第62話 神と魔王の後継者 前編(弟子は魔力を極めていた)。
──それが目覚めた瞬間、それと同じ階層にいる一部の生物の動きが止まり凍り付いた。
鬼苑、隆二、藤原といった面々は、具体的に何が起きた分からなかったが、それでも得体の知れない気配を背筋どころか心臓にまで伝わり、息苦しそうに胸元を抑えてあたりを見渡している。
尊、ルールブ双子、それに竜族のアステルも強烈な殺意を感じ取る。重圧が肉体を何倍にも重くしたような錯覚を与えているが、その殺気が自分たちに向いていないとのだと直感が理解していた。
そしてキングレッド・ドラゴンを含めた、その階層で暴れている魔物たちは最悪であった。
息苦しいだけじゃなく魂まで潰されそうな重い重圧を浴びせられている。
殺意が何枚もの刃となってSランクの竜王ですら恐怖を与えて、飛行の動きがぎこちなくなって纏う気配も弱くなっていた。
「ねぇサラ、アレって……」
「うんリサ、あの時と同じ……」
何が起きているか何となく察した双子が気配がした方を視線を向ける。
「今度はお母様じゃないけど、シルバーの魔力も感じ取れない」
「遠いから? だけどそれならどうして……」
赤い空に向かって地上から暗黒のオーラが天へと昇っている。
以前見せた氷の青白いオーラとは全く異なるチカラ。
この世の生物全てを否定するような───生とは対極的なチカラ。
「「──ッッ!」」
天まで昇るとそれらのオーラは形を描いている。
まるで赤い空を支配するように───『暗黒の姿をした凶悪な鬼』が地上の者たちに恐怖と絶望の瞳を向けていた。
「真っ黒な鬼のオーラ……この命を削るような魔力の気配は……!」
「忘れたりしない。あの『死の妖精』以上……あそこまで死の魔力を扱える化け物は一人しかいない……!」
そして双子たちは知っていた。
直接対峙するような命知らずな真似をしてないが、あのチカラを宿している鬼の存在を彼女たちの記憶の中にハッキリと刻み込まれている。
『魔王』デア・イグス。かつては『鬼神』とも呼ばれていた怪物。
最凶とも呼ばれており、さらに災厄と言われ操作不能の『死属性』を扱える化け物。
刃の師シルバー・アイズことジーク・スカルスの宿敵だったが、世界を巻き込むような大戦争の後、敗れた彼はジークが創り上げたダンジョンの最下層へ永久幽閉される事になった。
その後の事は彼女たちも詳しく知らないが、今より数年前の事だ。
娘のマドカがメイドとしてダンジョンで住み込みで働くようになってから、それまで絶対駄目と言われていた最下層への見学が許可されて、彼女たちは一度だけ最下層の魔王と対面出来る機会を得られた。
大した会話こそなかったが、あの時感じ取った死の魔力は今でも魂にまで覚えている。
死を予感させる滅びのチカラを。
「魔王のチカラがハッキリと感じる。……ヤバイ?」
「ヤバイくらいハッキリと感じる。……マジヤバイ」
だからこそ彼女たちは危機感を露わにしている。
いつの間にか冷や汗を流して緊張した面持ちで空に浮かんでいる暗黒の鬼を見上げる。
『──なつかしい』
激しい戦闘も一時的に止んだ為か、そんな呟きが聞こえた。
双子は揃って声のした方を向く。
『あのときよりも心にひびく……波動』
一緒に戦っていた白き龍が瞳を細めて少しの間だけ想いにふけた。
「刃……使ったんですね」
ダンジョンの外。
大量の瓦礫で塞がってしまった入り口に職員や常駐の警備員たちが忙しなく撤去作業に動いている中。
前もって抜け出していたマドカは別室で『雷の精霊魔法』と『原初魔法』でダンジョンのシステムの掌握。
