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おはよう世界、さよなら異世界  作者: キャピキャピ次郎☆珍矛
矛盾なる異邦者
34/125

第34話 《龍世界》で小春は弓を引く


 「・・・よし着いたな。ここがゼノンの居場所、《龍世界》だ。」


 そうして、2人は湖畔に辿り着いた。狭いので、セトラは人型に《変身》している。

 周囲は木々で埋め尽くされており、辺りは自然一色だった。そこに、ぽっかり穴が空いたように湖があるものだから、小春は戸惑った。

 まさか、この湖の中にいる?・・・溺れない?龍って水の中平気なの・・・?


 「・・・ここを潜るの?」

 「言うと思った。違う違う、ゼノンの能力は《宵闇》。あいつは影の中に、《龍世界》を構築しているんだ。にしてもこんな辺境に作っていたとは。本当に隠居してたんだな。」

 「ねぇ、《龍世界》って何?」

 「龍が使える結界術よ。《箱庭》とも呼ぶわ。幸助の《防壁陣》も一種の《箱庭》の一つだけど、あれは《結界》の機能しかないもの。それよりも強固な概念世界だと思えばいいわ。」

 「・・・よく分からないけど、なんか凄そう。」

 「なんか凄そうじゃなくて凄いんだよ。自分が得意とする能力を極めた先にある概念世界なんだから、外の物理法則や魔法が通用しない場合もある。」

 「・・・えぇ・・・・。」

 「まぁ、入ってみたら面白いぜ。」

 「・・・いや、どうやって入るの?」

 「まぁ見てなって。今から干渉する。」


 そう言って、セトラは湖の水に手を突っ込んだ。

 すると、湖の表面が、揺れ始める。手を入れた箇所から水が波打ち、波形を作っていく。

 そして、水の色が、次第に失われていく様子を小春は見た。

 青く澄んだ空色の湖が、影が落ちたように暗くなり、沈んでいく。

 色を失ったそれは、完全な灰色となった。


 「よし、こんなもんだろ。こうも上手く干渉出来るって事は、相当弱ってるな。」


 手を引き抜いて、肌についた水を払いながら、セトラが呟いた。


 「・・・・・・これが、入口って事?」

 「そう。これが、あいつの《龍世界》、通称・《反転鏡界ミラージュ・ワールド》。さ、行こうぜ。」

 「え?・・・ちょ、わあああああああああああ!!!!!」


 小春はセトラに手を引かれて、その色を失った湖にダイブした。やっぱ潜るんじゃんか!!!!

 こんな急にじゃ、溺れるって!!!!!


 ―――――と思ったら、すぐに水面に上がった。え、もう終わり?

 セトラが先に陸に上がると、浮き上がってきたセトラの手を引いて水面から脱出した。


 「――――小春、成功だ。《反転鏡界ミラージュ・ワールド》に着いた。」

 「・・ごほっごほっ・・・。え?」

 「見ろ小春。周りの景色を。」


 小春は、顔の水を拭いて目を開けた。

 ―――――するとそこは、色の無い世界だった。

 湖だけが蒼く澄んだ色をしており、それ以外の自然は全て、黒に近い灰色をしていた。

驚いたのは、さっきまでいた周りの湖の景色と、全く一緒だった事だ。木々が生え、草花が咲いていた周辺の景色は、形だけはそのままに、色彩だけを失っていた。


 「・・・近いな。私のワイバーンが・・・成程、そういう事か。よし小春。背中に乗ってくれ。」

 「・・・う、うん・・・。」


 小春はまだ現実を吞み込めないまま、セトラの背に乗った。すると、その状態で《変身》をして、セトラは龍の姿へと戻り、飛行を開始する。


 「この世界の王宮に、ゼノンはいる。」セトラが言った。

 「王宮って・・・さっきまで居たとこでしょ?」

 「そう。成程な、通りであの龍の少女が薬屋の位置を把握していた訳だ。」

 「・・・どういう事?」

 「《反転鏡界ミラージュ・ワールド》はな、表の世界をそのまま、鏡のように投影した世界なんだ。だから、今来た道と反対側に向かっているけど、この先にあの王都ミレニアムがある。」

