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神と魔王の弟子は魔法使い 〜神喰いの継承者〜  作者: ルド
第4章 弟子の魔法使いは試験よりも魔神と一騎討ち(でも試験荒らしてトップを蹴落とす)
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第39話 四日目は包囲される朝から始まる(弟子は呆れて彼女を召喚した)。

作者はコタツで丸くーなる。……コタツじゃないけど。

 二日目からも割と平穏なダンジョン生活が続いた。

 初日は魔物ばかりを狩りすぎた感があったので、二日目は魔物よりもミッションを優先した。


 ミッションとは特定の場所に設置されているタブレットや魔法陣で分かる。流石に全ての場所に教員は配置出来ないので、タブレットのお題が書いている。ちなみに魔法陣はタブレットを破壊されない為の承知だ。魔物除けの効果がある。


 お題の殆どは魔物が関係している物が多い。

 特定の魔物を何体倒せや素材集め、バッジと連動しているので教員が確認する必要がない。

 他にも筆記関係の問題もあるが、こっちは何年も机の上でかじっていた欠陥品だぞ? 大学関係の難問でもない限り苦戦はないと断言できる。


 三日目は朝から三層に入った。二層の魔物を狩り尽くしてもよかったが、獲得ポイントが大きいはやはり下の階層だ。多分四層もいけると思うが、俺は真ん中の三層で丸一日過ごしてみた。


 そして三日目の夜の結果はこうだ。


『試験ランキング(現在)』

 ランキングポイントは魔物討伐(数とランク)、ミッション(難易度)、所持ポイント(初期ポイントはチームごとに200)の総合評価で決まる。


 第一位 龍崎チーム 4820ポイント

 第二位 四条チーム 1560ポイント

 第三位 鬼苑チーム 1030ポイント

 第四位 白坂チーム  990ポイント

 第五位 藤原チーム  980ポイント


「三位から五位の差が無くなってきてる。ミコでも俺に追いつくにはまだ足りないが……」


 気になるのは鬼苑のチームがそんなに取ってない事だ。藤原も動きが少な過ぎて不気味だが、鬼苑のところには彼女たちがいる。サナさんが殺されるなと助言する程の厄介な異世界人が……二人も。


「とりあえず狙って来ない限りは放置でいいだろう。……それよりもまず」


 話をまとめてテントから出る。四日目の朝だ。

 洞窟内に朝も夜もないので大して変化などない。持っている時計のお陰で感覚が狂わされる事はないが……それはあまり関係ない。


 要するに感覚は正常な俺は起きた時点で気付いていた。テントを包囲している複数の気配を。


「一応隠れているようだな」


 外に出てテントを片付けている。周りは岩肌と川だけで人気はないように見えるが、気配に関しては正常に感じ取っている。多分岩の影とかに隠れているんだ。


「まだ四日目だから襲えない筈だが……」


 用意した水で顔を洗い歯も磨く。朝食を軽く済ませてそれらも片付けると、いつものようにストレッチして体の準備を整えた。

 少ない荷物をまとめて移動した。……複数の気配も距離を取って一緒に付いて来た。


「……」


 歩いていると違和感に気付く。……魔物がいない。

 遭遇する気配もない。何故か俺が行く先の気配を探っても魔物が全然いないのだ。魔力も感じない……だが。


「匂いは残ってる?」


 どういうことか。不思議な状況に思考を巡らせていると、しばらく歩いたところで怪しげな痕跡はそこら中に残っていた。

 隕石でも落ちたような大きく陥没した地面が数あった。


「魔法……戦闘の痕跡か」


 よく探って見ると微かにだが、陥没場所に魔力の痕跡も残っている。肝心の残骸はないが、魔物の匂いの残っているところから……恐らく。


「藤原の対防衛魔法・天空要塞ガーディアン・エンジャルか」


 固有の高等魔法式。彼女が編み出した遠隔系の魔法式だ。

 神童は四条尊、頭脳なら藤原輝夜。と分けてもいいくらい彼女の魔法知識は異常なのだ。

 長い間、魔法世界から離れていた藤原家が帰り咲いた大きな要因でもある───国が認めたほどの対防衛術式。


「それを此処で使うかね?」


 見張りの者たちは彼女の配下のチームだろう。監視して随時報告して藤原が遠隔で魔物を倒していく。さらに……。


「トラップもあるな。しかも複数……」


 破壊の痕跡に目を奪われていたが、地雷原のような罠魔法を辺り一面から感知する。感知しづらいように隠蔽も施されていたので、気付くのに遅れてしまった。

 一見反則にも思えるが、これが魔物の為に用意したのだと言い張れば、学園側もこちらの不注意と判断するかもしれない。いや、藤原が関わっている以上はそうなると考えるべきだ。じゃなきゃ仕掛けたりしない。

