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19、社交界デビュー−2

会場にセシリアとブルームが現れた瞬間、どよめきが起きた。

まず目を引いたのは揃いの服にだ。

ブルームは有名人で皆が注目をしている。ブルームは185cmと言う高身長に鍛えられた肉体にフィットする装いでスタイルの良さが際立つ。並び立つセシリアも可憐でいて163cmと女性にしては高身長にヒールを履いているので、2人とも群を抜いて目立つ。セシリアは細いだけではなく鍛えられた肉体を持ち、佇まいは凛としている。それでいて見つめ合う視線は甘やかで色気もあった。


『美しい2人だこと』

『ええ、本当に…、まるで百合かカトレアかと言うほど目を惹きますわね』

『女性の高身長も嫌味ではないな』

『はぁ〜、今宵のブルーム様も艶やかで凛々しく麗しいわぁ〜!!』


セシリアはダンスを習う様になってから姿勢や指先を意識する様になって、昔を思い出した。望愛の通っていた中学校の体育教師が授業にバレエを取り入れていたのだ。男女共に準備運動がてら『1番、2番、3番…』それを何となく思い出しながら、自室で体を動かしていた。何も考えずにただ姿勢を正し、お腹を引っ込め胸を張り肩を張る、足を上げもう少し、あと少し、腕が下がってる、優雅に、美しく、エレガントに 指先まで集中! 先生の言葉を頭の中で繰り返しながら体を動かしていた。今も猫背になると『しまった!』とこれらの動作を繰り返す。本格的に習ったわけではないが、こうして転生した今も続けられる事が嬉しく有難かった。剣を持ったり弓を持ったりすると利き手と違う方で筋肉のつき方が違い、バランスが悪くなる。だからバレエ以外でも左右両方を鍛える癖がついてしまった。


バレエの型を踊る様になってから、ダンスも剣術も弓術も相乗効果で良い結果に結びついた様にも思う。バレエも獣医も前世で培ったものだ、それが今を形成していると思うと、生きていると感じられて嬉しかった。偶に自分は昏睡状態で夢を見ているのではないかと思う事があるのだ。



フロアを優雅なダンスで魅了する2人、その姿勢にダンスに笑顔に装いに美しさに人の目を惹きつける。


「お兄様とこうして踊れるなんて夢みたい、すごくその衣装もお似合いよ」

「ふふ 有難う。私は衣装のことはよく分からないが、セシに恥をかかせないで済んだのなら良かった」


そう、最近のブルームの着る服は全てセシリアが用意している。

セシリアもまじキュンのユーザー、ブルームの設定がダサくて冴えないストーカーと知っている。ブラコンセシリアは屋台、レストラン、屋敷の後、トレヴィも作った。

トレヴィでは前世でのゼクシ◯みたいな雑誌や、お宝づかからパクリんちょ。

病院の待合室には様々な雑誌を置いている。雇っていた人が結婚雑誌や歌劇団雑誌を見るのが大好きで置いていた。彼女は結婚を控えているわけではない。いざという時の為に、どう言う結婚を望んむか予算はどれ位か、流行や好みをチェックしているらしい。動物関連や料理関連なども置いてあり雑誌は多岐にわたるが、彼女の結婚に対する熱意を休憩中によく聞いていたのだ、その中にドレスについても入っていた。だからポイントを押さえる事ができた、そしてそれはこの社交界で受け入れられた。


お兄様はこんなにも素敵なのに何故あんなモッサイ男として登場していたのかしら?

許し難い! パーフェクト人間なのに!!

二度とお兄様をダサいなんて言わせない!!

私がお兄様を守ってみせる!



『ちょっと! ちょっと! アレは誰!? アシュレイより、ベルナルドより、ローレンより、グラシオスより素敵じゃない!! 誰? 誰? 誰!!!

