を取るために上手くなりたいと、その一心で訓練していた。

セシリアは情の深い一途で無償の愛を捧げる人だ。そして同時に庇護する存在に害なす存在を絶対に許さない守護者だ。普段は温厚で淑女って感じだが、ブルームとリアンをセシリアの前で貶めるような真似は注意したほうがいい、あの通り…手がつけられなくなるから」


「最初は普通の令嬢? 努力であれ?」

「まあ、ブルームもアレだから血筋が良かったんだろうよ、くっくっく」

えーーーー!! もっと早く言ってよぉ〜ん。


まあ2人が努力したのもあるが、魔力は個人の努力だけでは大幅に変わらない。正解はリアン。リアンが大好きな2人に愛を注いだ結果、人間の規格外の化け物が出来上がった。



この後、キャスター騎士団総長はセシリアの実力がどこまでか見たくなった。

だから当初予定していた弓術の対戦相手を下げ、弓術の実力者を呼んだ。ところが思っていたより普通だった。いや、小隊長のレベルより上である事は間違いないが思っていたより普通、なんとなく適当、真剣ではない事が分かる、訓練の延長程度。スコアに勝っても負けても感情を見せない。体術も同じだ、ケイジャー小隊長とやった時のような緊迫感もスピードもない。訓練通りの手加減した動きしか見せない。


「クライブ元副団長、これはどう言う事なのですか? 弓術や体術は得意ではない? いや、先程の動きを見ていればそんな事はあり得ない!」

「弓術はかなり得意だよ。何せセシリアは初めて弓を持った時から常に生きた獲物を狩ってきたし、大型動物や魔獣を仕留めるために体術も実践で学んできた。動かない的なんて、セシリアにとっては苦でも何でもない。

では何故今回特出した実力を見せないか…、それはセシリアの対戦相手はケイジャー小隊長じゃないからだ。セシリアはブルームとリアンの為にしか動かない。単純明快だ」


「はぁぁぁぁ、扱い辛いと言う事ですか?」

「ああ、間違ってもブルームやリアンを利用してセシリアを使おうなんて思わない事だ。隠そうとしても隠せない、いくら裏で画策しても無駄だ、セシリアは勘もいい、返り討ちにあって隠しておきたいモノを全て曝け出されて痛い目に遭うぞ」

「アレを使いこなせるものは?」

「今のところセシリア自身のみだ」



全てのテストが終わった。

最初は、国務部の魔獣管理局に入りたいだ? ブルームが剣術の天才と呼ばれているから勘違いした令嬢に現実を見せて教えてやるつもりだった、その筈だった…。

そこに立つ令嬢は自分の結果を確信している、いや、興味がない? 

選ばれると確信しているのではない、選ぶのは自分だと思っているのだ。国防部が欲しいと思う能力を示した、だから欲しがるだろうと確信しその上で…興味がないと示す。可愛い顔して、可愛くない。


「セシリア・ブライト嬢、素晴らしい実力だった。卒業後は国防部を希望しているのだったか?」

「いえ、まだ分かりません。ただ魔獣管理局には興味があります」


「それだけの才能を持っているのだ、兄と共に国のために働いてはどうか?」

「まだ学生ですので今後のことは分かりかねます」

「騎士団総長! 無駄です、女性は所詮結婚までの足掛けとなれば士気が乱れます。彼女と同じ所属になった者が気の毒です。しかも先程の試合を見ても才能が少しくらいあっても、性格に難があれば結局統制を欠くことになります。やはり彼女は不適合者と思われます!!」


これもテストだ、簡単に挑発に乗るかどうか…。

クライブ元副団長の言う通り本人に対する挑発はまったく乗ってこない、興味もないと言ったところだ。


「ブルームと同じ職場で働きたくはない?」

「お兄様の人生はお兄様が望む通りになさればいいと思っております。お兄様が望む人生のサポートが出来ればわたくしは幸せです」

「ん? それはどう言う意味かな?」

「お兄様がどこで働くか分かっていない今、わたくしの話をしても意味がないという事です。恐らくわたくしは国防部には入りません、ですから先程仰っていた心配はないように思います」


