表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神と魔王の弟子は魔法使い 〜神喰いの継承者〜  作者: ルド
第1章 弟子の魔法使いは魔法学校を受験する(普通科だけど)
7/103

第6話 異常事態の発覚(弟子はテンプレを睨んだ)。

「よし、設置完了! ニーズヘッグ、グリフォンの邪悪(イービル)化もオッケーだ」


 彼女は依頼通り、パニックを巻き起こす準備を整えつつあった。

 最後の仕上げも順調で、禁術の魔法陣も描き終えていた。

 そして、その中心に物を置く。もう一つの物は別の場所に設置しており、遠隔で同時に起動が可能にしてある。


「よし、あとは禁術でアイツら呼び起こせば、ん? なになに、メール?」


 しかし、そこで思わぬ事態がここで発生する。

 いや、そこまで厄介な事ではないが、突然スマホから届いた連絡メッセージを見て目が点なった。


「ええとー? 始末する奴らに神崎家の息子も指定してくれ? え、どういうこと?」


 意味が分からないと初めに思った。

 結局本人に聞くのが手っ取り早いと、嫌々であるが、電話をしてみると……。


「え、ゴメン。神崎家の息子って言われても聞いてないし、そもそも誰のことか分からないんだけど……」


 ホント意味不明だと彼女は口にするが、返ってきたのは一方的な発言で、「写真付きのデータあるっ! いいから、貴様は依頼通りに()れっ!」的な何様というような物言いであったが……。


「あれ? この子って……」


 うんざりしながら届いた写真データを開いて見る。登校中の写真だろうか、学生服を着た憂鬱そうで根暗な雰囲気の少年が写っていたが……。


「んんん? 誰だっけ?」


 見覚えのある顔付きだったが、印象が違い過ぎった所為か、コテンと小首を傾げるだけに終わった。





「久々に帰って来たかと思えば、随分騒いでいるようだな? 見たことがないほど堂々としている。何か心境の変化でもあったか」

「一応言っておきますが、騒いだのは尊とあの佐野って人ですよ? 俺は寧ろ止めた立場です」


 あの騒動の後、親父は周囲に謝罪をしつつ改めて新年の挨拶をした。

 多少の戸惑いの声や反応はあったが、そこは当主の手腕と言える。あと他の面々もフォローしてくれたお陰で、無事に昼食会まで話は進んだのだが……。


 いきなり別室に呼び出されて、二人っきりになってしまった。

 いや、話があったので時間を作ってくれて感謝はしているが……苦手意識というか、親父と二人っきりの状態が非常に居心地が悪かった。……影でマドカが隠れているが、それはノーカンで。失礼なくらい忘れそうだから。


桜香(おうか)はともかく緋奈(ひな)が居なかったのは意外だ。」

「二人とも別の用事だ。この時期は何かと騒がしいのでな」

「なるほど」


 ──任務か。お偉いさんとの挨拶かと思ったが、親父の反応からその可能性を捨てる。雰囲気が微かに父親のそれから警務部隊の隊長の顔付きになったので、まず間違いない。


 あと関係ないが、部屋には桜香の両親と神崎家の祖父も祖母も来ていた。桜香の両親とは顔見知りであるが、アレ以来気まずくなって連絡も返していない。

 桜香の件でわざわざ向こう側から真摯な謝罪を受けたが、臆病だった俺は怖くて顔も出していない。

 代わりにジィちゃんとは意外と仲が良いらしい。そもそも恨んでおらず、白坂の誠心誠意な謝罪を素直に受け取ったそうだ。手紙でもいいから連絡を取らんかと、言われた際にその話を聞かされた。


 ただし、神崎家の祖父祖母……特に祖父の方とは険悪の関係なので、そっちの方はジィちゃんには禁句である。

 まぁ、亡くなった母の件や孫の俺の事もあって、元々昔から険悪だったのが余計に悪化したのは俺でも知っている。

 さらに言うと親父と母の結婚の際にも、ジィちゃんも向こうも最後まで大反対だったらしく、それもあって神崎家の祖父とはあまり仲良くしてくれた記憶がなかった。妹には溺愛していたみたいだが……。