しかも あの女は誰? あんな2人ゲームに出てこなかった!! 何何何何!? 隠しキャラとか? それとも移植? 何なのよー!! 攻略者より目立つ2人って何なの!?』



「お兄様、絶対に絶対にプリメラだけは駄目ですからね! お兄様には優しくて可愛くてお兄様の事だけを大切にしてくれる素敵な女性と幸せになって欲しいのです!」

「ぷはっ! 有難うセシ。でもまだ結婚なんて考えられないな、セシに素敵な人を見つけるまではね」

「まあ、お兄様は今や時の人。魔獣より恐ろしい目で令嬢や利用しようとするおじさまたちに狙われていますのよ?」

「くっくっく んー、でもデビューしたセシは、私よりも狙われる。うちは大した後ろ盾もない。セシを守れるか不安なんだよ」

「そうですわね。わたくしが身を隠してしまったらお兄様にご迷惑がかかってしまうのね。はぁー、貴族って厄介だわね」

「全くだ。セシ これからが本番だ。セシを狙う輩がたくさん出てくる。権力を振るわれれば太刀打ちできない事もある。何か手を打たなければな」

「うふふ お兄様にお任せしますね、でも 意に沿わない相手なら病気を装おうかしら?」



フロアから戻ってくると話しかけようと虎視眈々と狙っている。

2人は顔を上げるとある場所に向かう。

「「ご無沙汰しております」」

「ええ、セシリア おめでとう! ああ、なんて美しいのでしょう!」

「有難うございます エレン様。エレン様もとてもお美しいです」

「おめでとうセシリア」

「有難うございます、ブルーベル侯爵」


そう、迎えてくれたのはブルーベル侯爵一家。

そこにはセシリアたちの父ブライト伯爵もいる。

「セシリアおめでとう」

「有難うございます、ヨハン様」

「ブルーム、セシリア、紹介が未だだっただろう。妻のサフィリアだ」

「セシリア様 デビューおめでとうございます。ブルーム様もご活躍はかねがね伺っておりますわ。お会い出来て嬉しく存じます」

「有難う存じます。ブルーム・ブライトでございます。ヨハン様には何かとお世話になっており感謝しております。今後とも宜しくお願い致します」

「有難うございます。セシリア・ブライトでございます。以後お見知り置きくださいませ」

「こちらこそ、どうぞよろしくね」

「ブルーム、セシリア、おめでとう。私の妻も紹介するよ。妻のマーシャルだ」

「ブルーム様、セシリア様、おめでとうございます。ローハンの妻のマーシャルです、宜しくお願いしますわ」

「マーシャル様、ブルーム・ブライトでございます。宜しくお願い申し上げます」

「マーシャル様、セシリア・ブライトでございます。以後お見知り置きくださいませ」

「ブルーム、セシリア、おめでとう! 私の夫も紹介するわね、カリオスよ」

「ブルーム殿、セシリア嬢 おめでとう。アリエルの夫のカリオス・ロンダートンです。お話はアリエルからよく聞いています。お会いできて嬉しいです」

「ブルーム・ブライトでございます。お会い出来て光栄です」

「こちらこそご丁寧に有難うございます。セシリア・ブライトでございます。ブルーベル侯爵家の皆様には本当にお世話になっております、わたくし共 家族にとってブルーベル侯爵家の皆様は恩人でございます、お会い出来たことは一生の宝と刻んでおります。ですが…、わたくし 自分でもお転婆だったと自覚しております、侯爵家の皆さんの口から語られるものがあまり恥ずかしい話ではないと良いのですが…」

「ふふふ、確かに こんな素敵なレディが…くっくっく、失礼、是非 人の目のない所で仮面をとって、アリエルたちと自由に話したいものですね」

「アリエル様、あまり正直に話されると今後 淑女の仮面が被れなくなってしまいますわ」

「大丈夫よ、わたくしもカリオスには素の自分を見せているから、ふふ」

「仲が宜しいようでよろしゅうございます アリエル様」

「ええ」


「ブルーム、セシリアおめでとう!」

「ルシアン様、有難うございます」

「ご無沙汰しておりますルシアン様」

「そうだな、でもこれからは王都で会えるね」

「左様でございますね」


「さて、これだけ美しいセシリアを1人にしてしまってはすぐに狙われてしまうな、セシリア久しぶりに1曲踊って頂けますか?」

「ローハンお兄様踊ってくださるのですか?」

両手を口の前で合わせて嬉しそうに顔を綻ばせるセシリア。

「勿論だよ、今後は私の方こそ相手にしてもらえなさそうだからね、今のうちに予約をしておかなくちゃ。さあ、お手をどうぞ?」

「はい!」


戻ってくると今度はヨハンが踊ってくれた、ブルーベル侯爵も、その後もアリエルやエレンの旦那様たちも踊る事でセシリアを守ってくれた。ブルームもアリエルやエレン、ヨハンやローハンの妻たちと踊り乗り切った。



プリメラは父親と踊ったあとは誰とも踊っていなかった。アシュレイ王子殿下の周りを彷徨いても護衛が多く近づけない、ベルナルドは次から次へと相手を変えて踊っていて沢山の女性たちが順番待ちしている、今更並んでも今日中に踊れるか微妙であった。グラシオスは見つけられない、どこに行った? ローレンはディアナと踊ったあとは数人の女性と踊っている。


こんな筈じゃなかったのに…。

さっきのイケメンは誰だったのかしら?


ご婦人の噂話をゲットしにシャンパン片手に聞き耳を立てる。

『ああなんて素敵なのかしらぁ〜』

『今回もトレヴィでお仕立てになったのね、センスがいいわね』

だーかーらー! 名前よ! 名前! どこの誰なのよ!!


