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おはよう世界、さよなら異世界  作者: キャピキャピ次郎☆珍矛
矛盾なる異邦者
43/125

第43話 そして時は・・・


 コンコンと、ドアをノックする音がしたので、幸助は急いでパンツを履き、開けた。

 開けると、そこにはレーヴがいた。


 「どうした?何かあったか?」

 「え、きゃあああああああ!!!変態ッ!!!」


 ほぼ裸同然の幸助を見るなり、レーヴは目を覆った後、コースケを押した。


 「グッ―――――――――!!!!!!!!」


 幸助は、レーヴに突き飛ばされる。とんでもない力の奔流に押されていくように、吹き飛ばされる。何とか床に裸足を当て、摩擦で勢いを殺した。もう少しで窓ガラスに激突する所だった。なんつーパワーだ・・・。


 「・・・なぁ、俺の裸はもう洞窟で見ただろ・・・何を驚いているんだ・・・。」

 「いきなり裸で出てくると思わないじゃない!!」

 「下は隠しているんだし、いいだろ・・・。」

 「良くない!」

 「・・・まぁいいや。で、どうした?俺は今から探索に行こうとしていた所なんだが・・・。」

 「一緒に行かない?」

 「・・・うーん・・・。アイナは今何しているんだ?」


 レーヴが不自然に身体をびくつかせた後、誤魔化すように答える。


 「さ、さぁ。違う部屋だし、分かんない。」

 「・・・・・・ふーん。まぁいいか。どうせ死なないもんな、姫様。」

 「・・・なんか冷たくない?」レーヴは姫様の従者の態度に不満を覚えた。

 「いや、どうせロクでも無い事やってんだろうなと思って。大体、考えている事分かってしまうんだよ。俺も聖人じゃないし、アイナの好きなようにさせるよ。」

 「・・・意外。私、貴方の事、融通の利かない正義マンだと思っていたのに。」

 「どう思ってたんだよ俺の事。でも、アイナが危険な事には変わりはない。ホテル全体に《防壁陣》張っておくか。」

 「それ、そんなポンポン張れる代物じゃないでしょうに・・・。」



 ――――――そうして、幸助とレーヴは札幌の夜の街へと繰り出した。

 この期に及んで、幸助はある事を考えていた。どうにかしてすすきのに行けないか・・・?


 一回、大人のお店とやらに行ってみたかった。どんな所なんだろうという純粋な興味からだ。それに、人が多い所に行けば、《虚無病》に侵されている人々がどの位の数いるのか、把握出来るかもしれない。だが、今はレーヴがいるし、いつ危険な状態になるか分からない。