 「・・・鏡のように、反転しているって事?」

 「そういう事だ。――――ああ、クソ。やっぱりいやがる。小春、戦闘準備しろ。」

 「え、うん、分かった。」


 小春は慣れない手つきで、魔力を解放し、先程買った魔装具を展開する。

 女勇者レーヴが身に付けていたタイプの魔装防具の最新型だ。身体表面を覆うように魔装具が鎧と化し、身を守る盾となり、状況次第では矛となる。


 魔装武具と一体化する事が可能で、小春はすぐに弓型の魔装武具を右手甲に取り付けた。

 脚ユニットから魔力を噴射し、勇者のように空を飛行する事も可能だが、そこまでの練度は無かった。まだ付け焼刃の段階で、敵と戦わなくてはいけなかった。


 「―――――前衛にワイバーン2体・・・だけか。こりゃマジで弱ってるなゼノン。よし小春、実戦訓練だ。今まで私が教えた方法で、ワイバーンを仕留めてみせろ。」

 「・・・えっ!?いきなり2体ですか!?」

 「大丈夫だ、いける。その弓は特別製だ。しっかりとイメージをしろ。追尾し補足する、コースケの弓のイメージかつ、自分が得意とする方法で打つんだ。」

 「・・・分かりました。」


 小春は、呼吸をして集中した。

 遠くから迫る竜に狙いを定め、弓道の姿勢を作る。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 「・・・え?俺に弓を作って欲しい?」


 異世界に向かう前日の夜に、セトラは幸助に提案した。

 

 「そう。小春の今使っている魔装具じゃ、心もとない。最強の矛が欲しい。」

 「・・・う~んそうだなぁ・・・。今レベルで言うと、小春はどのくらい魔装具を扱えているんだ?」

 「10が満点だとしたら、7までは出来るかな。魔力装填から解放までの動きは完璧ね。」

 「それかなり凄いな。あんな短期間でそこまで・・・?」

 「いや、私もかなり驚いている。凄い成長だよ。」

 「・・・弓かぁ・・・。うーん、どれとどれを掛け合わせて作るか・・・。」

 「・・・ねぇ、コースケって、追い込まれないと《真創具顕現リクリエイト》成功しないとか言ってなかった?」

 「ああ、そうだな。ギャンブルみたいなもんで、結構失敗もする。」

 「そこで、提案があるの。レーヴ、話は聞いたでしょ?部屋入ってきて。」

 「え。」


 幸助は、嫌な予感がした。そして、レーヴが部屋に入って来た途端、唱える。


 「―――――《テレポート》。」


 ――――――そして、再び焦土と化したグランドキャニオンに連れていかれたのだった。



 「おいおいおいおいィ!!!どういう事か説明しろおいおいおい!!!」


 「――――えー、という訳で、今からコースケには、私とレーヴ、両方の相手をしてもらいます。」

 「・・・はぁ!?無理無理無理!!!お前マジでふざけんなよ!!!」


 「・・・私も、《極炎斬刃レーヴァテイン》の練習がしたい。君が勇者剣を壊したんだから、せめて練習には付き合ってよ。」

 レーヴが幸助の罪悪感を抉る正論をぶつけてくる。


 「・・・いやいやいや!!それでも2人がかりは良くないって!!爆撃コンビが揃うのはマジでマズイって!!!俺今度こそ死ぬから!!!」

 「そんな訳無いじゃない♡」セトラが妖艶に笑う。

 「訳あるわボケ!!!!レーヴと一騎打ちだったら考えてやるよ!!!」

 「それじゃあ意味ないじゃない♡コースケには追い込まれてもらわないと!」

 「もうやだみんなあたまおかしいぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!痛ってぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!俺の扱い雑過ぎィィィィィィぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」


 その日、とんでもない量の《爆撃》と、全てを焼き尽くす熱が幸助を襲った。


 ――――――そうしてグランドキャニオンは再び、前より酷い焦土と化した。

 お互い決死の全力を尽くした結果、こうして新たな魔装具が誕生したのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ――――そんな経緯でこの弓が出来たとは知らず、小春は魔力を装填する。


 「説明した通りだ。《煌星夢幻弓イマジナリー・ダスト》の使い方は――――」


 セトラが説明しようとした所で、小春は《煌星夢幻弓イマジナリー・ダスト》を発射させた。


 「――――魔力装填・解放ッ!!!!」


 弓道の構えから放たれたその光輝く一本の矢は、右前方の竜を貫いた後、更にその勢いを崩さないままもう一方の竜を貫き、その竜達が命絶えるまで、永遠に追尾し、貫き続けた。


 絶命まで追いかける光の矢を放つこの魔装具こそが、小春の新たな力だった。

 ――――やがて、2体の竜が力無く落ちていくのを見て、セトラは呟いた。


 「やっぱりえげつねぇなこの魔装具は・・・。」


 セトラは、昨日の戦闘を思い出し、苦虫を踏み潰したような気持ちになった。


ありがとうございます!!

ペース遅れますがよろしくお願いします!!

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