どうにか核の機能を一時的に別に移して崩壊を回避させたが、無線機の会話を聞く限り魔神側に諦めた様子は全くない。
そして刃は対抗手段としてブレスレットの中にある魔王のチカラを解放した。
「ジーク……貴方はこうなると分かっていたのですか?」
そこでマドカが思い出すのは帰還直前の二人の会話。
色々とトラブルは起きたが、無事に修業を完遂した刃が元の世界に帰還しようとした時だ。
『──選別だ。持っていけ』
あの人はそう言ってとんでもない魔道具をあっさり渡した。
しかも肝心の説明も簡潔過ぎて、まるでお土産のようで聞いていたマドカも唖然としたほど対応が軽かった。
当然渡された方は困惑しながら返そうとしたが、ブレスレットを指差しながらジークは告げた。
『その中にあるのはオレや仲間たちの記録だけじゃない。お前のもう一人の師である魔王のもある』
聞いていたマドカは正気かと半眼でジークを睨んだが、彼の表情には少しも冗談は見られなかった。
『どれだけ遠回しな言葉を掛けてもアイツのチカラも君は受け入れてしまった。やがてそれを思い知る事になる。……これはその時の為の選択肢だ』
選択の時が来てしまったと言うことか。
外にいる自分に出来る事は掌握の手を緩めず集中する事だが、……それでも願ってしまう。
「お願いですお父様。どうか彼を──」
「し、信じられない……!」
桜香に取り憑いた魔神の前に出現したソレは───暗黒の修羅だ。
両手から腕まで伸びた凶気溢れる鉤爪のガントレット。
両足の方も同じ漆黒の鉤爪をした金属靴が装着されている。
髪の色は黒が薄まり一気に灰色となって、その顔は鬼をイメージした赤き面で覆われる。
「ふぅぅぅ……」
顎門の牙が装飾された口から吐息と共に煙が漏れる。
鬼の面の奥で金色に染まった眼光が鼓動のように点滅する。
「君は……いったい何者なんだい?」
「グッ……」
そして点滅が終わり……。
「ガァァァァァァアアアアアアアアアアアアッッ!!!!」
「ッッ──来る!」
金色の瞳が一際激しく発光した途端。
修羅の化身──鬼となった龍崎刃が獣のような咆哮を上げる。
「ガァァァァァラァァァァッッ!!」
理性に繋がる全てのリミッターが外れたか。
猛獣の如き迫力と威圧感を魔神へ全開で放ちながら駆け出した。
「ッ、こっちの肉体の事はお構いなしかいっ!」
てっきり加減をすると思っていたのに予想外の本気の突撃。
戸惑いながら魔神も剣を構えるが……。
『死滅の鐘』
漆黒の鉤爪と剣が衝突した途端、……【死の鐘】が鳴り響いて借り物の体の中に隠れる彼女まで届こうとした。
「ッッ……!? ッハァァァァ!」
数秒の接触でも危険だと察し魔力も乗せて弾き返す。
一瞬だけ刃も押し返してナイフを振り光の円を描くと、円の中から魔神の時空ゲートが開いて邪悪化した無数の魔物が出現しようとするが。
「ガルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッーーー!!!!」
『死滅の咆哮』
獣のような激しい雄叫びが【死の音色】となって出現した魔物、全ての命を断つ。
圧倒的な死属性の超干渉によって、強化されている事すら無意味にさせている。
「っっ、なんて音だ……! 魂まで滅びそうじゃないか! この体の子がどうなってもいいのか!?」
腕の部分で片耳を塞ぎながらそんな言葉を吐くが、とうの刃に聞こえているかといえばノーであろう。
「ガァアアアアア!」
「ッ、少しくらい会話を成立してくれないか!」
暗黒の雷を纏った剣戟と死のオーラを纏った鉤爪から巨大な漆黒の鬼の顎門──『魔王の鬼牙』が飛び出す。
「──ッ!」
