第33話 説明
小春に丁度いい魔装具を買い、それを装備した後すぐに王都を離れ、龍となったセトラに乗った所で、我慢が出来なくなった小春は訊いた。
「・・・いい加減説明してよセトラ。どういう事なの?」
「ああ、すっごい分かりやすく説明すると、あの子は龍だ。」
「・・・・・・え?セトラと同じ龍!?」
「龍・・・そして竜は、相手の思念を読み取る力がある。」
「え?初耳なんだけど。」
「小春がワイバーンに襲われた時、小春がコースケの事を知っているというような事を叫びながら襲ってきたって言ってただろ?あれはそういう事。ワイバーンはコースケを知る人物を殺すように、何者から命じられた。だから、そういう行動を取ったって訳だ。」
「・・・確かに、何で考えてる事が分かるんだろうって、思った。」
「龍種は成り立ちが特殊でな。人間の精神的な部分を察知する事が出来る。私の能力、《洗脳》は、読み取る機能を攻撃に転じた、いわば龍の基礎能力の延長線上にある力なんだ。まぁ、ここまでの練度は私にしか出来ないから、《洗脳》自体は私の特殊能力だと思ってくれていいよ。だから、私は感情のセンサーが普通の龍より敏感なんだ。・・・ま、普通に龍なんてそうそういないけど。とにかく、他人の感情や考えている事、まぁ大体視るだけで分かる。で、あの薬屋にいた少女は、大怪我を負った瀕死のゼノンっぽい人物を思い浮かべながら薬を買いに来ていた訳だ。それが分かったから、即座にああいう行動を取った。」
「・・・・・・ちょっと待って。相手も龍なら、セトラの意図も分かるんじゃない?」
「いい所に気付いたわね小春。やっぱり筋がいいわ。そうなのよ、普通の龍なら気付かれるわね。でも私は元々そういうのが得意だから、考えている事と、全く違う信号を送って完全に騙せるわ。あの場ではあくまで、常連を演じて見せた。あの女店主が魔力耐性低かったから助かったわ。セトロちゃんってちゃんと呼ばせられたもの。」
「・・・・・・え、あれ、《洗脳》してたの!?あの人を!?」
「あくまで私に対する認知をちょっと弄ったってだけだから、副作用は起きないだろうし大丈夫だよ。やろうと思えば、小春でも目を視るだけで出来るぜ。流石にコースケとか、アイナとかレーヴとかには無理だけど。」
「怖い事言わないでよ。」
「小春にはしねーって。する必要がねーし。」
「・・・もしかしたら、あの夜に《洗脳》されてる?」
「2人で語り合った夜か。だからしてねーって。私はちゃんとした目的ねーとこの力使いたくねーんだよ。」
「良かった、安心した。」
「安心しとけ。・・・でも謎は多い。まさかゼノンがあんなにボロボロになっているとは思わなかった。渡した薬の効果は本物だ、少女はきっと今頃薬をゼノンに使っている事だろう。だが、誰が今の奴を、あんなにやれる・・・?」
「・・・・・・マクガフィンが言っていた、魔眼王の仲間じゃないかな。」
「それしか考えられないな。・・・厄介過ぎるな、今回の敵は。」
「・・・ゼノンって人は、強かったの?」
「人じゃなくて龍な。そりゃあ、強い。私と同等・・・うーん、私以下?うんまぁ一緒くらいって思っていいよ。相性的には私が有利だから、戦ったら私が勝つだろうなとは思うけど。あいつは、能力がちょっと面白いんだ。」
「能力?セトラは《洗脳》でしょ?」
「私は《洗脳》の他には、《爆撃》とか色々持ってるけど、あいつが得意とするのは、名前の通り、《宵闇》だ。周りが暗ければ暗い程強くなる。闇と同化して、その間攻撃も受けなくなるし、姿も現さなくなるけど、一方的に攻撃できるっていう、せこくて龍らしくない能力してるね。他にも、他人の影に隠れられたりとか、色々。龍の癖に小回りが効くし、敵にするとこの上なく厄介だよ。」
「え、普通に強そう。」
「そーなんだよー。認めたくないけど、あいつは強いんだよ。簡単に何処の馬の骨か分からん奴にやられる奴では絶対に無い。」
「・・・・・・じゃあ尚更、事情を聞かないとね。セトラは、ゼノンと、その、仲は?」
「ん?ああ、最悪に悪い。敵対してたし。」
「・・・・・・素直に話してくれるかなぁ・・・・。」
「私は、これでもあの異世界組の中でも一番の常識人だからな。」
「それは分かります。セトラさんが一番空気読めますから。」
小春の脳内で、アイナとレーヴ、セトラ、そして幸助を思い浮かべた。
この中で誰が一番、性格としてまともかと言えば、絶対にセトラだった。セトラも変な所はあるが、まだ常識の範囲内にとどまっており、日本に来た時からずっと、日本の事について独自に勉強し、学んで馴染もうとしていた。だから小春もそんな、真面目なセトラを信用出来たのだ。
・・・・・・セトラを除く他3人は、どう考えても異常者としか思えなかった。
傷だらけ筋トレ馬鹿、世界遺産破壊系脳筋女、赤ちゃんプレイ大好き姫。
龍王かつ龍人が一番まともって、どうなんだ・・・・・・。
「だから安心してくれ。多分大丈夫だ、しっかりと意見交渉する。小春はもし何かありそうだったら、魔装展開していの一番に逃げてくれな。一応、安全は完全には保障出来ない。いや、多分ゼノンも、魔王無き今はそんな無害な人間を攻撃するような事しないと思うんだよ。うん。・・・多分。」
「・・・あー、不安だ・・・。」
小春は、かなり不安を感じた。
異世界でも希少であり畏怖の対象である龍王同士の対面だ。しかも、かつては完全に敵対していた仲。幾らセトラがまともだからって、比較対象がおかしいだけで、セトラもセトラでおかしい部分は持っている筈。それこそ龍の逆鱗とやらに触れてしまえば、何が起きるか分からない。元々、セトラも戦争で活躍していた英雄なのだから、好戦的であるのには違いないのだ。
小春は覚悟を決めた。自分の身は自分で守らなければならない。もはや何処にも、自分にとっての安息の地は無いに等しいのだ。これくらいの試練、耐えきってやる。
次回から投稿ペース遅れます!すんません!
不定期になります!週に1〜2話投稿出来ればと思います。