 多分この辺に他のチームや生徒が入らないようバリケードも張っている可能性もあった。


「彼女の狙いは俺の足止めと点数止めか……はぁ」


 鬼苑ではなく彼女から仕掛けて来たの以外だが、露骨な妨害に俺はついため息を漏らす。呆れたからだ。


「俺がこれくらいで止めれると……本気で思ってるのか?」


 これがあの藤原の策だと言うなら舐め過ぎている。普通科で欠陥品だからか? 藤原の用意した舞台を俺は呆れながら……踏み込んでやった。


「被害が間接的なら学園側も文句は言えない。それを教えた事をたっぷり後悔しろ」


 俺は敢えて罠の方へ飛び込んだ。

 そうしながら───封印されている魔法を発動。久々に彼女を呼んだ(・・・・・・)






「っ動いた! は、速いぞ!」

「やはり気付いたか……追え。見失うな」

「分かってる!」


 藤原に派遣されたチームの見張り役の男子の声に、指示者が他の男子に伝える。頷いた男子が脚力強化して追跡を始めた。


「他の奴らにも伝えるのか?」

「見張りはオレたちだけじゃない。オレたちはオレたちの役割を果たせば文句は言われん」

「っ……そうだな」


 尋ねた男子は悔しそうに唇を噛む。自分たちは駒なのだと改めて痛感しているからだ。

 彼らは総合クラスの生徒だが、四条と藤原の対立でどちらにも付けず溢れた者たちで構成されている。行き場を失った魔法科でありながら孤立した生徒たちだ。


「藤原はオレたちを使いパシリにするつもりかよっ」

「仮にそうだとしてもオレたちに選択肢はない。ここで成果を上げなかったらいよいよ乗り切れなくなる」

「けどよっ!」

「逆らっても居場所がないんだ。オレたちには……!」


 普通科の者たちの視点からしたら魔法科にいるだけで安泰と思われる。……が実はそうじゃない。魔法科の中でも大きな格差が存在している。表向きは平等のように見えるが……。

 彼らはその一番下。二人が対立した際、どちらにも付かず好き放題していたツケがこうして彼らの自由を奪っていた。


「……どうしても抜けたいならそうしろ。だがオレは言われた通りこの試験を乗り越える。もう下に見られるのは御免だっ」


 激しい憤りを押し殺す。指示する者も歯痒い気持ちと屈辱感で一杯一杯だが、感情に任せて自棄になっても未来がないのは嫌でも理解している。いや、理解させられた。藤原という悪魔によって。


「どうした? 嫌なんだろう? 抜けたいならさっさと消えろ……!」

「あ、い、いやオレは……!」


 指示者の男が睨み付けると反抗的な男子は途端に慌てて取り繕うが、男の視線に友人を見るような色はない。邪魔者だと目が訴えているようで男子の方は次第に青ざめていったが……。


『オイ! 大変だぞ!』

「っ! どうした?」


 用意していた無線から別チームの声が届く。同じ指示している者か慌てた様子で、彼らだけでなくこの場で見張っている全チームへ無線を繋げた。


『龍崎の奴が突然迂回して来た! しかもとんでもない速さで罠に自分から飛び込んでる!』

「まさか、自滅したのか?」

『違う! そうじゃない! こ、これは……』


 もしかして罠に気付かず吹っ飛んでリタイアしたかと期待したが、通信先の男の声から全く違うのだと察して……。


『わ、罠を……次々と壊して、っ……な、なんだよアイツ!? 急にこっちを向いて──』

「お、おい? どうした?」


 突然通信が切れる。するとその直後から無線から複数の悲鳴のようなが聞こえ始める。


『どうなってんだっ!? 土煙が酷くて何も見え──』

『みんな、に、逃げろ……! コイツは、コイツはやっ──』

『ま、真っ黒で何も見えない! 声が聞こえないのか!? 誰でもいいから助けてくれぇー!』


 色んな声とそして風を裂くような音と何かが壊れたような音。金属が引っ掛かった耳を刺激する音。土がザラザラと荒れるような音。

 それらが混じって届いてくる声の殆どがノイズが掛かって聞こえなくなっていた。


「な、何が起きてるんだ……?」

「な、なぁこれってヤバくねぇ? い、一旦隠れた方が──」



【ど・こ・に? かくれるのかなぁー】



 その者たちは悲鳴を上げることはなかった。

 しばらくしてリタイアの知らせがバッチから伝わり、駆け付けた教員たちの目には何組ものチームが同じ場所で全員がスヤスヤと眠っていた。

 外傷は一切なく教員たちは困惑した様子で彼らを呼びかけたが、全く起きる気配がなかった。


 仕方ないと全員を回収したが、結局彼らは試験最終日が終わるまで起きる事はなかった。

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