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神と魔王の弟子は魔法使い 〜神喰いの継承者〜  作者: ルド
第4章 弟子の魔法使いは試験よりも魔神と一騎討ち(でも試験荒らしてトップを蹴落とす)
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第49話 第四層の乱戦突破と……(弟子はブチ切れるとチート魔法を解禁する)。

休みだったので、更新しました。

「そこまでよ! 貴方たち!」


 ミコが双子を吹き飛ばした直後だ。

 少し前から十近い複数の気配が俺たちを囲って、そのうちの一人が姿を現した。


「西蓮寺か」

「ああ、どうも七海さん」


 青髪をした女子生徒。三年の西蓮寺七海。

 知的な雰囲気でミコの姉である咲耶姉さんと対局に位置しそうだ。二人とも女神と呼ばれているらしいが、普段のミコに対する扱いを知ってるから……何でもありません。


「また招かれざる客が来たって事か」

「……何故かしら、私に対して何か敬意がないように見える」


 無いからね。口にはしませんが。


「てっきり土御門か咲耶姉さんが来ると思ったよ。ミコも居るし」

「姉貴が来たら速攻で逃げる」


 あ、目がマジだ。冗談のつもりだったが。


「咲耶は藤原さんの方に行きました。土御門君は鬼苑君と……白坂さんところよ」

「……」


 何処か含みのある声音と視線で俺を見つめてくる。

 何の反応を期待しているか知らないが、それくらいで動じると?


「そうか……で? 貴女たちは何しに此処へ?」

「……決まってるよね?」


 そこで他の三年や二年の『ハンター』が出て来る。

 全員が上位ランカーって奴なんだろう。……どうでもいいが、なんか引いてない?


