第37話 スキル検証している間にランキングが……(弟子は着々と目立っていった)。
本日三度目の『魔力・融合化』発動から、間も無く三十分が経とうとしていた。
完全にリミットを迎えると反動で二十時間近く再使用出来ないが、途中で解いて少し休息を取れば何度か再使用が可能となる。かなりの荒技でジーク師匠は反対的だったが、魔王師匠は可笑しそうに褒めてくれた。……逆に不安になった。
「ハァハァ……」
第一層から第二層に行くには、入り口と同様四つの定位置にある門を通らないといけない。
『ガルガァァァ!』
そして門には当然番人がいる。……番犬だけど。
巨大な門の前には巨大な魔法陣が敷かれている。どのチームも通る為には門番と戦わないといけない。
「っ……ふん!」
両手から『火炎弾』の凝縮させてレーザーのように放つが、押し切る前に弾かれてしまう。
右の横顔から撃ち抜くつもりだったが……耐熱性が高い毛皮らしい。火傷程度で済みやがった。
さらに球体の爆破形態を紛れ込ませて牽制をすると……。
「ふ、“風魔”!」
スタイルをスピード特化の風魔に変更して、土を凝縮させた剣を構える。
「ミヤモト流……」
──超加速。先の攻撃でフラついている狼の懐へ。
「『火閃』」
熱で真っ赤に染まった郝刀を振るう。……巨大な狼の首が胴体から焼き斬れた。
……ギリギリだったが、どうにか時間切れ前に融合を解除出来た。
「あ、先生ですか? もしかして通過チェックとかですか?」
「ず、随分と早いな。もう着いたのか……」
第二層に入ると見覚えのある先生が探求者の格好で待っていた。名前は覚えてないが、多分総合クラスの担任だ。
「認証バッチを出してくれ。第二層の地図を送る」
「はい」
「ミッションもあるが、どうする? 多分まだ誰も来ないから一位は確定だが」
「やります」
待機していたのはチェックや地図以外にもミッションも兼ねていたか。
一層目は全部無視して魔物討伐に集中していたから、これが初のミッションであった。
「む……ハイペースで進めてるようだが、本当に大丈夫か?」
手元の端末でバッジを読み込むと俺の情報が見られる。俺の倒した魔物の数や種類も公開されており、徐々に険しい顔になって心配そうな声で訊いてきた。まぁ、普通科の人間の討伐記録じゃないよな。
「平気ですが……ちなみに今の順位とか分かりましたっけ?」
「……」
あ、なんとも言えない渋い顔になった。無言でバッジのボタンを操作すると、俺に見えるように画面が映り出された。順位はリアルタイムで見られるようだ。当初は興味がなかったから無視していた機能であるが……。
『試験ランキング(現在)』
ランキングポイントは魔物討伐(数とランク)、ミッション(難易度)、所持ポイント(初期ポイントはチームごとに200)の総合評価で決まる。
第一位 龍崎チーム 1590ポイント
第二位 四条チーム 580ポイント
第三位 白坂チーム 420ポイント
第四位 鬼苑チーム 395ポイント
〜〜〜 〜〜〜〜〜
〜〜〜 〜〜〜〜〜
第八位 藤原チーム 330ポイント
「一位ですか」
「一位だな」
あれ? 思ったよりやり過ぎたか?
魔力融合の調子を確かめる為にトップギアで飛ばしたが……。
あ、ミコは二位なのか。藤原が八位なのが不気味だな。
「ミッション、やるか?」
「……やっときます」
うん、済んだらもう今日は終わりにしよう。時間的にまだ夕方ぐらいだけど、連戦と連続の魔力融合で疲れました。
そう決めて貰ったタブレットを見ると……。
ミッション:『三十分以内に〇〇素材を十個集めよ!』
「……」
俺は無言で付け直したバッジを操作。今さらだが、これも魔道具。さっきの機能以外にも学園側のサービスで収納機能があり、討伐した魔物の素材やアイテムは自動的に保存されるのだが……。
「こんだけあれば足りますよね?」
「……」
書いてある素材は大量に狩った鳥から取れていた。
用意されているお盆に三十以上を一片に乗せる。教員は無言でクリア報酬のポイントと補給品を渡してくれた。
「よし、深く考えるのはやめて飯にしよう!」
現実を直視しても辛いだけなの。
簡単なテントを作って、鳥の素材ついでに肉とお鍋を取り出す。あと簡単な調味料とカップ麺を出して……。
「マドカに怒られそうなメニューになりそうだ……」
と言っても料理センス皆無なので止めるつもりは少しもない。
本日のご飯は鶏鍋ラーメンに決定した。いやー、美味しかったー。
あとポイントが沢山あるのに休憩所の宿舎を利用しなかったのは、……単純に頭になかった。
「と、とんでもない事だ……!」
「やはりあの噂は本当だったのか! だとしたら彼はもう普通科の生徒では当てはまらない……」
「……」
「マ、マドカ先生、顔がなんだか……」
「怖い、で、すよ?」
「……気のせいです」
ちょうど同時刻、教員同士でそんなやり取りがあったとか……。
無表情なマドカ先生の目付きが射殺すような眼光となって、画面に映っている刃のレーダーの反応を睨み付けていた。
「(動きが止まってるってことは、宿舎を利用してませんか。一人用の小型のテントを用意していたようですが、絶対食事関係は手抜きですね)」
今すぐ行って食事を用意したい。
健康的な食事の有り難さを彼に分からせたい。マドカは画面を見ながらそんな事を考えていると。
「──はい? え! そ、そうですか……」
驚いたのような声に振り返ると一人の教員が電話をしているが、なんだか驚いて動揺した様子だ。何事かと他の教員が電話を終えたところで尋ねてみると……。
「ついさっきほど『姫門学園』から急な申し出があったらしい。あまりに急な話だが、どうやら生徒会長の土御門も関わっているようで、良い機会だと判断したか学園長は『姫門学園』の話に乗ったそうだ。六日目からの妨害要員が増える事が決定した」
あの学園の単語を耳にしてマドカの目が険しくなる。嫌な予感が拭えない。『土御門』の言葉で盗聴していた神崎家と白崎家の話が脳裏に浮かんだ。
「『第二姫門学園』の『星々の使い魔』が来るそうだ」
初日から波乱の予感を含ませていた。
短めですが、1日目が終了。
ちなみに彼が倒した魔物の数は百体以上。殆どが雑魚レベルですが、うち二〜三十体は上級の魔物でした。数体は条件次第で出て来るタイプでこちらのポイントが一層でも大きいのでした。