 それに、大人の店に行っても、何かいかがわしい事をする気は起きなかった。

 どうせ子供も作れないというのに、性に振り回される自分を自覚するのが嫌だったのだ。


 感情渦巻く愛と欲望。それがただ見たいだけなのだ。とすると、そういったワンナイトに発展しやすそうな場所と言えば――――――――――


 「・・・・・・クラブだ。」


 幸助は低い声で、思い浮かんだ発想を噛み締めるように、呟いた。


 「え?」レーヴが急な呟きに反応する。

 「クラブに行こう。」

 「・・・・・・クラブ・・・?」

 「・・・・・・やっぱやめとくか・・・。」


 幸助は、セトラと小春が異世界に行っていた事を思い出した。

 2人は今頃、ゼノンと対峙して、とんでもない目にあっているかもしれない。そう思うと、自分達がただ遊んでいるだけでは示しがつかない気がしたのだ。


 「クラブって何?」

 「・・・今のは聞かなかった事にしてくれ。」

 「えー!!気になるって!!」

 「で、どうする?何処か行きたい所とかあるか?巡回するついでに寄ってもいいぞ。」

 「クラブとやらに行きたい。」

 「ねぇ話聞いてた?あんまり俺の傷を掘り返さないで欲しいんだけど。」

 「さっきアイナが、デリバリーなんちゃらを君が呼ぶかもしれないって妙に不安がってたけど、それ何?」

 「呼ぶかバーカ!!!俺そこまでエロくねぇって!!」


 そんな事を話していると、あっという間に歓楽街に躍り出た。

 通勤を終えたサラリーマンの集団が街へ流れ込み、消えていく。その中に、《虚無病》と思わしき人間も何人かは見つけられた。


 「・・・・・・いるな。」

 「あるね、クラブ。」


 レーヴがいかにもなピンク色の電工看板を指差して呟く。ランジェリークラブと書かれている。いやクラブはクラブでも、あれは違うって多分・・・。


 「あれは俺の言ってるクラブじゃないから・・・。あれ普通に風俗だから・・・。」

 「風俗って、何?」

 「嘘だろお前・・・。知らなくてさっきまで色々言ってたのか・・・。」

 「いや私、勇者だったから常識をあまり知らないのよ。」

 「それを当然のように言うな。・・・おいおい、魔剣使いのブラッドとパーティ組んでたんなら知ってるだろ絶対。」

 「何で?」

 「俺、あんな風俗狂い見た事無いんだけど。英雄色を好むって言葉はまさにあいつの為にあるとさえ思ってんだけど。」

 「だから風俗って何なのよ?」

 「俺の口からじゃとても言えない事を、お金払ってやるんだよ。」

 「・・・・・・コロシアムみたいなモノかしら?」

 「戦闘狂過ぎるだろ。何で金払って殺し合いしてーんだよ。」

 「違う、見るのよ。」

 「プロレスか何かと勘違いしてんじゃねーか・・・?」

 「プロレスって何?」

 「ソクラテスかおめーは。問答法してくんじゃねぇ。」

 「だから、風俗って何よ。言いなさいよ!」

 「そこまで言うなら言うぞ?後悔しても知らねーぞ?知らねーからな?」

 「早く。」

 「・・・・・・お金を払って、性行為します。」

 「・・・・・・・・・・え?」


 レーヴが、青天の霹靂のような表情に変わった。

 何で俺が、この無知な勇者に対して性教育みたいな事しなきゃいけないんだと思いながら、続ける。純白な勇者も、少しは穢れてもらった方が生きやすくなるだろう。


 「料金は先払い制で、あの店の中にはな、裸になった女の子がいるんだ。で、男がどの女の子がいいか、全体の写真を見て指名する。大体顔が隠されていたり、加工されていたり、明らかに本人と違う写真の子だったりする。その辺も含めてギャンブル要素が絡むな。チェンジ出来ないパターンもあるからそこはよく注意だ。よく言ってたな、ブラッドは。

据え膳食わぬは男の恥だって。どんな子が来ても俺は抱くって。」

 「・・・え、え・・・・・。」

 「あれは箱型のヘルスだから本番行為は――――――って言っても分かんねぇか。まぁブラッドが生きていたらこの場所は天国だったろうな。異世界ベータは種族が多い分、病気とかアレルギー反応的に色々と面倒な事多かったし。ほら、よくブラッドが急に体調崩したりしてなかったか?」

 「・・・・・・・・・してた・・・・・・。」

 「あれ、性病貰ってたんだよ。クロエとかはお前に知って欲しくなかったから必死に誤魔化してたみたいだけど。」

 「・・・私の中のブラッド像が、崩れていく・・・。」

 「まぁ気持ちは分かる。性を除けばあいつ、ただの仲間思いな好青年だからな。俺もよく一緒に連れ回されたもんだよ。・・・本当、ロクな目に遭わなかったけどな。」

 「・・・・・・君も経験あるんだ・・・・・・。」

 「言っただろ?ロクな目に遭わなかったって。」

 「?」

 「当時の俺は師匠と行動を共にしてたから、すぐにそういう事が起きようとするとバレるんだよ。だから、店に入った瞬間に師匠が駆け付けてきて、誘ってきたブラッドと一緒にボッコボコよ。結局、こういう店では、何一つ出来んかったな。」

 「――――――ああ、魔王軍元幹部、スレイヤーの事ね。って、こういう店では・・・?」

 「・・・え、まさかお前、俺の事を今まで童貞だと思っていたのか・・・?」

 「・・・え、違うの・・・?」

 「風俗知らなくて童貞は知っているのか・・・。」

 「それはだって聖書で習うでしょ。ってそういう事じゃないわよ!本当に!?」

 「・・・普通異性にそんな事聞くか?お前、エロくね・・・?」

 「何で君が引いているのよ!!」

 「デリカシー無いぞお前・・・。さっきから色々と聞いてくるばっかりだし・・・。」

 「あー!!もういいわ!!クラブとやらに行きましょう!!!」

 「はいはい・・・行くか・・・・・・。」



 雑踏の中をかき分けるように歩く。

 端から見れば、カップルのように見えるのだろうかと考えてしまった。

 それ程までに、勇者レーヴは鎧をしていなければ、可愛らしいのだ。


 その隣にいるのが、筋肉の塊みたいな奴だから不釣り合いだなぁと幸助は思った。

 そして、この少女がこの街の中で一番力が強いなんて誰も思わないだろうなぁ・・・。


 ネオンが夜の街を煌々と照らす様は、都会では当たり前の光景だ。

 異世界ベータとは違い、科学技術が発展した先進国ではただの日常だ。

 電気で電車が走り、光り、家事全般の煩わしい行為が機械処理される。お金を払えば当たり前の対価として便利が手に入る。全てが簡略化され、人の営みの中にそんな当たり前が根付いている。魔力を資源とした異世界とはまた勝手が違う。


