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神と魔王の弟子は魔法使い 〜神喰いの継承者〜  作者: ルド
第3章 弟子の魔法使いは優等生達を欺き凌駕する(何気なく)。
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第27話 真に欺いた者とは 鬼苑編(弟子はまだまだ……まだ?)。

 バトルほぼなく、説明文ばかりでしんどい(汗)

 そして3話連続で登場しない主人公。……なんか黒幕みたいに名前が出たけど、次回こそ出るかなぁー(なんかデジカメが吹っ飛んだけど)。


「取り引きは四時過ぎの筈。まだ一時過ぎだぞ? 何をしているおまえら」


 中学の頃から暴力の覇者。

 Aランクの評価に裏切らない戦闘センスと魔法の使い手。

 あの白坂も警戒している。学園でも突出した実力者。


「あ、あの……思ったよりダンジョンの件が早く済んで、戻ったら……ちょ、ちょうど藤原さんと会って、だったら今済ませようかって、時間が早まって……」

「……そうなのか? 藤原」


 咄嗟に思い付いた嘘だが、藤原が否定したら一分もせず詰む。

 必死に笑顔を崩さず、心の中で彼女に願い続けると……。


「はい、そうです。時間まで暇だったので散歩していましたら、偶然お会いしまして」

「何故オレを呼ばなかった? 取り引き相手はオレだろ?」

「勿論、鬼苑君も誘おうかと思いましたが、あの白坂さんと会談中。不意に貴方が抜け出せば彼女たちに不信感を与えかねません」


 藤原は彼女たちの案に乗った。

 というより乗る方が被害が少ないと気付いているからだ。

 このタイミングで裏切りを明らかにすれば、こちらにも飛び火が来かねない。……最終的に二人を切り捨てるにしても、まだタイミングを待つ必要があった。


「なるほどな。確かに筋は通ってるか。オレを置いて勝手にやったけどな」

「おや? もしかして拗ねてるんですか? 意外と可愛いですねぇ」

「ほざけ藤原。見当違いなこと言ってると、手を突っ込んで塞ぐぞ?」


 バッと藤原の周りの男子がガードに入った。

 藤原が手を振るうとゆっくりと開けたが、警戒の色で鬼苑を注視している。


「冗談です。そんなに怒らないください」

「いや、怒ってないぞ? これくらいオレの学校じゃよくあったジョークだ。なぁ? 楓?」

「っ……」


 掴んだ首がビクッと震えた。

 特に握力を強めていないが、後ろから鬼苑の視線を感じたか、必死に刻まれている恐怖を鎮めようとするが、震えがどうしても止まらない。


「に、にしても鬼苑くんもこんな時間にどうしたの? 確かに三時間は話し合いを伸ばすって話だったけど、まだ一時間半くらいしか経ってないよ? ……もしかして白坂さんが怒らせ過ぎて帰っちゃったとか?」