剣を咥えて無数の牙を立てながら桜香を飲み込もうとする寸前、素早く飛んで緊急回避する魔神。
「カァァァァァッ!」
顎門を解いて『身体強化』の“風魔”を選択。
残像を発生させる程の超高速と跳躍力で上空へと逃げた桜香へ追い付く。
「は、速い……!」
「ラアアアアアアアアッガァアアアアアッーー!」
『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』『死滅の鐘』……連続で『死の鐘』を叩き込んで鳴り響かせる。
「あ、あああああああああっ!?」
堪らず両耳を押さえてしまう。いくら魔神でも耐え切れるレベルを超えている。
なのに何故か肉体の方に死属性によるダメージが一切ない。
流石に打撲などの痕は残っているが、肝心の属性による肉体や魂の影響が全くない。アレだけ受ければ無防備な魂くらい簡単に消滅してもおかしくない筈なのに。
「うっ、はぁ、はぁ……異常だ。……まさかと思うが、完全にコントロールしているのか?」
とても信じ難い話だが、そうでなければ説明が付かない。
確かに不吉で危険過ぎる属性であるが、完璧に属性魔力をコントロールしてあるなら、……異常な話であるが、現に人質とも言える白坂桜香の体を借りているのに圧倒されている。
「ガァッ!」
「グッ!」
容赦ない漆黒の拳が彼女の頬へ。
殴られて顔ごと上体がフラつくが、魔神の反撃に剣を鋭く振るって彼の首を取ろうとする。
……だが。
「き、斬れないだと!?」
フラついていたが、勢いもある横からの一閃であった。……それなのに直撃した刃の首は少しも斬れていない。……いや、それどころか振った剣が直撃と共に折れてしまった。
「ッこれなら……どうだいっ!」
諦めず退かない魔神が攻め続ける。
桜香の剣ではダメだと、もう片手で握り締めていたナイフで彼の心臓を狙うと……。
「アァアァァ!」
至近距離という事もあってか、それとも避ける気がなかったか。刃は正面からナイフを受け入れる。
「ぐ……どうッ──!? そ、そんな馬鹿な!?」
そしてあっさりと心臓の部分へ彼女のナイフが届いた───と思ったら、ナイフは数ミリ刺さっただけで止まり、そこから押す事も引く事も出来なくなってしまった。
「ッ、異常な肉体の超強化かっ! ボクのナイフすら皮膚までしか届かせないと言うのか!」
『死修羅』───鬼が扱える最凶の身体強化の一種。
肉体が先ほど以上に強化されて、神族すら切り裂くほどの殺傷能力が高い魔神のナイフに耐えている。
そこへナイフが刺さっていた刃の肉体の一部が変化。
より濃度の高い死のオーラとなると刺さっていたナイフを侵食。さらにナイフを伝って死のオーラが彼女の手首を拘束した。
「ッッ! は、離せッ!」
「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッーーー!!」
面越しに金色の眼光が彼女を魂まで潰すような殺意と共に睨む。
そしてとうとう殺意の恐怖が彼女の好奇心を上回ってしまったか。
「い、いや……!」
この数ヶ月の間に強く縛っていた筈の白坂桜香との繋がりに綻びを生まれる。
魔神は気付いてない筈かなブレであるが、肉体との分裂の傾向が出始めたのを───
「待っていたんだ。この時を」
獣のように叫んでばかりだった刃が途端、冷静さと淡々とした口調も元に戻る。
激しい殺気に満ちていた金色の眼力も、いつの間にか冷たいものへ変化しており、その視線は桜香の体に隠れている魔神の彼女を捉えていた。
「まさか、ずっと正気を失ってるフリを!? ボクが動揺するのを狙って!?」
「ふんッ」
両手を伸ばして桜香の体に触れる。