「それで? 要件はなんだ? まさか今になって家族の顔が見たくなったとは言うまい」

()家族な。あり得ない可能性をわざわざ口にするなよ」

「だろうな。でなければ、5年も龍崎家で引き籠っていたお前がこんな目立つ真似をする訳がない」

「言ってくれる。まぁ事実だから否定する気もない。重要な要件でもなければ一生帰ってくることもなかった」


 こちらから関わる気なんてない。何か事情があるようだが、さっさと終わらせたいのは一緒なので早速要件に移った。


「カードを、持っているなら返して欲しい」

「カード? 何のことだ?」

「魔法使いの証明証のカードだよ。部屋になかったからアンタが持ってるんじゃないのか?」


 伝えると親父は首を傾げる。

 まさか、本当に紛失しているだけか? 嫌々ここまで来て、面倒な再発行しないとマズイのかと、想像して頭が痛くなりそうだが。


「あのカードか、確かにそれなら私が持っているが……」

「って持ってるのかよ! 紛らわしいリアクションをするな!」

「何も言ってないだろう。いきなりカードと言われて戸惑ったのは私だ。ちゃんと何のカードかを先に言わないでどうする?」

「い、言ってないけど、俺が持ってたカードなんて、それくらいしかないだろう?」


 当時外で買い物なんてしなかったから、クレジットなんて当然持ってなかった。

 他のカードなんて学生証くらいなので、そんなに深く考える程ではないと思ったが……親父のリアクションはどうやら別の方向だったらしい。


「私が疑問に思ったのはお前の動機だ。今さらどうしてカードを求める? まさかまた目指そうとしているのか?」


 目指す? ああ、親父たちのようにってことか。

 確かにかつては認められたくて死に物狂いで目指していた。子供らしい事を徹底的に切り捨てて、プロの魔法使いになろうと、追い出されるまで修業を続けたが……。


「その話は無理だと言った筈だ。どんな心境の変化があったかは知らないが、魔力が不足しているお前のままでは、これ以上ランクを上げる事はふ──「不可能」う……」

「……それくらい分かってる」


 何かを目指しているのは事実だが、目指している先はもう昔とは違う。

 親父たちはきっと失望するだろうが、もう関係ない。俺は……。



「俺が目指す道は、俺に可能性を示してくれた人たちの気持ちに応えること。師匠たちへの想いを果たす為に、俺は───此処に帰って来た」



 実際まだ先は曇っているままだが、それでも第一歩はやはり魔法学園。

 それをクリアするにはどうしても証明証が必要なんだ。……ジィちゃんに言われるまで知らなかったけど。


 ……って、よく考えると親に対して、こんなに反抗的な発言をしたの初めてかもしれない。

 生まれは名家の長男だけど、才能が壊滅的だからよく縮こまっていたことが多かったし、エリートな魔法の教育係の人達を何人も無駄にした事もあった。

 後になって初めての息子(元)の言い返しだから、大広間の件もあってキレるかイラついた顔でもされるかと思ったが……。


「師匠……だと?」


 親父が食い付いたのは、俺が口にした単語の一つだった。

 全然予想してしなかったようで、珍しく驚愕の顔をして目をぱちくりさせて問いかけてくる。


「師匠とは誰だ? 聞いてないぞ? いったいいつの間にそんな者と……」


 信じられないといった顔で尋ねてくるが、そこで思わぬ邪魔が入る。


「っ……なんだ」


 今度は本当にイラッとした顔で、突然鳴り出したテーブルのスマホに手を伸ばす。

 このタイミングなので俺も驚いたが、寧ろナイスタイミングだと内心感謝。色々と言えない事が多いが、師匠たちの事を答えるのは特別面倒なので、今のうちに話題を変えるか堅物の親父からのカードの入手方法を考えようとしたが……。


「緋奈? もしもし、どうかした?」


 なんと掛かってきたのは娘の緋奈。つまり俺の妹らしい。

 不思議そうに訝しげに電話に出る。珍しく焦っているのか、こちらからでも聞こえるくらいの音量で叫ぶから親父が辛そうに耳を離した、その時だ。



『大変ですお父様っ! ダメージ・管理センターから緊急連絡ですっ! 何者かの侵入を受けて警備隊がほぼ全滅っ! 付近の二箇所から桁外れな瘴気な魔力反応が───』



 ドッドドドドンッーーー!!!! っと音が通話先と、そして外から鳴り響いた。

 同時に激しい地響きが爆音と共に発生。大地震かと慌てるくらいの衝撃で、部屋の棚やグラス、置き物が次々と倒れてしまった。


「(ッ刃! この気配は……!)」

「……」


 俺は静かに立ち上がる。

 影の中でマドカの焦りが伝わる中、緋奈の叫びと共に突然存在感が溢れ出した。邪悪な気配を纏う存在達の方角へ振り返り、鋭く睨み付けた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