 そんな霧島の恐怖を察して、話題を逸らそうと春野が尋ねる。

 懸命に抑えられてる首を動かして鬼苑を見つめる。精神を集中させて、これでもかと無害で無邪気な娘を演じるが……。



「決まってるだろ? おまえらの報復に来た。綾、楓」



 返ってきたのは、無慈悲な死刑宣告。

 不敵な笑みを溢すと腕を上げて二人を吊し上げる。


「ま、待ってよ鬼苑くんっ! どういうこと!?」

「なんで、なんでよっ! アタシたちは……!」

「待て? なんで? そんな言葉が通じると本気で思ってるのか? 失敗したのは知ってんだよ」


 失敗?なんのことだと二人が混乱している。

 まさか空箱のことを鬼苑は既に知っているか、吊し上げられたまま、どうすることも出来ない。


「とりあえず、二人とも死ね」

「っ……!?」


 首を掴んだまま、地面に叩き付けるつもりだ。

 そう感じた霧島が後ろ蹴りを放った。


「とっ、危ないな」 


 避けられたが、もう一度蹴り入れると手が離れて解放される。

 さらに連続で蹴りを入れて、春野を掴んでいる手も離させようとしたが、迫ってくる蹴りに対して鬼苑は春野を盾にした。


「ほら、蹴ってみろ。得意の『脚式魔法』でこの女をボロボロにしな」

「っ……この鬼畜が!」

「わ、私のことはいいから、逃げてカエデちゃん!」


 止めるしかなかった。蹴りを放つ寸前で止まる。

 その躊躇いが彼女の動きを鈍くする。


「だから、詰めが甘いっていつも言ってんだ」

「──がっ!?」


 素早く伸びた手で頭を掴まれる。

 すぐさま蹴りを放とうとしたが、盾にするように春野が壁にされる。……攻撃出来ない。


「この、卑怯者……!」

「お前らが言うか?」

「鬼苑くん、お願い! 話を聞いて……!」

「断る。裏切り者に慈悲などない」


 一切話を聞くつもりがない。

 その意思を示すように、鬼苑は魔法を発動。


「何度も言ってやる。とりあえず、二人とも死ね」

「お願いだからま──ギャ、ギャァアアアアアア!」

「アヤ! 鬼──ガァアアアアアア!?」


 手袋越しで二人に雷魔法を全身に浴びせた。

 死なない程度の中級位魔法であるが、神経までズタズタに引き裂くような痛みが全身に駆け巡る。意識が飛びそうになっても、また電撃が彼女らの意識を無理矢理覚醒させた。


「鬼苑くん、あまり女性を虐めるのは、どうかと思いますよ?」

「イジメじゃない、これは躾だ。二度と主人を逆らわないように、こいつらに分からせてやってるのさ」


 さらに数分間、雷を浴びせ続けると。

 一旦魔法を解いて、二人を地べたへ落とした。


「少しは反省したか?」

「あ、あ……」

「うぐっ……! き、鬼苑……!」


 二人とも痺れが取れてない。

 春野は声もロクに出せず、倒れたまま痙攣を起こしている。

 霧島はなんとか上体だけ起こしているが、見下ろす鬼苑を睨むだけで精一杯。全身震えて、声も呂律があまり回ってない感じだ。


「どうしてこうなったか? 不思議で仕方ないようだな。……オレもそうだ。こうなるなんて、本当に残念だ。特に楓、お前には期待していた。昔、散々躾けたからな。今さらオレを裏切りなんて出来ないと踏んでいた」

「……何処まで知ってんの?」


 声の震えはある程度は落ち着いたか、起き上がれない中、霧島がそう尋ねる。


「何処まで……何処までだと思う?」

「し、質問してるのはこっち! いいから答えて!」

「その威勢の良さは賞賛するが……今度ばかりは立場を考えるべきだったな」


 初めは笑みを浮かべていたが、後半になってややキレた形相で霧島の頭を掴んで、無理矢理立たせる。


「龍崎刃」

「っ……!」

「言ったよな? アイツに手を出すのは無しだと、あの双子との取り決めだ。次回の特別試験まで待てと、言ったよな?」

「そ、それは……」

「オレが何も知らないと思ったか? 桜香を挑発する程度なら見逃したが、アイツらまで敵対しかねない行動を取りやがって……さらに」


 ギロッと倒れたままの春野を睨む。

 震えは続いているが、視線は鬼苑を捉えており、何か話そうとしても口が震えて出来てなかった。


「綾、お前はどうやったか知らんが、篤たちをまんまと誑かして、アイツを潰すように促したな? その挙句、ダンジョンに潜っていたオレへ嘘の報告までさせた。こっちも既に裏が取れてるんだ。誤魔化しても無駄だ」

「っ……!?」


 どうしてという顔で春野が驚愕。

 魔眼ことは鬼苑は教えてないから方法は知らないようだが、これは拙い過ぎる。

 宝箱の話どころではない。明確な裏切り行為がいくつも暴かれていた。


「お前らは影で藤原と取り引きもして、最終的にオレすらも出し抜くつもりだったな。オレが手に入れる筈だった魔道具を餌にして、龍崎を誘き寄せて白坂も巻き込んだ念を入れた作戦だったが、見事に失敗したようだな」


 空の宝箱を見て鼻で笑う。

 そんな彼に二人は悔しそうに表情を歪めるが、それよりも疑問が出る。

 なぜ彼がそこまで詳しくこちらの事情を知っていたのか。


「おやおや、そこまで存じてましたか、でしたら無駄な嘘でしたね」

「まったくだな。油断も隙もない」

「ふふっすみませんね。ですが、疑問が残ります。今回は蚊帳の外だった貴方が何故そこまで知ってるんですか? 私の知る限り、あなたの方には不審な動きはなかったと思いましたが」