逃さないように背中で抱えてもう一方の手で、彼女の大きな胸元をガシッと遠慮なく鷲掴みする。
「へ、変態か君は!? 不作法にも程があるだろ!」
「そんなつもりなら服破いてガントレットも取って生で触るわ」
危機感を抱いて動揺を誘おうとしたが、肝心の刃はノーリアクションで掴んでいる彼女の胸の奥まで意識を集中する。そこまで来れば流石の魔神も理解した。
「ぼ、ボクをこの子から引き剥がす気だね……! でも無理だ。この体に入ってから結構経ってる。微かに繋がりを乱した程度じゃ、下手に引き剥がしても彼女の魂が無事じゃ済まないよ!」
その通りだ。彼の攻撃で繋がりが乱れはしたが、まだ根強く桜香の魂と結び付いている。
ここで強引に引き抜きでもすれば、桜香の魂が破損して最悪廃人になる恐れがある。いや、その可能性が大と言ってもいい。
「ボクのナイフを防いだの驚いたけど、ここまでだね! ボクの力はまだまだこんなものじゃない。死属性の完璧なコントロールには驚かされたけど、それだけじゃ「黙ってろ」……!」
彼女は救えない。
そんな事は捕まえている刃が一番分かっていた。
「なんの為にこうして捕まえてると思ってる? 逃さない為に決まってるだろ。お前を」
強く掴むと同時に死の魔力の桜香の中──よりにもよって魔力が集まっている心臓へと流し込む。
「なっ、何をしているんだ君はっ! そんな危険な魔力を入れたらこの子は本当に死んでしまうぞ!」
いったい何をしている。困惑する彼女に刃は構わず注ぎ続けて……あっという間に致死量の魔力が心臓へ入ってしまった。
「お、愚かな事を……! 君はこの子が助けたかったんじゃないのかい!?」
これではもう桜香の死は確実。
避けられない理不尽な運命。思わず人質にしていた魔神が声を荒げて問いかける。
「お前がそれを言うか? こんな事になったはそもそもお前の所為だろう」
「っ、君はそうじゃないと思ってたのにっ」
何か期待していた。そう思わせるような言い方に刃は少し目を疑う。
ずっと桜香の隠れていたのならここ数ヶ月の学園でのやり取りも知っているという事。なら桜香を助けようとするこちらの行動も理解出来て、逆に邪魔だと排除するやり方に驚くのも分かるが……。
「君は……まるで別の誰かと比べてるような言い方だが、それはお前の実体験の話か? 俺のように誰かが誰かを見捨てた?」
正解かどうかは知らないが、パッと思い付いた想像をそのまま口にする刃。
果たして正解だったのか、答えは……。
「見捨てられたのは……お前か?」
「ふ、ふふふ……」
バチバチと桜香の体から暗黒の火花が発生。大量の魔力が漏れ出ている。
苛立ちから怒りへ、そして憤怒へと彼女の感情と共に莫大な魔神の魔力が荒れていた。
「君は、死にたいのか?」
「悪いが、まだ死にたくはないな」
そして桜香も死なせるつもりもない。
触れていた胸元から手を離すと抱えていた背中も解放して、静かに、そっと静かに鋭い爪の指先を向けて……。
「『同化』」
「──は?」
融合スキルの第二権能を発動。
だが、今回は指定するのは自分ではない。
融合技法と同じ異世界ではSランク技法と呼ばれた『一体化』。
その技術の応用で彼は『同化』と呼んでいるその能力を使って……。
「うっ!? ア、アアアアアアアっーーー!?」
遠隔で『桜香の心臓』と『魔神の魔力』を一つにさせる。
本来は融合と違い肉体と魔力、もしくは肉体と武器を繋げる為の技法。
だが、今回は肉体である桜香の心臓部に死属性の魔力がある。
心臓は魔力器官の中心であり体の全体まで行き渡らせる大切な部分。
