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21、ラブラブ生活

「プリメラ、私の手を取って!」

「いや、プリメラ私の手を取るのだ!」

「プリメラ 君が本当に愛しているのは誰だ? 私だろう? さあ、一緒に来い!」

「プリメラ 私なら君を自由にさせてあげられるよ? 私を選んで!」


「あ〜ん みんなそれぞれ良いところがあって1人なんて選べな〜い!」


「プリメラ様、朝でございますよ、起きてくださいまし」

「アシュレイおーじー、私を選んでくれるのぉ〜?」

「………」

「嬉しい! 大好きおーじー! ちゅう」

「プリメラ様! いつまで寝惚けていらっしゃるのですか!」

ガバッと布団を捲られた。

布団を捲ったのは侍女のジェルマ。


ハドソン伯爵家はプリメラが小さい頃から激甘だった、10年前のある時 使用人の入れ替えが行われた。それはプリメラがノルティス・キグナスご令息にお茶会で非礼を働き、再教育を指示された。それまでの使用人はプリメラを甘やかして厳しくできなかった…いや プリメラにいいように振り回されてしまう、そこでハドソン伯爵も泣く泣くプリメラに厳しく出来る人材を見つけつけたのだ。最初反発も大きかったが、こればっかりはプリメラの好きにさせることは出来ない。バックにはワグナール公爵家がついているのだから。

ベテランのジェルマは泣いても怒っても癇癪を起こしても自分の仕事を貫いた。それから10年プリメラの侍女をしている。だからプリメラの夢想癖にも動じない。


「あん、夢だったの…。あー、私も夢みたいに誰かから思いっきり愛されたいー!!」

「馬鹿なことを仰らないでくださいまし。伯爵家のお嬢さんが誰と恋愛するのですか! 下手な男と懇意になったらその後の縁談に差し障りが出ます。旦那様に言ってご婚約者様をお作りになり、その方と恋愛なさったらいいでしょうに」

「ジェルマは分かってない! 私は運命の出会いをして小説になるような情熱的な愛を囁いて貰って相思相愛イチャラブをしたいの!!」


「はーーー、はいはい。まずは学園に行く支度をなさってください。顔も洗わずにステキな方とは出逢えませんでございましょう?」

「そうね、可愛くしていかなきゃ! あっ、ねえ トレヴィってお店で今度ドレスを作りたいわ。仕立て屋を呼んで頂戴」

「はい、承知致しました」

だが結果はトレヴィを呼ぶことは出来なかった。1年先まで予約でいっぱいだったからだ。

先日のセシリアのドレスみたいなものが欲しいと殺到しているらしい。



学園ではグラシオスに度々 勉強を見て貰っている。これっていい感じだよね?

「グラシオス様…長いからシオス様でもいいですか?」

「はっ? 駄目に決まってる。おい、もう終わったなら帰ってくれ。自分の事が出来なくて迷惑だ」

「えーーー! なんでそんな冷たい事言うんですか? ヒックヒック」

「はー、面倒だな、なら私が失礼する」

「えっ!? 嘘でしょう? 女の子が泣いているのに放置なんてあり得ない!!」

無視して帰ってしまった。


ちょっと待ってよ! こんなの違う! もっとイチャラブしたいのにー!!


やっぱりグラシオスはイマイチ好みじゃ無いかも…。私はもっとイチャラブしたいんだもん! 見つめ合ってキスして手を繋いで…うふふ。

なんで勉強しかしないのよ!!

ローレンか、行ってみる?


そこでローレンとの出逢いポイントへ行ってみた。

ローレンは裏庭にガゼボでいつも昼休みを過ごす。義姉ディアナのせいで人間不信なのだ。

常に人格・存在を否定されてきた為、仄暗い感情が育ってしまった。

それをヒロインの私が癒やしてヒロインにだけは心を開いていくのよねぇ〜。ただヒロインへの依存が強くすぐ『誰にも渡したく無い! 僕だけのものにしたい!!』と監禁したがるの。恋愛関係になってもヒロインが別の人に笑いかけると『僕を捨てるの? 僕以外の人を好きになっちゃったの?』ヤンデレ化が悪化していく。恋愛ラブラブな時はローレンって献身的で優しくて正に理想の王子様! アシュレイは忙しくて決められた時しか会えないけどローレンは何よりもプリメラを優先してくれる、そこが良いんだよねぇ〜。

ずーーーっとラブラブだったら良いんだもんね、よし! ローレン行ってみようー!!