 出し抜こうとしていたのは藤原も同じ。

 しかし、藤原からは全く恐れている気配はなく、鬼苑の所業を目にしても、落ち着いた微笑みを浮かべて尋ねるくらいの大物であった。


「おまえ……やっぱり監視してたか」

「はい、勿論です」


 あっさり認める藤原に鬼苑も頭痛で顔を歪める。


「綾、おまえの作戦にはオレを出し抜くついでに、龍崎を嵌めるのも狙ってたんだろ?」


 案の定、強張ってしまう春野だが、返答なんて求めてないのか、鬼苑は宝箱の側に置いてあるデジカメを拾う。

 霧島が咄嗟に手を伸ばそうとしたが、遅過ぎて間に合わない。


「そしておまえらは撮っておいた動画を利用して、アイツを退学処分へ追いやろうとしている。入り口を塞いだのもアイツの仕業にすれば、より厳しい処分が期待される」

「……だったら、なに? アンタのやり方よりもずっとマシだと思うけど?」


 その通りだ。鬼苑ならもっと容赦なく敵を追い詰める。

 もう否定してもしょうがないので、春野に代わって霧島が吐き捨てるが、鬼苑は小馬鹿にするように鼻で笑う。


「だから詰めが甘いんだ。お前らは」

「な、何が!」

「藤原との取り引きもそうだ。何を求めたか見当は付くが本当にあるかも分からない宝の条件を呑んだ? それを対価にしてもし無かったらどうするつもりだ? ……まぁ、無かったけどな」

「だから何が言いたいんだ! 嘲笑いだけなら……!」


 一方的にボロボロにされて、企みも暴かれて、笑われて、霧島の精神もいい加減限界であった。

 見下ろしている男はとてつもなく恐ろしい存在なのは、中学から嫌と言うほど知っている。


「もう全部知ってんでしょう! だったらさっさとやりなよ、ゲスが!」


 刃向かえばタダでは済まないことも、当然理解している。裏切った時点で彼女たちの未来が真っ暗なのも分かっていたが……。


「けどタダじゃ終わらない! これ以上綾に何かするなら、刺し違えても止める!」


 だけど噛み付かずにはいられない。

 まだ痺れて震える体を懸命に動かして、足腰をプルプルさせながら立ち上がった。


「怖いな。威勢だけは買うが、おまえらの詰めが甘いのは変わりようのない事実だ」


 言うと鬼苑はデジカメを向ける。

 ただ電源は入ってない。いったい何がしたいのかと霧島は怪訝そうに見ていると。


「このカメラには龍崎が篤たちを一掃した動画が入ってる。確かに篤たちが奴を嵌めた部分をカットして全員が口裏を合わせれば、一見アイツが極めて不利な状況に立っているように見える。……だがな?」

「あ、アンタまさか!」


 まさか証拠のカメラを壊すのかと、最悪の展開を想像して霧島は慌てて駆け出そとしたが、痺れが抜けていない体が思うように動かない。

 どうにか立ち上がっている彼女には、もう鬼苑を止める術はなかった。


「オイオイ、勘違いするな。おまえらじゃないんだ。今さらこれを壊しても、オレには何一つ得なんてない」

「お前らって、何でアタシたちが証拠のカメラを壊さないといけないのよ! せっかくアイツや白坂を脅せる交渉道具を!」


 さっきから意味が分からない。

 元々意味の分からないことをする奴だったが、今回の発言は不可解な点が多過ぎる。

 ただこちらをおちょくっているだけではと、霧島は半ギレ状態で拳を構えていたが……。


「ああ、脅せるだろうな。これに映ってる奴が───本物なら(・・・・)

「ま、まさか……」


 痺れと恐怖からずっと黙って倒れていた春野が鬼苑の言葉に反応する。

 まだ立ち上がれるほど回復はしていないが、信じ難い様子で上体を起こすと、呆然とした顔で鬼苑が持っているデジカメを見つめた。


「そ、そのカメラが……私たちにとって不利になる証拠……」

「アヤ?」

「教えて、鬼苑くん……! あなたはどうして、その事を……!」

「そんなことを知ってるかって? 決まってるだろ? そう言ったからだ。アイツが」


 さも当然のように鬼苑は言い捨てる。

 そして興が乗ったか、彼女らが求めている真実を、彼は可笑しそうに告げた。



「お前らはまんまと嵌められたのさ。お前たちが嵌めようとした───龍崎刃にな 」


  

 自分すらも利用した男の名を。

 この件で改めて敵と認めた相手の名を。



 ───ダンッ!


 刹那、彼が片手で持っていたデジカメが消える。

 否、何かの直撃を受けて粉々に吹き飛んでしまった。

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