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おはよう世界、さよなら異世界  作者: キャピキャピ次郎☆珍矛
矛盾なる異邦者
32/125

第32話 偶然に

 「―――――そうか、そんな事があちらの世界で起こっているのか・・・。分かった。宵闇龍は使いを送って、目撃情報を探ってみよう。」


 髭を蓄えたいかにも王様らしき人が応える。見ただけでアイナ姫の父親だと分かった。

 何処か面影がある。精悍な顔立ちをしていて、国のトップに相応しい貫禄だった。


 「そう。敵の実態は不明だけど、アカシクの民も関わっている。アレス、あんたの妻はもう死んでいるんだよな?」

 「・・・まさか。生きている訳が無い。知っているだろう、彼女はアイナの出産と同時に・・・。それに、その聞き方なら似ていなかったのだろう、セトラ?」

 「・・・そうか。いや、可能性は潰さなきゃいけないと思ってな、悪かった。それはそうと、ちょっとお金頂戴?」

 「―――――えー、マジで?」


 王様の口調が急にくだけた。なんか、この気の抜け方と言い、アイナっぽさを感じた。


 「この子にちょっとこの世界を案内してやりたいんだよ。」セトラは、小春に目線をやる。

 「・・・この子は?」

 「コースケの友達。」

 「それ先に言えよぉー。娘が世話になりまくってんだからぁ~。」


 そう言って、アレス王からかなりのお金を頂いた。


 ―――――そして今、小春とセトラは、王宮に呼ばれてご飯を食べていた。


 豪華賢覧な、広すぎる間と大きすぎる卓を囲って食べる料理は、味がしなかった。

 緊張で味がしないのではない。マジで味がしなかった。

 小春は悔しくなった。雰囲気は凄いのに、ご飯はすっごい、微妙だった。

 ただ、何故か肉料理だけは普通に美味しかった。あっちの世界の調味料が使われているような気がした。


 ――――――ここで小春は、幸助がこの世界でいかに苦労していたか気付いてしまった。

 この料理、美味しいやつだけ日本でも親しまれているような味がするのだ。

 醤油、果実、酢や糖を使って作られたソース。バーベキューソースっぽい味だ。市販で売られている味に似ていた。

 これ作ったの、絶対幸助君じゃんと思ってしまった。


 「――――いやー、本当にコーちゃんは料理の天才だよ。肉にかけるだけでこんなに旨いソースが作れるからねー。宮廷料理人だった頃のコーちゃんは最高だったよ。」

 「お陰でコースケの胃に穴が空いたけどな。」セトラがぼそっと呟いた。


 会話だけでも壮絶だった。よもや異世界といえど、王族にご飯を作るプレッシャーったら無いだろう。毎日毎日更新されるハードルを、少ない知識で乗り切っていたに違いない。


 「――――それで、小春ちゃん。娘はあっちでもよくやってるかい?」アレス王が言う。

 「は、はい。」ドキっとして、小春は頷いた。

 「ははは。緊張しなくてもいいよ。その調子なら大丈夫そうで安心した。うちの娘は本当に・・・誰に似たんだか、お転婆でねー。コーちゃんから離れようとしなかったんだ。」

 「確かに・・・今もそんな感じです。」


 だが、さっきセトラから話を聞いたら、印象が大分変わってしまう。


 「あいつらは病気なんだよな。アレスも自覚した方がいいぜ、アイナはコースケと一緒に居ない方がいいって。」セトラが肉を鷲掴んで食べながら言った。

 「まぁねー。病気なのは父親から見ても分かるさ。でもあの2人の関係見てるの楽しいしなー。あと個人的に、俺はコーちゃんの強くて不器用な感じ、男として好きなんだよ。単純に感謝もあるしねー。あの2人が結婚すれば絶対この世界に帰ってくるじゃん?なら、何も言わないのがいいかなって俺は思うんだよねー。」

 「それが王族の親の意見なのか・・・。」

 「ていうか、コーちゃんいたら周辺国の首脳とか王族関係者とか、真実知ってる人間はビビると思うんだよ。だから前よりは交渉とかもしやすくなるし、いてくれた方が切実に助かるじゃん?コーちゃんいた方が、この世界は平和になるよ。だからよく分からん変な王子に娘を政略結婚させるより、コーちゃんと一緒になってくれた方が100億倍マシじゃん?」

 「・・・・・・まぁな・・・。そこは否定出来ないのが悲しいな・・・。」

 「もしかして、コーちゃんといたら、アイナは子供が出来ないとか、そんな下らない事を心配しているのかい?」

 「・・・そうだな。それが下らないか?」

 「王族の血が続く事よりも、私はこの国が平和に豊かになればいいと思っている。そこまで俺は欲張らんよ。セトラもそんな事を考えるなんて、丸くなったね~。」

 「うるせぇよ・・・。」


 ――――この食事を通して、幸助が外堀を埋められまくっている事実を小春は知ったのだった。



 「―――――どうだった?アイナの父親。」

 アレス王とお別れして、街中に出た時、セトラが小春に聞いた。

 「ていうより、幸助君愛され過ぎでしょ・・・。コーちゃんって・・・。」

 「マジの命の恩人だからな。でも何となくだけど、コースケが気苦労してた感じも分かっただろ?」

 「うん。親子そろって雑に扱い過ぎだと思う・・・。」

 「同意見で良かった。コースケを平和の抑止力に使うくらいなら、あのメスゴリ勇者にやらせた方がマシなのに。結局、なんだかんだ言って推しカプを成立させたいだけなんだよ、あの王様。」

