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おはよう世界、さよなら異世界  作者: キャピキャピ次郎☆珍矛
序章
4/125

第4話 日直の覇気

 ・・・・・・いや、俺も予想は出来ていなかった。

 まさか、制服が破れるとは思っていないじゃん。

 で、それに今気付いたとは思っていないじゃん。花瓶から反射する自分の姿を見て初めて気づくなんて思っていないじゃん・・・。

 マジでいつ破れたんだこれ?


 破れる理由は幾らでも説明できた。

 制服が筋肉でパッツパツだった上で、あんな激しい動きしたらそりゃ厳しいよ。

 で、あの時は遅刻で焦っていたから全く気付いてなかった、と。


 もう全部逆じゃん・・・。目立ってイキろうとしているみたいじゃん・・・。

 それを俺、天然でやっちゃってるじゃん・・・。マジで救えねぇ・・・。


 着席したはいいものの、目のやり場に困った。全員が俺を見ているのが分かるのだ。

 堅気とは思えない傷のついた身体を見せつけるようにしているなんて、なんか自殺した時についた跡を見せて、「これお前らのせいだからな?」って意思表示しているみたいじゃん。でも、ムキムキである理由が全く説明がつかないのが更に事態を混乱させている。


 要は、海老原幸助という人間が、完全に未知の存在として扱われている。

 もはや妖精に近い。筋肉の妖精だ。

 いない者として扱うには、存在感があり過ぎる。


 ・・・・・・・・・・・・・・・寝るか。


 俺は何も考えない事に決めた。


 ふて寝だ。ここで陰キャムーヴをかますんだ。

 机に臥せば、誰も話しかけてこなくなる・・・・!!!


 思いっきり机に頭をつける。すると、勢いが余り過ぎたのか、頭が付く直前に凄い音が鳴った。少し、机が凹んだみたいだ。頭の部分だけ凹んでいるので、寝るにしてはフィット感が気持ちいい。


 ・・・・・・・・・・・・・・・俺、何してんだろ・・・。

 ―――――――――――帰りてぇ・・・・・・。


 2分くらい静寂が続いた。ちなみに全く眠気など来ていない。これからどうしようかという謎の焦りと、破れたままの制服をどうしようとか、寝たふりして本当に良かったのかとか、もう色々と後悔の海を漂っていた。

 途端、異世界が恋しくなってきた。マジで殺し合いしている時の方がマシかもしれない・・・・・・。

 俺やっぱ社会不適合者かもしれんな・・・・・・。


 そして、担任の武田先生がやってきて、何事も無く朝礼が始まった。

 現代文の女性教師だ。髪はボサボサで常に気怠そうにしており、やる気が無いのが特徴だ。

 僕の虐めを知っていながら、知らないフリをしてきた人でもある。


 「えーと、今日の日直は・・・海老原君、お願い。」


 よりによって俺かよ。

 ・・・・・・でも、ここはチャンスだ。次は失敗したくない。

 あーもう、緊張する・・・・。

 ここがいっそ、元気よく―――――――――――――


 「・・・・・・・起立!!!!!!!!!!!!」


 「ひぃっ!!!」

 「うわっ!!!!」


 生徒が、悲鳴を上げる。机が倒れるような音がこの教室に限らず、各地で響いた。


 学校が揺れた。やばい。力の調整をミスった。


 幸助は、ビリビリとした根源的恐怖を細胞に植え付けるような、そんな発声を行った。

 これは異世界で身に付けた、殺意を身に纏う発声法、《響慄きょうりつ》の力。無用な戦いを避ける為に、意思無き悪意の獣との力の差を分からせて退ける力。魔力を乗せてスキルとして運用するが、異世界では争いが多かった為、精神的に追い詰められたり、周りの敵に囲まれたりした際に、幸助が無意識下で行う防衛本能そのものだった。


 その声は魔力を乗せる事で、更に爆音へと変化する。


 幸助がやらかしてしまった色々なものを取り返そうと、焦って大声を出そうとしたせいで、その《響慄》の力の僅かな一部が出てしまった。


 「・・・・・・・礼。」


 礼は流石に、小声で言った。もうやべー奴じゃん。

 俺マジで何してんだろ。

 クラスの俺を見る目が、完全に異端なものとしての視線になっていた。

 まあ、それは虐められてきた時も同じだったけど、今回ばかりは完全に自分が悪いので罪悪感を強く感じた。


高評価、ブックマーク宜しくお願いします!!

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