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おはよう世界、さよなら異世界  作者: キャピキャピ次郎☆珍矛
矛盾なる異邦者
51/125

第51話 希死燦々朧ヶ心中

 

 ――――――意味が分からなかった。

 何処から攻撃されたというよりも、原理が理解不能だった。

 幸助は、身体がバラバラになりながら、冷静に物事を俯瞰し、この現状を理解しようとしていた。


 黒が、爆発する?《宵撃》とは、一体どういう能力なんだ・・・?

 余りにも、普通の能力ではない。

 これじゃ、まるで―――――――――――――――


 ――――――――幸助は、全てを理解すると同時に、吐き気を催した。

 そんな事があっていいのか、と。


 更地になった荒野で、腕と足をもがれながら、胴体には自らの刀が一部刺さったまま、トルソーのようになった黒焦げの幸助に、影を纏った不明の存在が近づいて来る。おそらく、とどめを刺しに来たのだろうと推測する。


 「―――――姿を見せないのは、外見にコンプレックスでもあるのか?」


 ボロボロの状態でも、吸血鬼は気丈に振る舞う。頭がやけに冴えていた。茶化しでもしないと、自分の心が保てない気がしたからだ。


 「・・・お前が、コースケか。大した事ないな。マクガフィンの奴は買いかぶり過ぎだ。」


 ノイズがかった声で、そいつは呟く。


 「いいとこ取りって訳か。どおりで、セトラより手強い筈だ。」吸血鬼は嗤う。

 「・・・嗤うな。」

 「いやなに、嗤うしかないだろう。お前の製作者は頭がイカレているよ。」

 「頭がイカレているのはお前だ。死ぬ間際で、どうしてそんなに減らず口が叩ける?」

 「この程度で死ねるなら、俺はもっと早く楽になれただろうよ。」


 ―――――瞬間、幸助は全身を一瞬で修復し回復させ、立ち上がる。

 彼の主軸はあくまで回復魔法。自己治癒するには、吸血鬼の体質と合わせて一瞬だった。


 「――――話してみたかったんだ。札幌を滅茶苦茶にした龍がどんな奴なのか。」

 吸血鬼は全快になり、嗤う。驚異的な生命力、そして回復力。太陽の下以外では無敵とも呼べる生命力を持つ《自殺》の吸血鬼が、嗤いながら語り掛ける。


 「一つ、質問していいか?」

 「答える義理は無い。」影の者が構える。

 「人生は、楽しいと思うか?」

 「―――《宵闇トワイライト》。」


 影に包まれた奴が、姿を消した。

 これは、宵闇龍ゼノンが使うスキル《宵闇》。影や黒に身を隠し、憑依し相手を操作する。この《龍世界》は全てが影。ならば、本当に奴の正体が自分の思っている通りなら、次にやる行動は一つしかなかった。


 「―――――――《洗脳ブレインハック》。」


 背中に、奴の手が触れる。奴の精神が吸血鬼の中に侵入する。

 ――――――が、吸血鬼はこれを待っていた。何故なら、幸助を《洗脳》する事は、セトラには出来なかったからだ。その心の中を除く行為は、常人の精神では耐えられない。

 彼は常に、《自殺》についての思い出がフラッシュバックしている。セトラですら、彼を《洗脳》し、矯正する事は敵わなかった程に、心は深く闇に沈んでいる。


 幸助の最悪な記憶が、影の者に流れ込んだ事で隙を見せた瞬間に、幸助はその手を掴み、再び質問をする。


 「―――――もう一度質問する。あの時、こうしておけばよかったなと思う事が、お前にはあるか?」

 「―――――《爆撃》。」


 腕を掴んでいた手が爆発し、幸助の腕が吹っ飛ぶ。だが、吸血鬼は嗤いながら問う。


 「―――――なぁ、俺と一緒に、楽にならないか?」虚ろな目で、吸血鬼は問いかけた。


 ――――――――――その瞬間。

 視界が、真っ暗になった。それが、《箱庭》によるモノだとすぐに分かった。

 真っ暗で、何も分からない。何がどうなっているのかも、理解が及ばない。


 だが、そんな中で、その吸血鬼の声だけが、響き渡る。


 「決めた。俺はお前と死ぬ。師匠ごめんなさい、あの時一緒に死ねなくて。でも今行きますから、待っててください。俺、貴方となら地獄も怖くありません。」


 その妄言的でありながら一方的な告白と、気味の悪い殺し文句に、影の者は恐怖を抱いた。

 《洗脳》時に見たあの光景の数々。そして、押し寄せてきたどす黒い、底の無い感情。


 それは、狂気を超えた何か。


 そして、吸血鬼は、その《箱庭》の名前を唱えながら、嗤った。


 「――――あの世はすぐそこだ。だからせめて、《希死燦々朧ヶ心中(いっしょにしのう)》――――――――――。」


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