ガゼボに行くとローレンがいた。

よしよし、近づくと女性の影が! ちょっと誰よ! プンスカ 顔を見てやろうと近づくとディアナ・シルヴェスタ! ローレンの義姉だった。 聞き耳を立てて近づくと高圧的な口調が聞こえてきた。

「いい? ロー分かったわね!」

「ディア もういいからやめて。早く戻らないと殿下が心配するよ?」

「ロー! ならこのまま帰るわ!」

「ディア、放って置いてくれ」

「……馬鹿!」


うんうん、ゲーム通り仲悪し。


「うわぁー、素敵なところ…こんなところがあったのねぇ〜。ここで本を読みながらうたた寝したら気持ち良さそう! うふふふ きゃっ!! ご、ごめんなさい。人がいると思わなくて……」

「………。別に私は失礼する」

「あら? どこか具合が悪いのですか?」

「どこも悪くない」

「でも 汗が…」

うんうん、いい感じ!!


「君は何故笑っているんだ? ああ、君は確か…。ふっ、君に関係ない」

「医務室へ行きましょう! 私があなたの気持ちに寄り添います!」

「余計なお世話だ」

ローレンは足がふらつき柱に手をついた。

「ほら、無理をしないで! 私が医務室へ連れて行ってあげる!!」

「要らない…はーはー」


「ロー!」

見ると先程去って行ったはずのディアナが戻ってきていた。

「ロー、準備が出来たわ。さあ一緒に帰りましょう!!」

「ディア、大丈夫だって言っただろう?」

「ローの大丈夫は信用できない。さあ、行くわよ! ヒルトン卿すみませんが馬車までお願いします」

「承知致しました」

ディアナの護衛に大人しく付き添われて歩き出す。

「待ってください! 嫌がる人を無理やりどこに連れていくのですか!!」


一旦止まり全員がプリメラを振り返った。

「あなたはどなた?」

「私はプリメラ・ハドソンです! 具合の悪いローレンさんをどこに連れていくのですか!」

「ローレンとはどう言う関係かしら?」

「関係などある訳ない、変なこと言うな。ディアが去った後ここに来たってだけ。もう行こう」

「そう。ハドソンさん、ローレンは具合が悪いから自宅に連れて帰るのよ。この子はいつも辛くても辛いって言えないの。だから多少強引にでも休ませないといけないのよ。では失礼するわね。 さ、参りましょう」


えっ!? えっ!? どう言うこと!?

ディアナとローレンは仲が良いの?悪いの? どっちなの!?




馬車の中ではローレンはガタガタ震えながら腕を組み必死に目を瞑って耐えている。

「ロー 辛いのでしょう? わたくしに寄りかかって良いのよ?」

「大丈夫だ」

「もう!」

ローレンの頭を無理やり自分の肩につけて体を抱きしめた。

「馬鹿、何をやってる!」

「良いから、寝ていなさい。着いたら起こしてあげるから」

「感染したら…はーはー。ディア…有難う」


プリメラには残念だが、ディアナとローレンの関係は良好だった。いや、寧ろローレンはディアナに恋心を持つほど仲の良い姉弟だった。シルヴェスタ公爵家はディアナ以外に兄弟がおらず、アシュレイの婚約者候補に選ばれた事から、早めに養子を取る話は出ていた。ディアナが5歳の時に打診され、内々に後継者候補を探し始めた。ディアナが8歳の時6歳でローレンはシルヴェスタ公爵家にやって来た。幼いローレンには侍女や侍従の1人もついてはいなかった。


ディアナも王妃教育で心細いローレンに構う余裕はなかった。

疲れてベッドで死んだように眠る日々。だがある時、シクシク泣く声が気になった。

怖かったが、声の正体を確かめずには安眠も出来ない。恐る恐る近づいていくと新しく弟になったローレンの部屋からだった。そっと扉を開けるとローレンはうなされていた。

なれない環境で頼れる者もいない中、体調を崩していたが、それを誰かに言うことも出来なかった。熱に浮かされ寂しさから元の家族が恋しくて仕方なかった。

「お母様、お母様…帰りたい、帰りたいよぉ〜。寂しいよ、怖いよ、帰りたい」


その心の声を聞いて初めてローレンが無理をしていたと気づいた。

ディアナは額に冷たいタオルを置いてローレンのベッドに潜り込み肩を抱いて寝た。

翌朝 目が覚めたローレンは面食らった。隣には義姉が寝ているのだから、しかも自分は義姉の腕枕で寝ていた。そう言えば寝付けなかった時 優しい声がして寝やすくなったのをなんとなく覚えている。