『銀竜様はまだお相手がいないのでしょう? 先日マルゴット侯爵のアナスタシア様がお誘いになったって聞いたわ』

『ああ、私も伺いましたわ。でもそれだけではなくセヴィリール公爵のタフィナ様もってお話しよ!』

『あらあなた達、ここだけの話、ルクレツィア王女殿下もだってお話しよ?』

『えーー!! だって銀竜様は素敵だけど継承されるのは伯爵位でしょう? それはいくら何でもあり得ないわよ!!』

『でも王女殿下に泣きつかれて、あり得無くもないとか…。銀竜様は文武両道でどちらもお出来になるから、騎士で手柄を立てさせるか、文官で役職を与えるかって話よ!』

『はぁー、私たちには眺めるしか出来ないのねぇ〜、日毎に手の届かない存在になっていくわぁ〜』

『ダンスを踊る事でさえ難しいのですもの、残念ねぇ〜』


ふむふむふむ、あのイケメンは銀竜とかって呼ばれてるのね、銀髪だから? 安直ね。

んーーーーーー、ないな。私は楽しい恋愛がしたいのに、そんなに高位貴族のライバルが多いモブとかに時間使ってる場合じゃない! 攻略対象者であれば弱点? 攻略ポイントが分かってるんだから簡単な筈! 4人の中で選ぶとすれば…アシュレイかな〜? ベルナルドはないな、女好きとかって苦労する未来しか見えない。あー、でもアシュレイも婚約者付きかー。えー、ローレンかグラシオスしかいないじゃん!

ローレンって少しヤンデレくさいんだよなー。過去のトラウマってやつで。


くっそ! グラシオスしかないか! まさかの一択!? 根暗のガリ勉とイチャラブ出来んのかーい!

でもグラシオスは侯爵家だし、宰相候補だから貧乏は回避出来るか! よし、グラシオスに目標設定!黒紫色の髪で肩くらいの長さのモノクルで神経質そう、でも好感度が上がるとデレてくれるんだよなぁ〜。濃い目のデレでお願いします! 図書館に通い詰めるぞー!!


「あの、私とダンスを踊って頂けませんか?」

え? 誰? 私だよね?

「ええ、勿論です」

いえーい! お父様とだけじゃ寂しすぎるもんね!

普通クラスの普通、超平凡くん、でも目の付け所はいいよ!


ダンスも普通だな。

「お名前を伺っても?」

「ああ、私はロバート・ボーンです」

「私の事を知っていたのですか?」

「いえ、…誰とも踊っていないみたいだったので、受けてくれるかなって思いました」

えー! そこは綺麗な人だなと思って見ていた、で良くない!?

「私はプリメラ・ハドソンです。今日は偶々なんですから…」

「何がですか?」

「今日は偶々誰も誘ってくれなかっただけ! いつもなら列をなしてるんだから!」

「へ? 今日がデビュタントでは?」

カァ〜!! 真っ赤になる。

「…言い間違いです。いつもなら…じゃなくて本来なら、です!」

「ああ、なるほど…でしょうね、うん、可愛い方が僕の相手をしてくださり光栄です」

そうよ、それそれ! それでいいのよ!


それからも普通のダンスをして終わった。

よし! これを皮切りにジャンジャン申し込みに来る筈!

……そう 上手くはいかなかった。


ま、こんなこともあるよね? それにしても生徒会の人とか声かけてくれてもよくない?

見回すが…いた!! 隣に女の影…あー、特定の女性や男性がいる訳ね、けっ。腐ってもエリート集団なんだもんね、婚約者くらいいるか!

シングル男子はどこ行った? 死滅か? 

むむむ 視線の方向を見るとイケメン銀竜くんの横にいる女の人に釘付け〜、ってお似合いすぎ!!めっちゃイチャラブしてるー! はぁー、割り込めんでしょ、あれは。うわっ!今、頭にキスしたー! アレよ、アレ! 私が求める、糖分多めのイチャラブは!! よし、俄然やる気出てきた!

今度はロバート以外とも踊れるように頑張るぞー!!


セシリアは最後はブライト伯爵とダンスを踊った。

「あのお転婆がこんな素敵なレディになるとは月日が経つのは早いものだな」

「お父様、わたくし 変な娘でしたわよね、ごめんなさい」

「いや、私こそ自由にのびのびとなんて言って、ブルーベル侯爵の元で様々な知識をつけて成長していく姿を見て、反省したよ。私は自由に育てたのではなく、ただ放任していたのだと、すまなかった。必要なものを与えてやれなかったのに自力でこんなに立派になってくれて…今日はおめでとう」

「お父様、わたくしはブライト家の娘で幸せです。お父様は放任ではなくわたくしを信じて下さっていたんだって分かっています。お父様、大好きです!」

「そうか…うん、お父様も愛しているよ」


こうして社交界デビューは恙無く終わった。

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