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おはよう世界、さよなら異世界  作者: キャピキャピ次郎☆珍矛
血飛沫なる運命
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第61話 特定

 「あら、草むしり終わったの?」

 僅かに汗をかいているセトラを見て、小春がからかう。

 「おう、草むしり検定1級舐めんなよ。」セトラも軽い溜息をつきながら畳に座った。

 「難易度どれくらいなのそれ」

 「宅建」

 「おめでとう。よく知ってるわねほんと。って、そんな事言ってる場合じゃないのよ。東京、やばいかも。」

 「・・・やばいかもって言うのは、本拠地的な意味か?首都にアカシクがあるとは考えづらいが・・・。」

 「違う。東京は今頃、多分、大規模な儀式が始まってる。札幌のとは比較にならないかも。」

 「マジか。でも、私らは本拠地叩けば終わるから、それはコースケに任せて、さっさと行こうぜ。」

 「それもそうだけど・・・。とんでもない数の人が死んじゃうかもしれないし・・・。」

 「小春、優先順位をつけようぜ。根本を潰さないと意味ねぇだろ?」

 「・・・・・・ほんと、よく割り切れるよね・・・。」

 「誰だって口だけでしか割り切れてねぇさ。」

 「・・・AAの時より、被害は大きいのかもしれないんだよ?」

 「・・・廃華楽土アザレア・アカシクの通称、何処で知った?」

 「異世界ベータから帰る際に、過去を少し辿ったの。酷い災害だったんでしょ。幻獣と人間の合成獣キメラを生み出して世界を混乱に陥れたっていう、私達と同じアカシクの民。最期は幸助君に殺されたみたいね。」

 「・・・・・・全部は見てないのか。」

 「いや、私の能力は映像で見るというより、事実を知るってだけなの。映像じゃなくて、教科書の内容を見て把握するようなモノで、結果しか知る事が出来ないの。自分の記憶が無いモノは再生できない。」

 「良かった。」


 セトラは胸をなでおろした。

 小春もといマキアの能力が、映像を視るモノだったなら、あまり見なくてもいいモノまで見れてしまうだろうから。

 きっとそうなれば、幸助の事も、自分の事も、アイナの事も、レーヴの事も、幻滅しかねない。

 身体が奇麗な人間は、異世界ベータを経験した者には誰一人として存在しない。


 ――――――まだ、小春は、人を殺していない。


 穢れなければ生きていけなかった人間からすれば、小春の存在は何処か救いのようでもあった。だからこそ、この少女を守らなければならないと、セトラは思ってしまうのだ。


 全てが終わっても、「使命を果たせなかった。」と、過去に囚われたままの人間がいる。

 「死に場所を間違えた。」と、呪いに縛られた人間もいる。

 一度道を踏み外せば、もう元には戻れない。奪い続けた罪を肩に背負い、自分をそれでも肯定し続けなければ、自己を正当化し続けなければ、自己を保つのは常人には難しい。

 心だけ戦場に置き去りにして、人間性を捨ててしまった傷者ばかりしか生き残っていない。


 「・・・未だに、幸助君が人を殺したって、あんまり思えないのよ。現実味がない。」

 小春はうわ言のように続ける。

 「どうしてこんな事になっちゃったんだろう。」


 「自業自得だ。抗っても、抗い続けても、相手と同じ立場で戦ったら、そいつらと同じ目線になっちまう。大義や正義があっても、いつしか同じように目が曇る。」

 「その非日常に私がいるのが、場違いな気もしてる。」小春は溜息をついた。

 「記憶さえ取り戻さなければ、場違いなままでいられたろうに。気の毒なこった。竜が襲ってきたのも、今考えれば合理的過ぎるな。無力な内に小春を捉えておけば、簡単にアカシクの紋章を何かしらに使おうって動けるし。となると、アイナが次は狙われるだろうが・・・。」

 「・・・大丈夫かな、アイナさん。」

 「ま、いいだろ。あの姫様の事だ、どんなピンチになっても何かしら手は打ってる筈。ただ紋章を奪われるだけ、なんて事にはならないだろ。」

 「・・・冷たくない?セトラ。」

 「アイナに関しては、やらかしが多いからなぁ。正直、死んでも同情出来ん。」

 「・・・・・・セトラがそんなに言うなんて。」

 「私は誰に対してもそうだぜ。永く生き過ぎたせいだな。」

 「・・・新手の龍王マウント?」

 「かもな。」

 「認めるんかい。」

 「だから、龍王はこうも思う訳だ。人生の最期くらいは、美しくありたいってな。」


 子供っぽい死生観を語る龍王セトラの表情は、とても無邪気な笑顔だった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 「・・・成程な。ヒタからこの位置だと・・・遠くね・・・?」

 小春の説明を聞き終えたセトラは、スマホに映し出された画面をズームしながら、位置を再度確かめる。

 「・・・何もねぇじゃん。」


 小春が拡大した箇所は、何もない海の上だった。


 「よーく見てよ。」

 「ん?・・・何かあるか?」

 「そう、地図では確認できないのよ。」

 「なんだよ、結局どういう事なんだ?」

 「でもこの位置に反応があるの。私が黒騎士ブラックナイトの端末を使えるって知っている?」

 「は?」

 「黒騎士ブラックナイトはね、この世界にもいるの。空に浮く未確認飛行体としてNASAでも観測されているわ。」


 ―――――実際に、ブラックナイト衛星と呼ばれる物体が、地球の極軌道近くで地球を周回している姿が観測されている。黒騎士衛星・ブラックナイトサテライトと呼ばれるソレは、1954年にアメリカ空軍によって最初に発見されたとされている。一説によると、13000年前から存在しており、地球外飛行物体だとか、旧文明の遺産だとか、推測が絶えない存在として、一部界隈では広く認知されているモノである。


 「・・・マジで?」

 「元々、世界は一つだった。それを考えると、黒騎士ブラックナイトがどういう目的で製造されたか、分かるでしょ?」

 「わからん。」

 「観測機よ。今でいう所の人工衛星ね。幻獣因子が組み込まれた半生命で、意思能力は与えられていないけど、指令があればいつでも自動で帰還して兵器としても運用されていたみたい。今じゃ使い道も無くてずっと放置されているけど、その端末と私はやり取りが出来る。私も既に黒騎士ブラックナイトと同化しているし、そこから映像として直接脳内に送ってもらった。そしたら、面白いモノが見えたのよ!」

 「・・・《箱庭》か。」

 「流石龍王ね。」

 「今龍王要素関係あるか?」

 「アカシクは幸助君の《防壁陣》の要領で、認識阻害の《箱庭》が張られていたの。元々消えた筈のアカシクが復活してるのよ!見た所、あの程度の《箱庭》なら、セトラの《龍星群》なら、余裕で突破できると思う。早く、その魔眼王とやらをぶっ潰そうよ!」


 小春は、腕から黒い装甲を自由自在に生やしながら、笑顔でそう言った。


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