体を支配している確かに魔神であるが、彼女はあくまで桜香という個体に引っ付いているだけ。
外部からの妨害なら持ち前の莫大な魔力で弾き返す事など容易であるが……。
「や、やめろォォォォオオオオオオオッッ!!」
「断る。桜香と同化して───内側から自滅しろ」
内部からしかも心臓から全体まで厄介過ぎる『死の魔力』の超干渉であれば、話はもう別次元だ。
「喋っている間に気付けよ。肉体的も大事な器官である心臓に入れたのに何で桜香が即死しなかったのか」
刃は遠隔で取り込ませた死の魔力が完璧にコントロールしていた。
それによって桜香の肉体、心臓と適合出来るように微調整も行っていた。
莫大な量なら難しかったが、短時間であれば桜香の安全も守れるくらい彼の操作スキルは『極め身』へ達していた。
それによって死の魔力は桜香のモノとなり、同化のベースは『死属性』となる。
同時に引っ付いている魔神の魔力が邪魔となり、強制的に同化させられる。普通なら莫大な魔力で弾く事が可能であるが、魔神は愚かにも自分の魂を桜香の魂とで繋げてしまった。
無防備な魂ではたとえ配下である魔王の魔力でも『死属性』は受け止め切れない。
確実に消滅してしまうのは、もう変えようのない現実であった。
「心臓が脳と同じ肉体にとって大事であるなら、魂は何に対して大事なものになるか……」
答えは簡単──『自分自身』。
「愚かな選択したのはお前の方だったなァ? このボケ魔神」
「りゅ、龍崎ィィィッッ!」
そして完全に『死の魔力』と『魔神の魔力』による同化が成立する……その直前。
「アアアアアアアアアアアアアアアアッッ!」
それは魔神としてのプライドか、ただの生存本能か。
絶対に離すものかと粘っていた魔神であったが、自身の滅びがすぐそこまで近付いている状況にとうとう方針を変更した。
「なんだ。もう出て来たか。意外とビビリなんだな?」
「ッ、調子に乗るなァァァァアアアッ!」
同化しかけた桜香の体から出て来たのは、黒のドレスと仮面を付けた真っ白な髪の美女。
一見貴族の令嬢のようにも見える美麗な女性であるが、その両手には先までよりも濃く、そして膨大な暗黒の魔力が凝縮された剣が出されている。
一気に飛んで接近して、躊躇わず二本の刃で彼に襲いかかったが、とうの彼は内心溜息を吐く。
(やはり愚かなのはお前だよ魔神。桜香を救えた時点でこの勝負はもう詰んでる)
確かに正面でも不意を突いた奇襲でも今の刃が勝てる可能性は極めて低い。
たとえ融合スキルを使っても勝算はそこまで上がらない。それくらい魔神たちは別次元の化け物なのだ。
(だから魔王の力を頼った。けど本質がお前らに近い以上、デアの属性魔力だけじゃ厳しい)
刃が魔王の力を選択したのは桜香を助ける。あと溜まっていた鬱憤を晴らすのもあったが……実は他にも理由がある。
(魔王の力を使えば使うほど、あの人の力を引き出しやすくなる)
ブレスレットの効果で一回使えば、約1日再使用の出来なくなる。
だからサナの力を借りて以降は、刃も休むことを優先したが、その条件の中には例外もある。
(さぁ、お目覚めの時ですよお師匠さま。アンタが招いた厄介事だ。最後はアンタのチカラで終わらせようか。……ダンジョンが滅びるかもだけど、全部師匠の所為にしよう)
と言って脳裏でギョッとした顔の魔導の師の顔が浮かぶが、心の中で全て責任を押し付ける。
とある占い師の予言の通り、『世界を超えて、魔法の常識すら超える』超越者へと近づく。
(この戦いに終止符を打つ。“受け継ぐは───”!)
そして前任者と言える常識破壊の世界を超越した存在を───自身の肉体を通して呼び寄せようとしていた。