「じょ、女子生徒を吹き飛ばした」

「あんな可愛いのに……」

「なんてヒドい事を」


「「……」」


 さっきまでの一部始終を見られていたらしい。

 男子は正気を疑われる目で、女子の方は鬼畜を見るような目で…………俺はそっとミコの肩をポンと叩いた。


「自首しよ」

「全部ジンの所為だろうがァ!?!?」

「「関係ない! どっちもブッ倒す!」」


 なんてやり取りしてる間に投げ飛ばされた双子が出て来た。

 全身から魔力を噴き出して荒れている。ミコの所為でお怒りモードがさらに増している気が……


「なんて事を……」

「もう帰っていい!?」


 泣きそうな顔で吠えてくるミコ。……冗談なのに。


「ノリが悪いな」

「この状況で無茶言うな!」

「……この状況でも二人とも余裕ね」


 なんか西蓮寺にも呆れられてる。まぁ、そろそろ頃合いか。


「いやーこれから大変になりそうだから、一度緊張でもほぐそうかと思って」

「大変になる?」


 こうなっては戦場の拡大拡散は避けられない。

 きっと双子たちは納得しないだろうが、まとめて乱戦に巻き込む事にした。


「ああ……此処にこんなに集めたんだ。全部覚悟の上だろう?」


 発動している『魔力・融合化』も限界が近い。次で決める。


「ミコ、炎と風だ!」

「オーケー!」


 伝えるとミコは鳳凰に指示する。

 鳳凰は翼に金色の炎を溜める。西蓮寺や双子がハッとして止めようとするが、チャージの時間は2〜3秒で済んだ。


「『羽撃きの炎竜巻(ホムラ・タツマキ)』」

「「っ!」」


 勢いよく羽ばたかせると竜巻の炎が発生する。

 徐々に大きく広がって双子や西蓮寺たちへ巻き込もうとするが、前に出た双子が槍とレイピアを盾のように出してきた。


「『爆風の絶壁(エア・クリフ)』!」

「『水流の絶壁(ウォーター・クリフ)』!」


 二種類の上位防御魔法を展開。自分達の周りだけ竜巻の攻撃を寄せ付けなくした。


「っ! ……尊君!」


 しかし、沢山の人手を抱えている西蓮寺は別だ。

 本人は障壁を張りながら距離を取っているが、いきなりの炎の竜巻に一部の生徒たちが混乱している。


「ちょ、ちょっと待て!?」

「落ち着いてっ! まず障壁の展開を!」

「さっさと動けよ!? 邪魔だっ!」


 集団ならではの弱点。

 都党を組むと個人の判断力が欠落しやすい。

 数で安心するから、警戒心も緩くなってしまう。


「で、どうする?」

「逃げる」

「了解」


 質問に対して俺が即答するとミコも迷わず頷く。

 この混乱を利用して狙う撃ち出来るかもしれないが、今なら混乱に乗じて逃げれる。

 まだ六日目の試験。最終日も荒れると考えるともうこれ以上の消耗は避けた方がいい。


「走るぞ」

「何処へ?」

「下だ」


 短く伝えて一緒に駆け出す。

 包囲されているが、全員巨大な竜巻と炎の熱に翻弄されている。

 双子の方は危ないが、突破できる箇所は他にもある。


「ぐ、おっ!?」

「退け」


 近くまで来ていた男の鳩尾を打つ。そのまま混乱している連中の方へ投げ飛ばす。


「に、逃すな!」


 だが、そう簡単に突破させてくれるほど連中も優しくはない。

 何人かは炎の竜巻から立ち直り、俺たちの前に立ち塞がろうとするが……。


「邪魔だ」

「ギャアアアアーーッ!?」


 背中に炎の翼を生やしたミコの炎の蹴りが打つかる。

 ボキボキと嫌な音が聞こえた気がしたが、続けてミコは近くにいる女子を羽で飛ばして、男の顔に炎の蹴りを叩き込む。


「『火炎連弾(ファイア・ジャム)』!」


 さらに中級位魔法の火炎弾の連弾を両手の指先から撃つ。

 中級位だから対して強くないと思われそうだが、ミコの魔力量とコントロールは一級品だ。


 特に炎に関しては、アイツは既に世界トップクラスにいる。学生レベルのただの障壁程度で防げるか。


「強行突破だ!」

「っ──行かせないわ!」


 なので俺も負けてはいれらない。

 身体強化の“風魔”の速度をプラスしたダッシュ力。


「“遮るは水の楼閣”───『水龍陣の楼閣スイリュウ・リュウカク』」


 俺たちの行動を先読みした西蓮寺が巨大な障壁を張ってくる。ミコの魔法と同じ西蓮寺家の固有魔法だ。


「ミヤモト流───七式」


 初級魔法と天地で作り出した『雷刀』を構える。

 正面に出現した巨大な楼閣の水の壁に向かって、俺は速力を重ねた『雷刀』を振るった。


「『雷鳴(ライメイ)』ッ!」


 雷の咆哮が巨大な楼閣の壁を突破した。


「そんな!? なら──」


 破られると思ってなかった西蓮寺が狼狽するが、それも一瞬だけ。

 すぐに別の魔法を発動させようとするが、それよりも俺がリボルバー銃を抜く方が早かった。


「『瞬速の弾丸(ソニック・ショット)』ッ!」

「ッ……! キャア!?」


 連続の五連射。

 速攻で発射された弾丸は四肢と胸元へ当てる。

 致命傷にこそなってないが、確実に動けなくはなった筈だ。


「そこまでにしろ」

「し、信じられない。私が……こんな」

「別に貴女は弱くないよ。ただ……俺に運が回っただけだ」


