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おはよう世界、さよなら異世界  作者: キャピキャピ次郎☆珍矛
序章
24/125

第24話 最強決戦 その後


 「・・・また負けたのか、私は・・・・・・。」

 「おっ、意識が戻った。大丈夫か?」

 「・・・ここは・・・?」

 レーヴは、暖かな火の明かりに気付いた。

 と同時に、布団の上で寝ている事にも気付く。その布団は幸助が創ったものだとすぐに分かった。


 「洞窟だ。俺はテレポートが使えない。お前が回復してくれるのを待った方がいいかと思ってな。大丈夫、《防壁陣》は貼ってある。外からじゃここの様子は分からない筈だ。」


 見ると、幸助は焚火をしていた。燻る薪の周囲には、串で刺した魚が並んでいた。

 そこに、幸助は上半身裸で服を乾かしていた。


 「・・・どのくらい私は寝ていたんだ?」

 「丸3日だな。」

 「・・・そんなに・・・・・・。」

 「あと、言わなきゃいけない事がある。お前の勇者剣は粉々になった。」

「・・・・・・そうか。」


 レーヴは、ようやく現実を呑み込んだ。

 負けた上に、大事な武器が無くなった。今あるのはこの強い肉体のみ。

 幸助に逆らう事は出来ない。敗者は、勝者に従うのみだ。


 「――――ま、それは俺に任せてくれ。あんな呪われた剣は、今のお前に似合わない。似合う剣は俺が必ず創ってやる。それまでは、これを使ってくれ。」

幸助は、レーヴにある刀を差し出した。見ただけで分かった。漆黒の鞘に収まるそれは、猛々しい炎を身に宿す恐ろしい刀だった。

 「――――これは。」

 「極炎斬刃レーヴァテイン。吸血鬼状態で偽物の魔装具を掛け合わせた時、何故か消えなくなる。多分俺が創った原典オリジナルだからだろうな。まぁ次からこの刀は、俺が《偽創具顕現フェイクリエイト》として使えるって訳だ。だから、持っていても必要無いし、せっかくだから原典オリジナルの方はお前にやっておく。」

 「・・・・・・いいのか?」

 「勿論、これはお前に合う刀じゃないと思っている。勇者剣よりもいいものが出来るまで、これで我慢してくれ。」

 幸助は、笑って見せた。レーヴは、不思議な感情に駆られる。


 「・・・・・・何故、そこまで情けを掛ける?」

 「情け?言っておくけど、俺は損得勘定で動く人間じゃない。お前に利用価値があるから生かした、なんて事言えば満足か?」

 「・・・・・・私の周りには、そのような人間しか寄ってこなかった。」

 「だろうな。で、魔王が居なくなればお前は用済み。・・・酷い話だ。魔王より強いとされる人間がいれば、周辺国の奴らも黙っていない。だからお前は人前から姿を消したんだろ。世界のバランスを壊さない為に。」