「では国防部ではなく、どこへ行くというのだ!?」

「実家に帰り父の手伝いを致します」

「それだけの才能を持ちながら勿体ないとは思わないのか!?」

「はい、思いません。それではテストも終わったようなので失礼致します」

「あ! …ああ、ご苦労だった」


挨拶が終わるとブルームを見つけて駆け出した。

ブルームに飛びつきブルームもそれを心得ていてしっかりと受け止めると抱っこした。セシリアは首にしっかりとしがみつき熱い抱擁を交わす。


周りの者たちは 濃い兄妹だな〜と、放心状態で見送った。



「ブルーム! セシリア!」

振り向く2人は美しい絵画のようで先程まで悪魔のような魔法を使っていた同一人物とは思えなかった。

「「クライブ様!」」

セシリアを下ろし2人はクライブの元へと急いだ。


「どうなさったのですか!?」

「ああ、諸用で王都へ来たらブルームが試合をするというので見に来たら、セシリアまで試合をすると聞いてな、ずっと見ていた」

「お会い出来て嬉しいです。クライブ様 久しぶりに剣術を見てくださいまし!」

「私も見て頂きたいです!」

「もう、私に教わることはないから家庭教師を辞めさせたのでは?」

「違います! タダで教わるのが申し訳なかっただけです…、でもお金を払うほどの余裕はなくて…」

「冗談だ、まあ金の問題じゃなくお前たちの成長を見守っていたかったのだ。だが、先程見させてもらったが、やはりもう教える事はないようだな」

「そんな事ありません! お兄様は兎も角わたくしはすぐ型を忘れてしまうから…、美しい模範を刻まなければなりませんのよ!」

セシリアの頭をポンポンと叩き、愛おしそうに眩しそうに見つめる。


「身長はだいぶ伸びて昔の面影はないが、相変わらず可愛いことを言ってくれる」

「セシリアはいつだって可愛いですよ?」

「ああ、そうだったな」


「じゃあ端を借りて久しぶりにやるか!」

「「はい!」」


ブルームとセシリアは無邪気に剣の稽古を楽しんだ。

それを騎士団総長たちは何とも言えない顔で見ていた。元副騎士団長は当時、王国一の実力を持っていた。お家騒動がなければ今頃 キャスターではなくクライブが騎士団長となっていた筈だった。遠目に見ても実力は落ちていないように見える、その不遇な人生に切なさを感じ、その実力者と互角に戦っている若いブライト兄妹の底知れぬ実力に身震いした。



キャスター騎士団総長はセシリアの事は箝口令を引いた。

セシリアの才能を知れば国防部だけではなくセシリアとブルームを利用しようとする奴らの餌食になってしまうからだ。そして結果的にブルームとセシリアを取りこぼす…。

ブルームとセシリアは今回のテストで2人の価値を印象付けることに成功した。




プリメラとフェリスの交際は順調だった。

ただ一つ気になるのは、フェリスはお金を持っていないらしい、という事。

いっつもお財布をスラれるし、忘れてくるし、奢ってくれるのは屋台メシばかり。

はぁー、別にお金はうちがお金持ちだから良いのだけれど、なんか釈然としない。貧乏なら貧乏だって言ってくれればいいのに。


「ねえ、フェリスのお家は貧乏なの?」

「な、なんで急に?」

「だっていつもお財布失くすでしょう? フェリスはそんなうっかり屋さんとは思えないの。もし、貧乏なのが恥ずかしくて嘘ついているなら苦しいかな?って思って…。本当のことを言って? 嫌ったりなんかしないから! ね? 嘘の方が辛いよ…」


「………………、ああ 本当はあまり裕福じゃない。プリメラの家はお金持ちだったから、知られたら交際も反対されるかと思って言えなかった。ごめんね」

「ううん、気にしないで! お金なら私が持っているもの大丈夫よ!」

「うん、有難うプリメラ。プリメラは天使だね、プリメラみたいな優しい人に出逢えて私は幸せだよ」

「私も幸せー!」



その夜 フェリスはある場所に来ていた。

「その後の守備はどう?」

「ディアナ様のご指示に従っております。恋人として親交を深め既に私に夢中でございます」

「貢いで喜ばせたりはしていないわね?」

「はい、毎回財布を落としたと言っております。ですが流石におかしいと思われまして…」

「バレたの?」

「彼女から私の実家が貧乏なのではないかと切り出されました」

「それで、なんと答えたの?」

「実はそうなのだとお答えたところ、お金なら自分が持っているから気にしなくていいと」

「あーっはっはっは、良い子じゃない! せいぜい貢がせてこっ酷く振るのよ、いいわね!」

「はい、ディアナ様」

「あなたの働きに免じて、お父様にあなたの実家も今度の事業に加えるように言っておくわね」

「有難き幸せにございます」

「下がって良いわ、また何かあれば報告なさい」

「承知致しました」



「ダン」

「はい、お嬢様」

「ハドソン伯爵家はどうなっているの?」

「はい、だいぶ資金繰りに困窮し方々から借金を重ねている状態です」

「そう、そろそろソフマン侯爵でも紹介してあげて頂戴」

「承知致しました」


わたくしに恥をかかせた事 今更後悔しても遅いのよ。

あなたには破滅して頂くわ。ふふふ



ベルナルドは父に呼び出されていた。

「ベルナルド、セシリア・ブライト伯爵令嬢を知っているか?」

「はい、知り合いと言うわけではありませんが、あのブルームの妹であるとは知っています」

「そうか、セシリア嬢と親しくなるよう努力しなさい」

「はっ!? どう言う意味ですか? 何故彼女と親しくなる必要があるのですか?

それに彼女はグラシオス・バーナーのお気に入りです。今更 割り込むのは難しいです!」

「グラシオスと親しいのか?」

「個人的な付き合いとは言えませんが、私よりは、挨拶を交わすほどには親しいです」

「まだその程度であればお前に乗り換えたとしてもおかしくあるまい。良いな、セシリア嬢と親しくなるのだ!」

詳細を知らされないまま納得がいかないが、取り敢えず「はい」と答えて自室に戻った。

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