 「よく推しって概念知ってるねセトラ。」

 「漫画で勉強したからな。マジで日本の娯楽は多様性の塊でおもしれーわ。」


 ガレス王国の王都ミレニアム、その城下町は、先程見た戦禍の残る大地と違って、かなり活気づいていた。道は広くきちんと整備されており、至る所で怒号に似た掛け声が飛び交っている。商売人達が価格競争をしている声だった。

 人通りも多く、人種は多種多様だった。人型をしている爬虫類っぽい肌色と顔をした人もいれば、耳が長い人もいた。純粋な人間も多く、それらが雑多にそれぞれの店にある売り物を眺めている。


 「ここは王都だが、実際は冒険者の街だな。流れ者も多い。だから、宿泊施設とギルドの数、規模はまぁ凄いぜ?地方のギルドなんかとは比べ物にならねぇ。」

 「冒険者が多いんだ。意外・・・。」

 「冒険者っていっても、これが複雑なんだな。あっちの世界でいう所の公務員みたいな直接国に遣われているパーティなんかもいる。まぁ殆どはギルドが発注して、依頼達成と同時に報酬が支給されるタイプの、契約社員的な奴が殆どだがな。つーか、冒険者って言うよりかは、契約を達成する依頼を請け負う何でも屋の業者って感じだな。その中でも調査だったりしたらそれ相応の資格者しか発注出来なかったり、腕に自信のある奴は外敵の駆除だったりって、よくよく考えたら意外とあっちの世界とあんまり変わんねぇよ。冒険者だからって荒くれ者って訳じゃないし、時代は変わっちまった。」

 「・・・そうやって説明されると、ファンタジー感が消えますね・・・。」

 「そうだなぁ。こっちは労働法もクソも無いからな。その分金は稼ぎやすいけど、結局強くねぇと幾ら知識があった所でどうしようも無いってのが辛いとこだな。ようは結局傭兵ビジネスが儲かる。依頼制だから少人数でこなした方が金も儲けられるし、群れる必要性が無い。大人数で会社規模で依頼を請け負ったりしたら周りから雑魚の集団と思われて舐められるし、ある意味完全な実力主義だから面白いんだよ。強ければ稼げるっていう単純構造だし。」

 「弱い人は大変ですね。」

 「そういう奴は商売に回る。王都の城下町故に、厳重に警備しているから、脅される心配も無く、強い冒険者相手にも対等に商売が出来る。弱くても生きられる仕組みにはなっているんだよ。とにかく他と比べると差別も少ないし、生きやすいぜ、ここは。食ってく分には十分だ。」

 「・・・へぇ・・・。」


 小春は、荒くれ者が力で支配している世紀末的な世界を予想していたのだが・・・。

 ・・・なんか、思ったより健全だった。


 「うーん、何処の店にするか・・・。って、あれは・・・?」


 セトラが何かを見つけたような素振りをした。


 「・・・どうしたの?」小春が訊く。

 「――――ちょっと小春はここで、様子を見ててくれないか?」

 「え、えぇ・・・。」


 そう言うと、セトラはスタスタと歩き始めた。

 向かったのは、向かい側にある薬屋らしき建物だった。そこで黄色い髪をした可愛らしい少女が商品ケースを眺めて、何を買おうか考えている素振りを見せていた。


 「――――おっす叔母ちゃん。」セトラが店主に話しかけた。

 「あっ、セトロちゃん!!久しぶり!!」

 「セトラだって。まぁいいや。友達がちょっと怪我してよ。自然治癒を高める薬、無い?」

 「それならねぇ・・・。怪我の程度にもよるけど」

 「その友達ってのが巨人族で、普通の薬じゃ効かないんだ。病院にも連れていけないし、普通の薬じゃ効きそうにもない。濃ゆいの無い?」

 「・・・うーん・・・マンドラゴラ系の粉ものなら効くかも・・・人間に使ったら劇薬だけど、いいかしら?」

 「オッケー、じゃあそれで。」


 そう言ってセトラは品物を受け取り、代金を支払うと、小春の元へ帰って来た。


 「・・・その薬が欲しかったの?」小春が訊いた。

 「いや、別に。」

 「え?どういう事?」

 「ちょっとな・・・。とりあえず、私と喋っているフリをしててくれ。」

 「喋ってるからいいでしょ、別にフリをしなくても。」

 「確かに。頭が凝り固まってた、すまん。」

 「事情を説明して。」

 「あの薬屋の前にいる女の子を一緒に観察しよう。」

 「え、うん・・・。」


 小春は、その薬屋の前にいる少女に注目した。

 すると、少女はすぐに商品を決めたようだった。先程まであんなに悩んでいた感じだったのに、と小春は不思議に思った。


 「――――ビンゴだ、私と同じものを買った。」


 セトラはそう言って、にやけた。


 「・・・親切に買うべき薬を教えてやったって訳じゃなさそうね。セトラ、どういう事?」

 「―――――ああ、これはもう確定だ。あの女の子は、宵闇龍ゼノンの事を知っている。」

 「・・・え?」

 「こうも上手くいくとは。やっぱりここに来て良かった。よし小春、あの女の子は今超小っさいワイバーンに追跡させたからもう大丈夫だ。急がなくてもゼノンの居場所は突き止められそうだ。そうと決まれば、魔装具ゆっくり見ていこうぜ?」

 「・・・いやいやいや!!説明してよ!!意味わかんないから!!」

 「後でじっくり種明かししてやるよ。さ、行こうぜ。安心したぜ、札幌にいるのはゼノンじゃない事が確定したからな。早いとこ奴に事情を聞かなきゃな―――――」


 そう言って、2人は魔装具屋に行った。小春は訳が分からないまま、ずっとモヤモヤしていた。


ありがとうございます。

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