 「・・・・・・よく分かるな。」

 「優しいじゃん。俺がお前の立場なら、ムカついて第二の魔王になっていたかもしれない。もう十分勇者の役目は果たしただろ?いつまでも過去の栄光に呪われる必要は無い。」

 「・・・・・・だが、強くなければ、私は・・・。」

 「・・・まぁ、そうだよな。なかなか簡単に変われないのは、俺もよく知っているよ。」


 パチパチと、焚火の音が鳴る。その火は、何故かずっと見ていられた。

 ただの炎でも、同じ形にはならない。常に形を変えて、その火が消えるまで抗い続ける。


 幸助は、よく焼けた魚を差し出した。


 「毒見したけど、何も無かったぞ。食うか?」

 「・・・あ、ああ・・・・・・。」レーヴは起き上がり、受け取る。


 その時、レーヴは服を着ている事に気付いた。ジャージだ。異世界でも、幸助がよく着ていたものと同じ。

 「・・・すまんな。お前の魔装具も壊れたから。ほぼ裸みたいな状態だったから、着せたし、その、見てしまった。」

 「・・・ははっ。いいって。裸くらい見られても、特に何も思わない。」

 「何で《ベータ》の連中はどいつも、裸を恥ずかしいと思わないんだ。」

 「その傷だらけの身体も、なかなか素敵だと思うけど?」

 「何処がだよ。銭湯にも入れない、プールにも入れない。不自由な事だらけだ。」

 「・・・・・・私の裸、興奮した?」

 「・・・ま、しなかったと言えば噓になるな。皆、俺の知らない所で成長し過ぎだ。」

 「ふ~ん。」

 「な、なんだよ・・・。」

 「意外と可愛いとこあるのね。見直したわ。」

 「うるせーよ。はよ魚食って元気出せ。早く帰るぞ。」


 ―――――こうして、異世界で常にいがみ合っていた2人は、遂に和解する。

 立場こそ違えど似た者同士だったと分かれば、共通項は多く、会話は思うより弾んだ。


 だが、2人は男と女。性別を越えた友情は存在しない。

 かつてのライバルとの障壁もしがらみも、いがみ合う理由も消え、仲が良くなるというのは、関係性を築き上げる速さは一瞬で――――――――――


 「――――――あっ、やっと帰って来た!!――――って・・・。」


 玄関を開けたアイナ姫は絶句する。

 あの女勇者と、幸助が恋人繋ぎをして、家に帰って来たのだから・・・・・・。






 「―――――だから勘違いだって。レーヴが《テレポート》するのに魔力が足りないって言うから、供給してやったんだよ。だから手を繋いでたんだよ。」

 「はぁ?それで私が満足すると思っているの?」

 「いやいや、ニュース見ただろ、グランドキャニオンがどうなってるか。あれで力使い果たしたんだよ、レーヴは。」

 「じゃあ今すぐ手を放しなさいよ。」

 「いや、レーヴの力が強くて外せねぇ。だから頭も痛くならねぇ。で今ずっと魔力吸われてて、俺も眠いんだが。」

 「ていうか、何があったらそうなるのよ!!仲良くなり過ぎでしょ!!!!」


 アイナが怒るのも当然だった。数日前に殺し合いをしたと思ったら、何故かお互いが普通にラブラブ状態になっていたからだ。事情をよく知らない人間からすれば、訳が分からない。


 「――――もうここ数日寝てないんだ。お休み・・・。」

 「って、ギャー!!何でレーヴに膝枕してんのよォー!!!!」


 幸助は、疲れ果ててレーヴの膝の上で寝た。優しく微笑みながら、レーヴは幸助の頭を撫でる。


 「な、撫でるなァァァァ!!!やめてぇ、私のコースケを、奪わないでぇぇぇ!!!!」


 アイナが地面に寝ころび、駄々を捏ね始めた。イヤイヤ期の赤ちゃんのような暴れっぷりだ。


 「――――勿論、奪う気はありませんよ姫様。コースケは皆の共有財産です。誰のものとかじゃありません・・・。」

 「何よ何なのよその余裕はぁ!!セトラ助けて!!この子、正妻面してるー!!」


 「分かった分かったから・・・いいじゃん姫様、こうしている間は、あの子と敵にならずに済むんだし・・・。」セトラがアイナを励ます。

 「嫌だわァァァァァァ!!!あのポジションなんなのよ、狡いわよ!!!かつてのライバルが・・・みたいな感じ、すっごい嫌なんだけど!!!!!!」

 「分かる、分かるけど・・・。」


 セトラは、改めて女勇者レーヴを眺める。

 確かに、ジャージを着ている彼女の姿は、アイナ姫に引けを取らない可愛さだ。

 全体的にスレンダーな身体、ピンク色の髪、緑蒼の瞳。勇者かどうかなんて、言われてみないと分からない美しさと可愛さが同居している。

 あの身体にとんでもない力が宿っているとはとても思えない。ギャップの塊だ。

 外見は完璧なのに中身が破綻している姫様のギャップとはベクトルが違う。

 強い。色んな意味で強いのだ。弱点は貧乳くらいしかない。でも、それも幸助が貧乳好きならば話は変わってくる。小春、セトラ、アイナ姫と、ここには巨乳しかいないのだ。


 もしそうなれば、このヒロインレース、レーヴの一人勝ちである。


 女性陣に危機感が生まれた。強大な敵が現れたせいで、これは既に戦争なのだと気付かされる。うかうかしている余裕は無くなった。


 「――――いよいよ、私も本気を出さなきゃいけないわね・・・。」


 セトラは心に決めた。どんな手段を使ってでも振り向かせる、と。

 その一連の様子を遠くから眺めていた小春も、覚悟を決めた。

 アイナは、とにかく喚き散らした。


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