『お義姉様のお陰?』

「うう…んんー」

ローレンは慌てて寝たふりをした。

「熱は? まだ少し高いみたい。少しは眠れたかしら?」

ディアナはベッドから降りるとタオルを冷やし体を丁寧に拭いてくれる。あまりの衝撃で目を開けてしまった。

「目が覚めた? 着替えてしまいましょう? 気持ち悪いでしょう?」

そう言うと着替えを用意しローレンの服を脱がし体を拭いて新しい服を着せて頭にはタオルを乗せた。

「少し水分を摂りましょう、口を少し開けて」

「なんで優しくしてくれるんですか?」

「なんで? 具合の悪い弟がいたら面倒見るのが姉の役割よ? はい、あーん」

「あーん? あー」

「そう、良い子ね。ふふ わたくしもね具合が悪くなるとカーラがしてくれるの。ローレンにはまだ侍女がいなかったのね。わたくしが責任を持って面倒を見るわ!」

「でも…。忙しいのに…」

「ふふ わたくしもついでに休めるから丁度いいの!」


ディアナは思っていた人間とは違って公爵令嬢っぽいツンケンしたプライドの高い人間ではなかった。本当に自身が忙しく僕に会う余裕がなかっただけなのだ。

それからもディアナは忙しくしていたが、夜眠るといつの間にか隣に寝ていた。そしてベッドの中では手を握ってくれていた。ゆっくり会話する時間はなかったけど、その温もりは確かにローレンの心を優しく包んでくれていた。休みの時間や食事の時間、顔を合わせるとたわいもない話をするようになった。姉弟と言う関係を穏やかな時間の中で育み、信頼関係を築き、ロー、ディアと呼び合う仲になっていた。



プリメラはそれを知らない。

今のローレンにヤンデレ要素はない、ただのシスコンだった。



「ローレン! お元気になられて良かったですね! 私 心配していたんですよ!」

「君に呼び捨てにされる謂れはない。話しかけないでくれ、迷惑だ」

「もうー! どうして自分の殻に閉じこもるの! 世界はローレンが思っているより優しいよ? 勇気を出して! ね! 私が一緒にいてあげるから大丈夫! 信じて!!」


「寝言は寝て言え。警告はした、二度と話しかけるな。次は不敬を問う」

「どうして! ローレンの孤独を癒せるのは私だけなのに!! 自分から不幸にならないで!! 私がそばにいるから!」

「言葉が通じないのか!? 迷惑だ」

「私知ってるよ? 小さい頃からディアナに虐められてきたんでしょ? だから人を信じるのが怖いんだよね? 怖くない、怖くないよ? 人を信じられれば世界が広がる、私はローレンの世界を広げてあげたいの!!」

「ふざけるな!! お前の事は正式に抗議する! ディアナに私が虐められただと!? ありもしない話でディアナ…姉上を貶めた償いをさせてやる!!」


「うわぁー! 聞きしに勝るヤバい女なんだね」

「ローレンのシスコンは仲間内では有名な話なのに、妄想もここまで来ると病気だね」

「ダグラスか、変なところで茶化すな。行くぞ」

「ノルティスの言っていた通りだな、身の程知らずのおバカ姫。まじウケる」


ローレンと友人のダグラスたちは行ってしまった。

はっ!? おバカ姫って何? 誰のことよ!! えーーー! わたしーーーーー!?


家に帰るまでもなく、父親からめちゃくちゃ怒られた。

まずは手紙で、その後 家で、私に激甘のお父様でさえ、顔を真っ赤にして激怒ぷんぷん丸してた。

なんでじゃ! まじキュン設定どこ行った!?

お父様とお母様からはローレンって呼び捨て禁止と接近禁止を言い渡された。


「どうして? それじゃ恋愛出来ないじゃない!!」

「何を馬鹿なことを言っているのだ! ローレン殿は既にご婚約者様がいる。今更なんで眼中にもないお前と恋愛すると言うのだ、馬鹿なことを言っているんじゃない!」

「はっ? 誰が婚約? ローレンって婚約してるのー!!」

あっちょんぶりけだ。

「お前ねー、本当に好きな人なら少しは調べるだろう。はーー、お父様がお前に見合う男を見つけてやるから大人しくしていなさい、いいね!」


嘘だ、嘘よ! ローレンはゲームでは婚約していなかったー!!

どうなってんのよーー!!

私が攻略者の誰とも恋愛関係になっていない、ううん 親しくもなっていないから悪役令嬢の出番もない。

えーーー! どうしよう、なんか色々と違ってる!

ねえ、私ってこの世界のヒロインだよねー? ヒロインでしょう? ヒロインだって言ってよ! 

私のラブラブはどこへ行くの?


ここへ来てプリメラはゲームの世界から大幅にズレてしまっていることに気がついたのだった。

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