 色んな人間が闊歩し、いくつもの電工看板が夜の街を裂くように主張している様は、レーヴからすれば新鮮だったようだ。


 「眩しい。なんか目がチカチカする。ねぇクラブ、まだ?」

 「うるせぇ今探しているから・・・。」

 「もう夜の0時過ぎるんだけど。」

 「嘘つけ。さっき外出たばっかじゃねぇか。」

 「いや本当だって。ほら。」


 ビルに張り付いている広告用の映像板画面左上に、現在の時刻が表示されていた。

 時刻は、23:45分。


 「・・・もうそんなに時間が経っていたのか・・・?」

 「早いね、時間が経つのって。」

 「・・・おかしくないか?」

 「・・・やっと気づいた?」

 「嘘つけお前も今気づいただろ。」


 違和感があった。何故なら、まだ感覚としてはホテルを出たばかりだったからだ。

 それが、もう3時間も経過している。こんな事、ありえるのか・・・?

 あんなくだらない言い争いをしている間に、3時間も浪費していたのなら大分無駄な人生を過ごしている感覚だ。もしそうなら最悪だ。


 「札幌内は、時間の流れ方が違うとでも・・・?」幸助は頭を悩ませる。

 「いや、もしそうなら、私達含め、他の人たちの動きも早くなっていなきゃおかしいよ。」

 「そうだな、そうだよな。時間のズレが俺たちに分かるのがおかしい。」

 「だから、あえて時間が削られていると考える方が自然かも。思えば、ホテルにチェックインするのもギリギリだったし、あそこから疑うべきだったかも。」


 「・・・・・・あ。そういや、アイナが急に時間の流れがどうたらでホテルに間にあわないから走れって言ってた。」


 幸助は、先程の会話を思い出していた。




 「――――――予定通り、中島公園に着いたわね。こっから南北線に乗れば札幌駅まで行けるけど、まぁ歩いて行けるからいいでしょ。さ、コースケ、おんぶして♡」

 「・・・分かった分かった。」

 「・・・あ、急いでコースケ。やっぱり走ってホテルまで行きましょう?時間の流れ的に、間にあわないかもしれないわ。」

 「何でだよ。分かった分かった。」




 おいおいおい、あの姫、最初からこの事態に気付いていたのかよ。

 何でそんな大事な事言わねーんだよ!!!!


 「あの野郎・・・気付いてたんなら言えよ・・・・!!!!」

 「コースケ、やっぱりおかしい。もう10分経過している。」

 「はぁ!?」


 映像板を見ると、時刻は23:55になっていた。

 今の会話で10分が経った?意味が分からない。

 他の人は気付いていないのか?


 ――――――ああ、そうか。

 《虚無病》だ。気付かない奴も多いんだ。


 それか、何らかの理由で気付けない催眠のようなモノが全体に掛けられている。

 でも、そんな事出来るのは、神か、精神に干渉する幻獣、龍でしか――――――――


 ここで、幸助はようやく理解する。

 いや、もっと早くに気付くべきだった。人間や通常の幻獣が会得する《箱庭》とは違い、龍の持つ《箱庭》である《龍世界》は、規模が違う。

 宵闇龍ゼノンの《龍世界》は、現実の裏世界をそのまま模したような、星単位の空間を作り上げるとんでもない規模の《箱庭》だった。幻獣の中でも、龍とはそういうモノなのだ。


 ならば、龍なら、札幌全体を覆う《龍世界》を作り上げる事が出来るのではないか。

 そして、龍は精神に干渉が可能。セトラのような《洗脳》が出来るモノもいる。

 今回もその手口としか思えない。


 ならば、時間の流れが狂っているのは、何なのだ・・・?


 また、別の能力者がいるとでもいうのか・・・?

 そもそも、目的は何なのだ。何故、《虚無病》を蔓延させる必要がある。


 コースケは、自分の体内時計を信じて、指折りしながら時間を数えた。


 「・・・どうする?コースケ。」レーヴが時刻を見ながら、不安げに訊く。

 「・・・何故、時間を早くする必要があるんだ?」

 「何故そんなに冷静でいられる!?」

 「・・・レーヴ。一応、戦闘準備しとこう。12秒で1分か。5倍速か、理解した。」

 「5倍の速度で時間が流れていると考えていいんだね。」

 「そういう事だ。という事は、周りにはいつも通りの時間を強制させ、自分だけが倍速で動ける特殊スキル持ちがいるな。悪趣味な《龍世界》だな。一体誰がそんな――――――」


 2人とも魔装具を展開した所で、時刻は00:00となった。


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