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神と魔王の弟子は魔法使い 〜神喰いの継承者〜  作者: ルド
第5章 弟子の魔法使いは世界を彼らと共に守り抜く(掟破りの主人公大集結編!!)。
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第89話 異世界の来訪者たち 龍崎刃編(弟子の秘密は祖父が握っていた)。

 刃の自宅である魔法の寺の庭で……。

 イベントで来ていた子供たちや保護者も帰った頃……。


「平和とは……なんだろうな」

「争いのない世界のことじゃろうな。かつてのワシが目指したものじゃ」


 こんな暑い中でも池の中で泳いでいる鯉や飛び回っている小鳥を見て呟く青年。暑いので夏用のシャツ姿である。

 そんな彼の後ろ姿を見ながら置いているお茶を啜る祖父の龍崎鉄。和服の格好してサングラスを掛けていた。


「じゃ、この世界は平和か?」

「どうじゃろうな。平和でもあるが、争いは絶えとらんからのぉ」

「こんなにも平和そうなのにか?」


 刃や師匠であるジークも知らない中で、その二人は対面していた。


「難しいのじゃ。だからワシは神に頼ろうとして……見放された」

「だから魔神の甘い囁きに耳を貸したってわけか。で、その成果はあったか?」

「見ての通りじゃよ。大失敗した挙句、魂ごとこの世界へ追放された。お主らの母(・・・・・)によってな」

「……」


 老人の言葉を聞いた彼はいったいどんな表情しているか。

 背を向けているので顔は見えない。魔力、感情の気配も一切変化していないが……。


「なら死んで正解だったか? どちらも」

「ワシはどうじゃろうな。だが、追放するなら『アレ』もちゃんと処分して欲しかったがのぉ……」


 アレ……その単語に初めて青年が振り返った。その表情に怒りや憎しみはなかった。


「魔神のオレが言うのなんだが、よく作れたな。あんな世界の異物を」

「アレは鬼神復活の際の副産物じゃ。……鬼神が魔王となって復活した日、世界はジーク・スカルスの魔力で満たされていたが、不完全な状態だった為にかなり暴走していてのぉ」


 懐かしそうに思い返す。ジークの魔力を利用しようと計画していたが、向こう側が先に暴走させたのは予想外であった。かなり計画急ぐ事になったが、どうにか魔王となって鬼神デア・イグスは復活した。


 そこまではよかった。

 問題はその後である。突如異物が誕生した。


「アレは言うなら『暴食の塊(ケダモノ)』じゃ。しかもかなりの舌に煩いヤツでそこら辺の血肉では絶対満足せん。生まれた時は赤子レベルじゃったが、隙があれば魔王にも喰い付かん勢いじゃったから戦力としてカウントせず、ずっと封印してワシの空間へ置いておいたが……それが不味かったのぉ」


 当時の神は知らなかった。

 まさか処分した筈の肉体から飛び出して、封印されたまま『アレ』が老人と一緒に転生していたとは……。


「神の力でも消し切れなかったのか」

「異変に気付いたのはこちらに転生して随分後じゃ。罪として淡々と生きていたワシにも新しい妻が出来て娘が生まれた。二人とも本気で愛したわ。妻の方には先に逝かれてしまったが、せめて娘の幸せは見届けたかった」


 だが、その願いも彼と一緒に転生していた『アレ』によって喰い潰されるとは、この時は少しも思っていなかった。


「娘も魔法使いとなったが、どういうわけか魔力を練るのが不慣れで上級魔法が使えなくてのぉ。ワシは全然気にしなかったが、娘は結構気にして家の魔法を継承出来ないと泣いた事もあった。……じゃが、それは全部アレの所為じゃった」


 魔力が不慣れで上級魔法が使えない。それはまるで孫である彼と同じ。


「気付いたのは孫が生まれた時じゃ。アレは上手く隠れておったが、ワシは孫を抱いた時、確かにアレと目があった」


 そこから全てを悟った。

 アレは一緒に転生してずっと眠っていた事を。

 今まで娘が不調だったのはヤツが密かに喰っていたから……異世界の魔力を宿していた娘の魔力を。

 そして散々喰い尽くして飽きたか。孫の刃が生まれる瞬間、ヤツは刃の方へ乗り移っていた。


「娘が死んだのは無理な出産だけが原因ではない。アレがずっと娘の中で生きていたからじゃ」

「そこまで理解しているなら何故放置する? 大事な孫なら真っ先に対処すべきだろ?」


 なのに何年も放置した。その訳とは……


「簡単な話じゃ。今のワシではアレは殺せん。たとえ転生前だとしても不可能じゃろう。神の力ですらどうにもならんかった存在じゃ。ジークの小僧でも難しいじゃろうが、頼れるのは彼奴しか居らんかった」

