第21話 最強決戦 その1
そこは果ての無い荒野だった。生い茂る緑。そして、聳え立つ無数の丘陵。赤土が織りなす芸術的な風景と無骨な自然の荒々しさが残る、世界遺産。
テレビで見た事があった。ここは、グランドキャニオンだった。
・・・・・・いや待て、こんな所で戦う訳にはいかないって。世界遺産壊れる。
「待てレーヴ!!テレポートするなら砂漠とかにしてくれ!!ここはマジでダメだって!!」
「砂漠にしたら、お前は卑怯な手を使ってくるだろう!!」
「使わねーよここは色々不味いだろ!!!ってアイナは何処行った!?ヤバいって、こんな事したら景観が台無し―――――――」
「問答無用。魔装展開――――!!!!」
レーヴの装備が戦闘準備に入った。魔力を流す事で魔装は機能を増し、身体全体を覆う凶器となった。ただ生者を殺す為、勇者本来の姿は、無機質な機械のように弱者を蹂躙する。
突如、魔装に覆われたレーヴの手に勇者剣ガイアが現れた。それを幸助に向け、力を溜める。
「ちょ、おい、聞けって―――――!!!人がいるかもしれない!!」
「――――その問題なら解決済み。ここから半径10キロの生物は、《響慄》でいなくなっている。」
「マジかよ!!準備万端じゃねぇかよ――――――」
その辺も対策済みだった。流石勇者と言いたかったが、戦いを避けたい幸助からすれば最悪だった。
とにかく、勇者は聞く耳を持たなかった。今目の前にいる憎き敵を成敗する為に、餓えた獣のように飛び出した。
「クソっ!!《偽創具顕現・閃光手具》!!」
咄嗟に剣の軌道を避けつつ、閃光手具を創り、両手に嵌められたそれをカチンと合わせるようにして鳴らした。
―――――放たれる閃光。これはどんな耐魔力耐性持ちでも、見てしまえば一瞬で視界もろとも、五感を奪うが―――――――
異変に気付いたのは、幸助の身体が浮遊感に包まれたからだった。勇者が振りかぶった剣が地面と激突し、地割れを起こして崩落したのだ。ただの力を込めただけの攻撃で、この威力。
幸助は、少し笑ってみせる。確かにこれを砂漠でやっても意味が無い。
使用した閃光手具が役目を終え、消えた後、幸助は真っ逆さまに落ちながら、唱える。
「《偽創具顕現・星獣弓》―――って!?」
勇者は、崩落している岩塊を蹴りながら、幸助の距離を詰めていた。
視界を奪った筈なのに、その足取りは正確無比。顔が魔装に覆われていて表情までは読めなかったが、幸助はここで察する。
勇者は、見てすらいない。最初から視界の無い状態で戦っている。
これは、完全な対策だった。幸助は長年の戦いで、《閃光手具》を使いつつ戦う癖があった。幸助自身も、ほぼ必中の目くらましは非常に使い勝手が良く、この初動から派生した動きのパターンで戦闘をこなしていた部分が大きかった。
それがもう、通用しない。この3年間、幸助を倒す為だけに研ぎ澄まされた感覚だけで、敵の位置を予測し、動いている。ただ視えているより余程厄介だった。
だが、幸助は無駄と分かっていても、弦を引いた。
「――――魔力装填・解放ォッ!!!!」
弓から無数の光矢が、上空に向かって降り注ぐ。
勇者は光矢を軽く剣で振り払い、更に幸助との距離を詰めた。そして、その勇者剣の本性が明かされる―――――
「ガイア・魔力解放。アトムプラン、実行。」
ガイアの剣先が、紅く煌めく―――――!!!!
勇者がそう呟いた瞬間、幸助の脳裏に、死のイメージがよぎった。
これは避けなければ、不味い――――!!
勇者剣ガイアのアトムプランは、超大爆発を引き起こす技だったのだ。この技が使われ、無残に荒廃した土地を見た事がある。まるで隕石が落ちたみたいに、熱で地面が抉れ、火の海に包まれる。
だが、もう既にガイアの間合いであり、避けるのは不可能だった。ならば―――――
「―――《偽創具顕現・反射鏡》!!!」
巨大な鏡を展開し、大爆発を防ぐ!
アトムプランが真に恐ろしいのは、周囲の壊滅的な被害だ。無事爆発をギリギリで耐えられたとして、崩落する岩盤にぶつかる危険性がある。爆発のダメージを喰らった後に避けるのは難しいだろう。ならば、この魔力の暴走を、そっくりそのまま本人に返してやる他無い―――――!!
「――――実行、失効。ランサープラン、変更。」
「・・・ハァ!!??何だそれ!!!???」
勇者がそう呟いた瞬間、紅く煌めいていた剣が元に戻り、槍の形に変形した。
幸助はその形態を見た事が無かった。この空白の3年間で手に入れた新たな形――――
幸助は再び笑った。これは避けられない。だが恐怖は無かった。
死と隣り合わせの感覚。血が滾り、楽しくて楽しくて、笑みが溢れて仕方が無い―――――!!!
・・・何だ、俺も戦闘狂じゃないか、と自覚した。
「さぁ来いよ!!!見せてくれ新たな力を――――――!!!!!」
「・・・空間縮地・ランス・ストライク!!!!!!!」
―――――そして、勇者から槍が放たれる。
魔力が先端に一転特化した槍は、光の如き速さで射出され、いとも容易く反射鏡を貫通し、幸助の心臓を貫いた。
・・・だが、幸助はまだ、笑っていた。
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