 混乱した戦場は時に実力すら無視してしまう。

 痛みで動けない彼女を振り切って先に進む。


「「ブレイド! 待てぇぇぇぇッ!」」


 だが、後方から追いかけて来る巨大な二つの力が───。


「おっと待ちな!」

「──貴様!」

「また邪魔するか!」


 炎を壁、翼を伸ばしたミコが立ち塞がる。

 苛立ちを隠さない双子がレイピアと槍を向けようと……。


「『擬似・属性融合』」


 その間を俺が割り込むように突っ込む。

 融合スキルの第二権能(セカンド)を使って、同時に二つの属性を融合させて自身に纏う。


 融合させるのは『雷属性』と『火属性』だ。


「そ、その姿は!? シルバー・アイズの!」

「天を司っている融合の一つ──『緋天(・・)』!」


 緋色の雷を纏って双子の武器を掴み取る。


「『緋天の皇蕾衣カーディナル・サンダー』ッッ!」


 一気に押し返す。反動で彼女らの体が押し返されたところで、自分の拳に残りの緋天の魔力を込めていく。


「その魔法は……!」

「させない!」


 俺の意図を察した双子が真に迫った顔で仕掛けて来る。俺の攻撃よりも速く俺を仕留めるつもりだ。


「オレのダチに手を出すじゃねぇよ!」


 その行く手に炎を纏ったミコが飛んで来るが、ミコの危険度を上げていた双子にもう手加減はなかった。


「邪魔!」

「いい加減しつこい!」


 エリューシオン流の剣技と槍技だろう。

 瞬間的に高速で動いて消えた双子が……次の瞬間にはミコの壁を突破している。


「──ッ!?」

「ミコッ!」


 そして遅れるように翼をもがれたミコが倒れる。

 手足にも斬撃や突きを受けたようで、血飛沫を上げて前のめりに倒れたアイツを見た俺は……。


「──う、撃てェェェェェッ!」

「ッ、吹き飛べ……──『緋天王の炎蕾砲射カーディナル・バスター』ァァァァッッ!!」


 血を吐くようなミコの叫びのまま、自分の拳を振り抜く。

 同時に拳に溜め込まれた緋色の雷が放射線となって解き放たれた。


「「『雲海竜の暴風オーシャン・テンペスト』ォォォォッッ!」」


 対する双子も互いの武器をクロスさせて融合魔法で迎え撃つ。

 緋天と雲海。お互いの最大の攻撃魔法が激突しながら相手の魔法を削り取っていく。


「ハァァァァァァァッッーー!!」

「「ハァァァァァァッーー!!」」


 お互いの攻撃魔法がどんどん拡散して周囲を巻き込む。

 激しい爆発も何度も起きて天井の岩が剥がれ、足場も徐々に削れていく。


「「これで終わりダァァァァッーー!! ブレイドォォォォォーー!!」」


 そして徐々に双子の攻撃に押されていく。

 結局魔力の放出力が負けている以上、正面からではまず勝てない。


「ッ!」


 それが才能のあるとなしの大きいな境界だ。

 決して越えられないと誰もが分かっている。

 限界のラインであり、それはずっと昔から分かっていた。


「ニセモノのお前を倒してぇぇぇッ!」


 そして一度は完全に挫折して閉じ籠った。

 二度と出て来るつもりなんてなかった。

 

「私たちがシルバーの後を引き継ぐんだァァァッ!」


 孤独に身を投じて逃げたかった。

 全ての絆を忘れてしまいたかった。

 忘れる事で楽になりたかった。



「……フザケルナ」



 けど……!

 あの人たちは……!



「何が終わりだァァァァァァァァァッッ!! この程度、地獄でもなんでもないわァァァァァァァッッ!!」



 全てを諦めた俺を見捨てなかった!

 受け入れてくれて、俺に賭けてくれた!


「たかが真似事が出来る程度で後継者になれるかッ! あの人を舐めるのも大概にしろッ! このクソガキ共ォォォォッッ!」

「「──ッ!? 何、この魔力は……」」


 言い表せない怒りが溢れ出る。もう逃げる気も失せた。

 無意識に手首にある白銀のブレスレットに触れた。


「融合だけがあの人の全てだと勘違いしてんじゃねぇ! こんなものただの技術だッ!」


 この双子だけは絶対に許さん。

 サナさんの娘だろうが、もう関係ねぇよ。


「そんなに受け継ぎたいなら見せてやるッ! 俺が引き継いだあの人たちの力をッ!」


 ブレスレットに込められた特殊な石が光り輝く。

 俺の二種類の魔力に反応して、銀色と黒色の二つが混ざり合い───やがて封印された『魔法(チカラ)』を解放した。


 決着まで行きたかったのですが、都合から延ばします。

 次回でやっと六日目の戦いも終わりとなります。長かったです。


 本日は刃のブチギレ話でした。はい、唐突です。

 よく分からない部分もあると思いますが、簡単に言うと戦闘続きでストレスが溜まり、最後に双子たちの自分達が師匠の跡を継ぐ一方的なセリフに、いよいよ我慢の限界を超えて封印している『とある力』が漏れ出た影響でした。


 それで僅かにあった加減が消えて、ブレスレットのヤバいチート魔法が解禁されます。その所為でダンジョンが……というわけで次回に続きます!

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