「なるほど、やはりアイツの転移は意図的だったか。その結果進行が早まったようだが、こっちに残したままだったら制御する機会なく母親と同じ未来を辿っていたか」


 消せないのなら制御する可能性に賭けるしかない。

 龍崎鉄の葛藤は凄まじかった筈だが、言葉からは全く感じさせない。


「失敗したのならワシは今度こそ全てを諦めよう。刃は……ワシの最後の希望じゃよ」

「そうか……だったら魔神のオレ様も決断しないといけないな」


 そう呟いた彼の視線はいつの間にか学園の方へと向いていた。




 他の階層で師匠や仲間たちの決着が付いている中……


「アアアアアアアアアアッ!」

『ガアアアアアアアアアッ!』


 数分間、殴り合いが続いていた。元の体じゃなかったら絶対無理だ。普通だったら龍の拳で頑丈な方の俺でも壊れているが……。


「時間が……無いんだよッ!」

『我とて……貴様らに掛ける時間などない!』


 俺も魔王もかなりボロボロであるが、少しも緩めず攻め続けると……次第に流れが変わった。


「『獅子・業(シシ・ゴウ)』!」

『──っ!』


 相手の攻撃を紙一重で交わした上でのカウンターの裏拳。衝撃波を与える一撃だ。


『グッ……!?』


 その一発が相手の頭部へ衝撃を与えて動きを乱した。

 ようやく見つけた。チャンスだ。


「『速攻召喚──アステル』!」

『え、ジン……その姿』

『ム、白の龍族か!』


 召喚された白龍のアステルが驚きの声を出す。それはそうか。この姿になるのは異世界以来だしな。

 警戒している魔王が攻撃して来ないうちに用件を済ませよう。


「悪いけど時間が惜しい。力を貸してくれアステル!」

『……!』


 手順無視の速攻召喚だと一分も維持出来ない。

 承知と頷いたアステルが青白きブレスを──俺にぶつけた。


第二権能(セカンド)『同化』!」


 アステルの『ホワイト・ブレス』の魔力を体に取り込む。

 すると全身から白きオーラが発生。見えないが、髪や瞳も白く輝いている筈だ。


『がんばって』

「勿論だ!」


 アステルの召喚が終わって姿が消える。


「これで決める。来い──『継承された神ノ刃(イクス・セイバー)』!」


 さらに此処で奥の手である『神ノ刃(セイバー)』を空間から手首へ装備する。


「フン!」

『グッ!』


 最高位の聖剣の一閃。加えたアステルの白きオーラによって破壊力も上がっていた。

 

「改式『雷鳴・狼牙(ライメイ・ロウガ)』!」


 雷の狼のような斬撃が魔王の首に噛み付いた。


『こんなもので……!』

「『聖の支配者(サンクチュアリ)』、『聖ノ斬刃(バニッシュ)』!」


 刃に埋め込まれたSランク『聖属性』の魔石を解放。聖なる斬撃で魔王を追い詰めるが……


『うぐ……ッ、倒される……ものかァアアアアアッ!』

「──!」


 感情を爆発させた魔王。黄金の稲妻を纏った手が迫って来るが……


「私をお忘れですか?」


暗闇に潜む黒き蝶(ダーク・バタフライ)


『ぬっ!』


 闇系統の精霊魔法。真っ黒な蝶の群れが俺と魔王の間に入って奴の攻撃と視界を妨害した。

 ずっと参戦してなかったが、どうやら魔力が完全に溜まったようだ。けど大丈夫なのかそれは……


「おい、マドカ!」

「死にたくなければ離れなさい!『地獄界へ招く死の女神(ヘラ・ジ・ワールド)』!」


 今度は死系統の精霊魔法。扱いが極めて難しい巨大で真っ黒な女神が召喚される。

 触れるだけで対象の肉を朽ちさせて滅ぼしてしまう禁忌の魔法。父親の『死の阿修羅』と同様の滅びのチカラが魔王を覆い尽くした。


『この力は……ギィィィアアアアアアッ!?』

「はい、滅びの力です。死系統の奥義で貴方を完全に消滅させます!」

『ただの妖精族の小娘が……そんなバカな……グ、アアアアアアアアアアアッ!』


 ただの妖精族じゃない。これがマドカの本気だ。その証拠に纏っていた『死滅を呼ぶ魔王の娘(タナトス)』も解除されて、顔色が普段よりも真っ白になっていた。早く休ませないと危ないぞ。


「そのまま押さえていろ。マドカ!」

「ハァハァ……分かってます!」


 素早く銀銃を取り出す。『神ノ刃(セイバー)』と重ねてスキルを発動。


第三権能(サード)原初融合オリジン・フュージョン』!」


 武器同士の融合化。すると銀銃『魔導王の銀銃(マギア・カスタム)』が『神ノ刃(セイバー)』に取り込まれる。眩いほどの光を放ち。……次第にその姿を現した。


「『魔導王ノ神銃マギア・イクス・キャノン』」


 銃口が大きい長めの白金色の銃が装着された。

 手が触れる部分に大きめの引き金が付いて、スコープも搭載されたそれを女神が抑えている魔王に照準を合わせた。


「終わりだ。黄金の神獣──《《シャドウ》》」

『キ、キサマラァァアアアアアアアアアアッッ!!!!』


 最後に残っていたAランクの弾丸に『神ノ刃(セイバー)』とアステルの魔力を込めた。



「トドメだ! ──『白龍・神ノ十閃光ホーリー・イクスクロス・バースト』!!」



 特大な十字の白き輝きの光線が銃口から発射された。

 女神に抑えられても魔王は障壁を出そうとするが、死系統の魔法を甘く見ていた。展開されようとする端から女神の死のオーラが侵食して、迫って来る攻撃を前に彼は完全に無防備であった。


『あり得ないあり得ないっ! こ、こんなところで……我がっ! こんなところでぇぇええええええええええッッ!』


 再び勝敗が覆る事はなかった。

 絶望の雄叫びを上げて魔王は光に飲まれて消滅した。

 あっさり終わった感じがしますが、これで魔王戦は決着となります。

 あと刃の中に潜んでいるモノの正体がだいぶ明らかになりました。もし母親の死の真実を知ったらどうなるか……悪堕ちのルートが結構多い。


 次回で本当に決着となります。

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